月の頭脳の人体実験
説明会と就職試験を受けてきたが、正直な話上手く行く気がしない。
永遠亭―――とある異変の舞台となった屋敷で、歴史を刻んではいなかったが異変後、屋敷の歴史は再び動いた。
直人は鈴仙に玄関の受付で待たされる事になった。
「師匠呼んで来るからちょっと待ってて。」
「あいよー。」
椅子に腰掛け待つ事になった。
少し経って、直人が暇だと思い始めた頃―――
「ん?どしたよ?」
彼が話しかけた相手―――白い小さな兎。
直人の足元に着たかと思えば、頭を足にこすり付けている。
「………ふぅ。」
ため息を付いた後、彼は兎を持ち上げ膝に乗せる。
軽く頭を撫でながら。
「~~~♪」
「ん、もふもふでふわふわだな。」
傍から見れば和やかである。
「………ちょっと。」
「ん?」
声を掛けられ、振り向く。
其処には小さな少女が居た。
癖っ毛の短めな黒髪に、鈴仙と同じく頭にウサギ耳があり、ふわふわしてる。
もふもふなウサ尻尾もあり、身長は少女で幼女に近い。
桃色で、裾に赤い縫い目のある半袖ワンピースを着用しており、首にはニンジンのネックレスが掛かっている。
「やぁお嬢さん、何か用かな?」
「こっちの台詞だと思うけど。」
「それより、今宵一晩お付き合いしませんか?」
「………。」
少女は顔を歪ませたが。
「良いよ!」
途端に笑顔になる。
………少なくとも、まともな笑顔には見えない。
「おお!ありがとうね!いやー!仕事手伝ってくれるなんて思いもしなかったなー!」
「………ゑ?」
「だって言ったよ?今宵一晩付き合ってくれるって。どういう意味だと思ったの?」
心底不思議そうに尋ねる直人。
ここで少女は一杯食わされた事に気づく。
「くっ!私を騙すなんて……!?あんた、中々やるじゃないかウサ。」
「まぁ、曲がりなりにも仕事を請け負っている最中だからね。請け負ってなかったら口説いてたんだけど。」
「私を口説くのは10000年速いね。」
「そっかー。」
ある意味で和んでいる時。
「………なにやってるのよ彼方達。」
鈴仙が戻ってきた。
「お帰り。どうだった?」
「とりあえず、師匠の下に案内するから付いてきて。あと……てゐまで口説くってのは犯罪染みてる気がするんだけど?」
「幻想郷に常識とか無いのでは無かったのかい?」
割と幻想郷について勉強している直人。
「最低限はあるわよね。」
「そっかー。それじゃあ案内お願いしますか。んじゃまたな……てゐだっけ?」
「そうウサ。あんたの名前は?」
「直人だ。んじゃまたな。」
そして、直人は鈴仙の後を付いていった。
残ったてゐは、先程直人が撫でていた兎に尋ねる。
「どんな奴だった?」
「………。」
「そう、良かったわね。」
会話の内容は、当人達以外解らない―――
しばらく長い廊下を歩いていた2人。
「そろそろ着くか?」
「ええ。」
気の無い返事。
そして、扉の前に着く。
コンコンッ
「師匠、連れてきました。」
『入って。』
許可がもらえたので、入室する。
「失礼します。」
「失礼しますっと。」
中は診療所の様だった。
そして目の前に落ち着いてしっかりとした大人の女性が佇んでいた。
長い銀髪を三つ編み?にしており、前髪は真ん中分け。
左右で色の分かれる特殊な配色の服を着ていて、具体的には上の服は右が赤で左が青、スカートは上の服の左右逆の配色、となっている。
袖はフリルの付いた半袖。
全体的に色合い以外はやや中華的な装い。
頭には、同じくツートンのナース帽を被っている。
「始めまして、何でも屋さん。」
「―――ええ、始めまして。素敵なお姉さん。」
「あら、お世辞が上手いわね。」
「生憎、お世辞抜きで言ってますよ。どうですか?一晩お付き合い頂けませんか?」
「残念だけど薬の調合があるから駄目ね。」
「そうですか、それは残念。」
全然残念そうには見えない。
「では、お弟子さんをお借りできませんか?勿論、プライベートでは無く“仕事”で。」
「………その仕事の内容と家の弟子との繋がりが解らないのだけれど?」
少し眉が釣りあがる女性。
「………説明してないの?」
「説明する前に呼んできてって言われたのよ。」
「それじゃ仕方無い。」
直人は女性に事のあらましを伝えた。
「なるほど、受けたくも無い依頼だけど下手をすれば暴走しかねないのね。」
「そういう事ですかね。一応は数少ない依頼をしてくれる人物ですからね。まぁ、野郎の仕事は請けたくないかもですがね。」
「………そうね、仕事を手伝わせてあげても良いわよ。」
「それはありがたい!……ですが、条件は何ですか?」
「あら、以外に疑り深いのね。」
予想外と言った顔を浮かべる女性。
「仕事は仕事ですので。」
「なるほど。そうね、条件は―――私の調合した薬の実験台ね。」
その言葉に反応したのは鈴仙だ。
「師匠っ!?」
「黙ってなさい。」
黙る鈴仙。
「どう?」
「………やれやれ、かなり分の悪い賭けですが―――そういうの結構好きなんですよ。」
彼は笑顔でそう言った。
「そう、じゃあこれを飲んで。」
薬の入ったガラス瓶を受け取る。
「解りました。後、飲む前に。」
「何かしら?」
「自己紹介を忘れてました。俺の名前は直人。自称何でも屋店長です。」
「そういえば名乗り忘れていたわね。私は八意永琳。永遠亭の医者よ。」
お互い名乗り終えた所で、彼は薬を飲み―――意識を失った。
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