嫌いにさせてよ愛しの君
きっと私は幸せにはなれない。
痣だらけの肢体を見てそう思う。
それでもしょうがないんだ。
好きなんだから。
頭では分かっているんだ。
好きになってはいけない人を好きになった。
それは身分の差とかアイドルや俳優に恋をするのとは違う。
破滅だけがある恋なんだ。
だからさ。ねぇ、嫌いにさせてよ君のことを。
肉欲を発散して満足したのか安らかに眠る君の顔を見ながらそんなことを思う。
君はクズだ。
ヤニカスで酒浸り。碌に稼ぎがないくせにパチンコ、競馬、競艇、賭け事ばかりで遊び歩く。
一応恋人である私を置いて風俗に通っては女遊び。
普通に考えたらどこにも好きになる要素なんてないように思う。
じゃあ私はそんな君の何処を好きになったのかな。
どうして好きになったのかな?
何故好きになったのかな?
きっと好きになるのに具体的な理由なんて必要ないんだと思う。
もっと単純で、好きだから好きになるのだ。
でないと私のこの感情を説明することが出来ない。
その日は君の母校の同窓会があった。
どうせ君のことだから久々に会った同級生の女の子を誘惑してお持ち帰りでもするんだろう。
別に構わない。
寂しい夜は慣れっこだし、きっと君のいない夜の方が平和なんだ。
明日、朝になればふらふらとした足取りで甘いにおいを撒き散らしながら帰ってくることだろう。
そういう風に思っていた。
だから今朝病院から救急の連絡があって私は驚いた。
朝まで飲んでいたのか、君は酔った状態で赤信号の横断歩道を渡ったらしい。
即死だった。
初めは馬鹿だなって思った。
いつかやるだろうなって……。
次に思ったのは…………。
案の定やっぱり、
何で好きになったのかだった。
君は私を置いてまた一人で何処かへと行ってしまった。
そして今度はもう二度と会うことが出来ない。
ねぇ、何でいつも勝手にいなくなるの?
君のことを受け入れてあげられるのはやっぱり私だけなのに。
家族にも見放されて、寄生先の女の子に何度も捨てられて逃げられた君を私だけが心から愛していたのに。
これじゃあもう私は何処へも行けない。
幸せになんてなれっこない。
ずるいじゃんか。
こんな別れ方をしたら私は一生君を嫌いになれない。
嫌いになんて…………。
なれないよぉ…………。




