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002.母ギツネの死

 無理だった。

 考えが甘かった。

 マターリと生きていくどころかハードだった。


 母ギツネが殺された。

 俺たちを庇って矢に刺されたんだ。


「これは、珍しい銀ギツネですね。ベイリン卿。奥様の首を飾るにちょうど良いですね」

 

 殺された母ギツネに近づいていった兄弟姉妹もだ。

 剣で嬲り殺された。

 本当に殺されただけだ。

 革で補強された普段着のようなモノを着たベイリン卿と呼ばれた騎士に殺された。

 面白半分に斬殺されたんだ。


 俺は逃げ出した。

 スキを見て逃げ出していた。

 妹のマーリンを連れて。


「お母さん。お母さん」


 泣きながら走るマーリン。


「マーリン。今は我慢しろ」


 可哀想だがそう言うしかない。

 こんなとこで、殺されてたまるか。

 転生して半年だぜ。


 チートスキルもなく、キツネで暮らすのも良いかなって思った矢先だぜ。

 ケモ耳の獣人に化けることが出来る未来を考えれば、虫や生肉だって食べるのを我慢出来たんだ。

 それを達成する前に殺されてたまるかよ。


 と言うか、ここ、時代が違うのか?

 あんなモン着た騎士なんて、元いた世界にはいなかったぞ。

 母ギツネが、巫女服着てたから、単なる生まれ変わりだと思っていた。


 どれくらい走ったんだろうか?


 考え事をしてたら、森の奥に来てしまった。

 母ギツネに、森の奥は強い獣がいるから行っちゃダメだよって言われてた森の奥だ。

 言われた通りなら生後半年の子ギツネに生き残れる場所ではない。


「マーリン、ちょっとここで休憩しよう」


 さすがに疲れた。


「う、うん」

 

 森の湖畔で休憩することにした。

 妹のマーリンも限界だろう。

 俺より体力がないし、よく頑張ってくれた。


 暗い森に中に現れた光り輝く場所。

 生まれた洞窟の周りしか知らなかった。

 木の葉の隙間から差し込む光だけしか見たこと無かった。


 こんな綺麗なところがあったのか・・・。


 女神様でも現れそうなくらい神秘的な景色。

 この詰んだ狐生の最後に良い景色が見れて良かった。


 近付いてくる気配を感じたが、ハードな逃走劇に疲れて意識を失った。


 マーリン、ごめん。

 守ってやれなかった。



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