第二話 旅立ち
タスキはあの記者会見から5ヶ月後の年明けて元旦、羽田空港国際線ターミナルにいた。前日某ビルの会議室で手渡された冊子を手にニューヨーク行きの飛行機の出発時刻を待っていた。これからの不安と期待を胸にタスキは待ちきれない気分になっていた。タスキはあの記者会見以降応募するかしまいかこなり悩んだ。京子はあっさり日本に残って今まで通り将棋を指すと言ったが、タスキは今後日の目をあびるかどうかもわからないプロ棋士として将棋を指すよりかはこの機に脚光を浴びる方が良い気がした。それと、賞金の額に目がくらんだのだった。
ニューヨーク行きのタスキが乗る飛行機のアナウンスで席を立ちゲートをくぐると、まもなく飛行機に乗り込み冊子を開いた。
(冒険者たちよ。よくぞこの壮大な冒険に挑戦してくれた。まずは君たちにその勇気をたたえよう。8つの駒はダイヤモンドで出来ている。今後これを金剛駒と呼ぶ。これらは、インド、メキシコ、アメリカ、オーストリア、ブラジル、中国、ロシア、そして日本に散らばっている。そのすべてを集めたものに東京での三番勝負が待っている。それぞれの国に関してヒントととなるものが別紙としてこの冊子にはさんであるから各人よく見とくように。それでは健闘を祈る。)
前日の夜読んだ冊子をタスキはもう一度読み返した。そして、アメリカの二つ折りになった別紙を開いた。
(ニューヨーク郊外、大富豪の邸宅、呪われし少女、馬の金剛を持つ)
タスキはその紙をまた二つに折ると、冊子にはさみ目をつぶった。フライト時間は予定では13時間。タスキは眠りについた。