壁の前で待つ少年
「よっこいせ、っと」
僕は今し方越えた壁の前にどっかりと座り込む。腰に括りつけて来た水筒を外して傍らに置いたら準備はバッチリだ。
「だーれが来るかな〜」
思わず頬が緩んでしまう。
僕は壁を目指してくる人間に興味がある。中でも壁を突破してくる人間が大好きだ。壁を目指してくる人間は皆それぞれ目的がある。そして力ある者、または望みが強い者だけがこの壁を越えてくる。なんの為に壁に挑むのか? 自分の為なのか、他人の為なのか、はたまた目的なんてなにもないのか。
「どうやって突破するのかなあ?」
登っても良いだろう。壁をぶち破ってしまうってのもアリだ。遥か彼方にある壁の端まで歩いて回り込んでくる奴もいるかもしれない。あ、あと壁の下を掘ってくるってのはどうだ? 考えただけで胸が高鳴ってくる。
「早く現れないかなあ。楽しみだなあ。……うふふ」
僕は壁を越えて来るであろう人間達をあれこれ想像しながら待ち続ける。すぐにはこないかもしれないけれど、いつか必ず来るその日を想像しながらニヤニヤと笑った。
(壁を越えてくる人間を待ちわびる少年は壁の前で待ち続ける)