第三話 大聖堂
ニューヨークJFK空港に到着すると、タスキは冊子の最後のページに乗っていたホテルにチェックインした。部屋で荷物を下ろすとさっそく紙に書かれていたヒントについて考えてみた。邸宅、呪われし少女、、、。邸宅と言ってもニューヨーク郊外には無数に存在する。これらを一つ一つしらみつぶしにしていたら見つけるのに何年かかるかわからない。それでは、呪われし少女、これはどうだろう。呪いのたぐいは映画などからしか察しがつかない。呪われた少女、、、あれは確か神父が解こうと奮闘するのではなかったか。タスキはまず教会に行こうときめた。必要な手荷物を持ち、ホテルを出た。
ホテルの近くにある本屋で地図とガイドブックを買い、教会の場所を探した。一番大きな教会にまず行くことにした。タクシーを停め、NYセントパトリック教会に行くことを運転手につげると、後部座席にどっかり座るとため息をつき車窓から見えるニューヨークの街並みを眺めた。
パトリック教会はマンハッタンにあり、タクシーから降りたタスキはそのそびえ立つ大聖堂の大きさに驚いた。観光客もたくさんいて、観光旅行にでも来ているような気分になったが、目的を果たすべく教会内に足を踏み入れた。神父らしき男が数人いたが、その中でも一番背の低い男が話しかけやすい気がしたのでタスキはその男に話しかけた。
「つかぬことをおききしますが。呪われし少女についてご存じですか?」
「?」
「それでは、呪いについては?」
「??」
タスキは自分のたずねていることがおかしなことだと疑問を持たずに尋ねたが、これでは頭のおかしな奴だと思われても仕方がないと思い、そこで口をつぐんだ。しばらくその神父は黙っていたが、こちらにきなさいと手招きし、大聖堂の奥へと案内した。そして扉の前まで行くと神父は鍵を開けて外に出た。タスキも後に続くと眩しすぎる太陽の光に目が痛かった。芝生をしばらく歩いていくと小さな建物があった。神父はその前で立ち止まると、
「司教の住居です。どうぞ。」
とタスキをその建物の中へ入るよう促した。
建物の中はごく一般的な欧米の住居といったところだった。神父は司祭らしき男にこそこそと話しかけ住居の外に出て行ってしまった。
「あなたはどこから参られた?」
司教はゆっくりとした口調でタスキに尋ねた。
「日本からです。呪われし少女についてお聞きしたいことがありまして。その少女をさがしているのです。」
「まぁお掛けなさい。」
タスキは部屋の真ん中に配置してあるテーブルの椅子に座った。しばらく沈黙の時が流れた。そして司教は口を開いた。
「呪いか。呪いというのはとても恐ろしい。中世の頃から私たちは悪魔払いなどで戦い続けた。そのために命を落とした者さえいるとされている。しかし、、、。」
ここで司教は一息いれると、また話し始めた。
「現代では呪いというものは存在しない。いや、厳密に言えば存在しないことになっている。これはもちろん科学者がそう言い張るからだ。現代は科学が強い立場を誇っておるからな。そこでだ。のろいというのは、現代では精神疾患、または精神病の類とみなされている。つまり、その少女を探しているならば、精神科のある病院にでも行ってみるがよい。」
そう司教は話し終えるとくるりときびすを返し別室に入って行ってしまった。
(精神疾患?呪いじゃなかったのか?)
セントパトリック教会をあとにし、もう一度地図を広げた。かなり離れた場所にピルグリム精神病院という病院を見つけた。タスキはタクシーを乗り付け病院へと向かった。