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転生魔狼の異世界冒険  作者: はすか
盗賊討伐編
1/33

神様とトランプ

 

  あの日、俺は死んだ。

  俺の生前は消防士で、その日はホテルで火災が起こったと連絡が来ていつも通り出動した。

  いつも通り放水を開始して消火を行っていたのだが、ふと三階の窓に人影が見えたのだ。

  その火災は二階から発生したらしく、その人は逃げ遅れたのだろう。


  俺は同僚に助けに行くことを伝えて三階へ向かった。

  幸い非常階段から三階へ行くことはできたが、火がかなりまわっていて消防士が着ているような服がなければ通れないほどだった。


  逃げ遅れた人はすぐに見つかった。

  五歳ぐらいの女の子とその母親だった。

  すぐ近くの窓から外を確認すると、同僚が脱出用のクッションを用意してくれていて、すぐに二人を窓から逃がした。


  後は俺の番だったが、そこで事故が起こってしまった。

  突然床が崩れ落ち、二階へと転落してしまったのだ。


  さっきも話した通り火元は二階で、落ちた先も火の中だった。


  落ちた衝撃はすさまじく足の骨と肋骨が折れ、更に折れた骨が内蔵に突き刺さったらしく激しい痛みが俺を襲った。


  その後はまともに身動きがとれないままに炎で焼かれて死んでしまったのだ。




  そして今は辺り一面白い空間にいる。

  そして目の前には何故かマジシャンの格好をした男が立っている。


  これは、同僚から見せてもらった本に状況が似ている。

  これはもしかして、


「異世界転移系かな」

「正解デス」


  目の前の男は語尾が独特な話し方をしていた。

  そして、今の俺の現状を説明してくれた。


  まず男は俺たちから見ると神様のような存在であるらしい。

  そして俺はあの場で間違いなく死んでしまったようだ。

  本来なら俺の魂はあの世と呼ばれる所へ持っていかれ、転生までの時間をゆっくりと過ごしてもらうと言うのが定例らしい。


  だが本来は神様のもとへ呼ばれると言うことはないようだ。


  ではなぜ今回俺はここへ呼ばれたのかと言うと、最後に俺が助けた親子が関係しているらしい。


「実はあの女の子はちょっと訳ありで私達神が気にかけている存在なのデス。今回の火事でもどうにか私が手を加えて助ける予定だったのデスが、手を加える前に貴方があの子を助けてくれたのデス。本当に助かりました」

「それって、俺が余計なことをしたと言うことではないのですか?」


  神様が助ける予定だったのに俺が勝手に行動し助けてしまったのだ。

  だが、神様からは優しい笑みを浮かべる。


「いえいえ、むしろ助かったのデスよ。私のような神が手を出すとその分どこかで不具合が生じてしまうのです」

「不具合?」

「はい。例えばあの二人を助けたことによって、どこかの誰かが代わりに死ぬは目に遭ってしまうとかデスかね」


  俺が助ける分には神様が言うところの下界の者がやったと言うことで特に不具合が起こることはないらしい。


「そんなわけで貴方には感謝の思いを込めて、私の友神(友人)が管理する異世界で転生していただこうかと思いますのデス!」

「はぁ」

「ちゃんと一から説明いたしマス」


  神様いわく、俺が転生する世界は魔法やスキルが存在するトライアルという名の世界らしい。

  そこは魔法が存在する世界よろしくファンタジーの世界で、人間だけでなく獣人や魔人、エルフやドワーフと言った様々な種族が存在しているらしい。


「そして貴方には感謝の気持ちを込めて、役に立つスキルをプレゼント致しマス」

「それは、ありがとうございます?」


  正直どんどん話しが前に進んでいっていて頭が追い付いていない。

  それでも神様は話を続けていく。


「しかし、私や貴方が決めたスキルをお渡しする事は、神々の定めた制約上できないので、運試しをしていただきマス」

「運試しですか?」

「はい。転生後の貴方の種族やスキル等を私が出すトランプの中から選んでください。書かれているものが転生後の貴方の力になりマス」

「種族も選ぶんですか?」

「はい。トランプの中には不老長命のマスターエルフや、実質不老不死と言われる種族まで入っていマス」


  確かにそれなら良いかもしれない。どうせ同じ人形なんだし。


「分かりました。それでは選んでもいいですか?」

「わかりました。それでは先ずは種族から選んでくだサイ」


  すると目に前に百を越えるトランプが空中に浮かび上がる。

  俺はその中から適当に一枚を選んだ。


「ハイハイ成る程。これは今お伝えしマスか?それとも最後にお伝えしマスか?」

「では、最後で」


  俺はゲームでも何かをこの中から選ぶという選択肢があればランダムで選び、最後に何が出たかをまとめて確認するのが好きだった。


「それでは、スキルのトランプを十枚選んでくだサイ」

「はい」


  これも同じく適当に選んでいく。よくこういった場面で長く悩む人がいるが、最終的には運の要素が強いのだから俺は即決で選んでいく。


「はい、選び終わりまシタ。それではこちらがトライアルでの貴方のステータスになりマス。ご確認ヲ」


  そして渡された一枚の紙には、



 ~ステータス~

 名前:未設定

 種族:魔狼

 性別:女

 年齢:0


 ~スキル~

[魔道具作成][治癒の天使][武の才能][完全鑑定][完全隠蔽][アイテムボックス][先見の魔眼][人化の術][環境適応][???]



「え?」

「それでは、思う存分人生を謳歌してきてくだサイ!」

「いや、ちょっと待って……」


  神様は有無を言わさぬ勢いで俺を送り飛ばす。

  せめて文句の一つでも言おうかと思ったが、強い眠気が俺を襲い意識を手放してしまった。







 ーーーーーーーーーーー。


「さて、行ったようデスね」


  誰もいなくなった白い空間で神様は一人呟く。

  そもそもここに人が来るというのは早々あることではない。

  そのため久々の来客に少し嬉しくなり、少々テンションが上がっていたようだ。


「しかし、少しサービスしすぎましたかね?スキルも余分に差し上げてしまいましたし」


  本来なら男に渡す予定だったスキルの数は七つであり、最後の三つに関しては完全に神様の独断で追加していたのだ。

  それも七つ目までを確認し、トライアルで生きていく上で必要となるであろうスキルを神様が選んでいたのだ。


「ルールは破るためにあるのデスよ!うん!」


  神様の誰にするでもない言い訳は白い空間の中に寂しく響き渡っていった。



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