第四話 女
ピルグルム精神病院の受付の前にある椅子にタスキは腰掛けていた。神父から聞いた話を基にしても精神疾患の患者はこの場所に途方もない数だけいた。
タスキはうろたえ病院の外に設置された喫煙所に行きタバコをくわえた。喫煙所にはベンチがあり、そこに患者らしい女が腰掛けタバコを吸っていた。タスキは気にせず、これこらどうしたらいいものかと考えあぐねいていた。突如、声がした。
「呪いじゃない、神の声、これは神の声。」
タスキは驚いて、周りを見渡すと誰もいない。
「呪いじゃないのよ。神の声なの。」
タスキは怖くなってふとベンチの女に目を向けると彼女はぼそぼそ独り言を言っていた。
「だから、傀儡の類じゃない。神の声だから。」
タスキはこの女がもしかしたら探していた女かもしれない思い、話しかけてみた。
「すみません、もしかして、呪われし少女ですか。」
こんな聞き方は変だとはおもいながらも、それ以外に聞き方が思いつかなかった。女は、
「そうよ。よくたどり着いたわね。」
と、ギョロッと目をこちらにやり、また口を開いた。
「ちがうわ、私のことじゃない。」
全く正反対の答えにタスキは戸惑った。そして、女は、
「今のは違うの、もう一人の自分。私の中に三人の自分がいるから。」
と言った。
ひとまずタスキは探していた人を見つけたことに安堵し、理解不能なこの女から、目的の物をもらおうと考えた。