祭囃子と神隠し
からん、ころん。
足元で音が鳴る。
着慣れない浴衣が苦しくて。
履き慣れない下駄が痛くて。
遠くで鳴るは花火。
近くで静かな虫の声。
隣を歩くのはだれ?
お面の下で笑うひと。
ひたり、ひたり。
足元でひっそりと雪駄の音。
まるで足音を立てる事を嫌うように。
夜店も絶えて人も絶えた。
明かりも消えて真っくらけ。
歩く音は二人だけ。
お面の下で笑うひと。
この道はどこに続くの。
夜目にも赤い鳥居が続く参道。
手をつないで黙って歩く。
からり、ころり、ひたり、ぺたり。
聞こえるのは二人分の足音。
祭囃子は何処へ行った?
虫の声は何処に消えた?
後ろの正面だあれ?
お面の下で笑うひと。
この道はどこに続くの。
夜目にも赤い鳥居が続く参道。
手をつないでひたすら歩く。
ひたり、ぺたり。
不意に手を離されて。
驚いて見ればお面の向こう。
金色の瞳が小さく光った。
ここはどこ?
あなたはだれ?
問いかける前に訪れるは夜の帳。
知らない人について行っては駄目、なんて子供だけの話だと思っていたの。
そんな事するほど子供じゃないと思っていたの。
── 神隠しの噂を思い出した時には遅かった。
もう動かない少女を見下ろして。
ごちそうさまと『ナニカ』は嗤った。
「みてみん」にアップした大昔に某所のお絵描き掲示板に描いた絵に、即興でつけたテキストを手直ししたもの。
当初の5分クオリティよりはマシになった…かもしれない。