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転生魔狼の異世界冒険  作者: はすか
盗賊討伐編
11/33

盗賊と殲滅

 

 俺は大盗賊団『ドラコンの爪』の一員だ。

 一員と言っても下っ端も下っ端だがな。

 それに『大』盗賊団って、別に大を付ける意味なんかないんだけどな。

 そこは首領にとって譲れないところみたいで、前にそれを指摘した仲間がその場で首領のバトルアックスで頭を潰された。


 首領は元々傭兵だったようだが、雇い主だった貴族と報酬の話で揉めて切り殺してしまったらしい。

 その結果賞金首になり盗賊を始めたと聞いている。



「なあ、俺らって見張ってる意味あるのか?」

「あ?首領の命令だからするしかねえだろ。もしもサボってたのが首領にバレてみろ。どうなるかわかるだろ?」

「間違いなく俺ら死ぬな」

「だろ?まあ、気楽にやろうぜ」



 俺の相棒が暇だったのか話しかけてくる。

 今はアジトである洞窟の入り口で見張りをしている最中だ。

 正直ここは街や街道からかなり離れてるから誰かが来るとは思えない。

 だからこそこの見張りの時間は退屈だ。



「あ~あ、今ごろ中じゃ宴会してんだろうなぁ。今日も結構収穫あったみたいだし」

「だな。可愛い奴隷なんかもいたしな」



 さっき外で商人なんかを襲う担当のやつらが戻ってきたんだが、今日はかなり収穫があったみたいだ。

 沢山の木箱や麻袋、それに女の奴隷がアジトの中に運び込まれていった。

 今ごろは酒を飲んだり旨いものを食ったりしてるんだろう。



「なあ、これ飲まないか?」

「ん?」



 そう言って相棒が見せてきたのは今日の戦利品の一つの酒瓶だった。

 あまり学のない俺だが、その酒がかなりの高級品だってことは分かる。


「お前、勝手に持ち出したのか!?ばれたら首領に殺されるぞ!」

「静かにしろよ。こっそり飲めばバレねえよ。それにまだ三時間ぐらいは経たねえと見張りの交代にならねえんだし、それまでにゃ酔いも醒めるって」



 そんな相棒の言葉に負けて俺は酒を飲む。

 結構度数が強い酒ですぐに酔いが回ってくる。

 バレたら殺されるかもしれないとは分かっていたが、見張りの退屈さには勝てなかったのだ。



「これ旨いな。少し辛いけど」

「だな。まあ、不味いよりはいいだろ」

「それもそうか。欲を言えばつまみが欲しいけどな」

「贅沢言うなよ。まだ飲めるだけましなんだからよ」

「それもそうだな」



 そんなやり取りをしていると急に足に力が入らなくなり、その場に膝をついてしまう。

 てっきり酔っぱらったせいでよろけたのかと思ったが、何かがおかしい。

 胸に痛みを感じてそこを見ると、心臓ら辺に矢が刺さっているのが分かった。

 中にいる仲間に敵襲だと伝えたいがすでに体に力が入らず声すらも出せない。

 隣にいた相棒にすがる思いで視線を向けたが、相棒は青い髪をした獣人の女の子に首を切り裂かれているところだった。

 生暖かい相棒の血が俺に降りかかったのを最後に俺の意識は無くなった。



 ーーーーーーーーーーーーー



 足元には私に首を切り裂かれて息絶えている男が。

 少し離れているところには心臓に矢を打ち込まれて息絶えた男が倒れています。

 そして私の手には男を殺したときに使った血が付いたナイフがあります。



「見張りはこの二人だけみたいですね」

「みたいじゃな。しかし油断しまくってたの」

「こんな森の奥まで人は来ないと思ってたんですかね?」



 だとしたらその考えはかなり甘い考えでしょう。

 確かにここは街道から離れてはいますが、人が全く来ないと言うわけではありません。

 冒険者の中には薬草なんかを取りに来たり、モンスターを探して森の奥まで探しに行くことも珍しくないからです。


 そういえば、ディアさんたちのアジトには見張りは居ませんでしたが、それは大丈夫だったんですかね?



「確かに見張りってのは居れば安心はするが、その分冒険者から見つかりやすい。勿論そういった冒険者を見張りが見つければ対処は出来るが、冒険者の中には隠密行動に長けてるもんもいる。ボスならそういった相手も見つけられるんだろうけど、アジトに残ってた俺たちには無理だろうからな。だったら見張りなんか置かずに隠れてた方が見つかりにくいんだよ」



 なるほど。

 確かに見張りを置いても肝心の不振な人物(本来は立場は逆ですけど)と見つけられないなら、見張りは居ない方がいいですね。

 そう教えてくれたのは私が最初に盗賊団のボスだと間違えていた男の人で、ボルスと言う名前だそうです。

 ってきり見張りを置くのを忘れていたのかと思いました。そうボルスさんに言うと。



「……んなわけねえだろ。考えすぎだ」



 何ですか、今の微妙な間は。

 ともかく見張りは片付けたので、残るは洞窟内の盗賊たちだけです。

 しかし、どうやら中は入り組んでいるようで先が見えません。



「これは少人数で行った方が良さそうじゃな」

「同感ですね」

「俺もだ」



 こんな狭い道で大人数での戦闘になれば、まず間違いなく仲間の足を引っ張ることになるでしょう。

 一応高さと横幅は三メートルぐらいはありますが、足場はかなりデコボコしてますし。



「よし、なら儂・ボルス・フェリルの三人で行こう。その他の者は入り口を見張れ。儂らが三十分経っても出てこないときはお前らも突入じゃ」

「私たち三人だけですか?」

「なんだ、怖いのか?」



 ボルスさんはニヤニヤと私のことを見てきます。

 正直ムカつきます。



「そういうボルスさんの方が怖がってるんですか?膝震えてますよ?」

「これは!その、武者震いだよ!」



 そう言うと周りにいる仲間から笑い声が聞こえてきます。

 一応これで緊張はほぐれましたかね?

 しかし、いつの間にか皆のことを仲間だと思えるようになってますね。

 これが良いことなのか悪いことなのかは、後で考えることにしましょう。

 今は目の前の盗賊退治です!



「それではいいな?行くぞ!」

「「はい!」」



 私とボルスさんは小声で返事をしディアさんに続きます。

 仲間の皆さんは他に外に敵がいないかを見張り、いた場合は殲滅する予定になっています。

 もしも外に敵がいた場合、洞窟内で挟まれてしまいますからね。


 洞窟内は特に分かれ道があるわけでもなく真っ直ぐ進むことができています。

 洞窟内には商人から盗んだ中にあったのか、照明の魔道具が等間隔に設置されています。

 これは確か、魔力を込めればその込めた分だけ光を発し続ける魔道具です。


 しばらく進み続けると大きな広間のような空間が見えてきます。

 流石にここまで来ると盗賊達の声も聞こえてきます。

 どうやら宴会をしているみたいで大騒ぎしています。

 ギリギリ広間の中を見ることができる岩陰に隠れて中の様子を窺います。


 人数は五十人ぐらい。全員酒を片手に騒いでいます。

 そして一番奥には、明らかに強そうな筋肉達磨とも呼べそうな男が、この場には相応しくない豪華な椅子にふんぞり返っています。

 その男の周りには隷属の首輪が付いた女性が五人ほど座り込んでいます。

 どうやらまだ無事なようですが、このままだとどうなるかは簡単に想像できます。

 それは同じ女性として許せることではありません。



「どうやら奴等で間違いなさそうじゃの」

「そうだな。久しぶりに一暴れしてやる」



 ディアさんもボルスさんも静かではありますが殺気をにじませています。

 勿論私もですが。



「よし、各々準備しとくんじゃぞ。ここで一網打尽にする」

「はいよ!」

「了解です」



 私は返事をするとアイテムボックスから装備を取り出します。

 先ずは武器として一振りの刀と二本のナイフを取り出します。それぞれ材質は鉄ですが、それぞれに【断切】という切れ味を向上させる付与をしています。

 さらにナイフには【麻痺】を付与しているので、かすりでもすれば十分は動けなくなるでしょう。

 服は今まで着ていたものですが、そもそもこの服は金属鎧並みの防御率を持っているので、新たに防具を付ける必要はありません。むしろ鎧なんか着てしまえばその分の重さで動きが遅くなってしまいます。


 ディアさんは自身のアイテム袋から武器を取り出しましたが、何とそれは私と同じ刀でした。

 それも一目見れば強力だと感じてしまうほどの一振りです。

 ディアさんも私の武器が刀だと分かると驚いた顔をしています。

 服は一般の人が着ているような布製の服です。その上に羽織るように黒いロングコートを着ました。

 鑑定してみると【死者の外套】という防具型の魔道具でした。

 効果としては、『殺害数に応じて防御力・身体能力向上』となっています。つまり、殺せば殺すだけロングコートは堅くなり、装備している人は強くなっていくのです。

 一対一なら意味のない効果ですが、大人数を相手にするような状況なら脅威になる魔道具です。


 ボルスさんも同じように武器を構えますが、私やディアさんのようにアイテム袋から出すことはなく背中に背負っていた槍を構えます。

 この槍ですが、鑑定しても特に何かが付与してあるわけでもない普通の槍でした。

 そして防具としも、これも一般的な革製の鎧です。

 正直、ディアさんと比べると数段見劣りしてしまいます。



「準備は良いようじゃな。さて、どう突っ込むかじゃが」



 相手は少なくとも五十人ほど。ここ以外の部屋にまだ居るようならその分増えます。

 だからこそ、素早く相手の頭数を減らしたいところです。

 ……あ、そうだ。



「あの、これなんてどうです?」



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