そうだ、不正しよう!
「読まれたい! 何としてでも! 悪魔に魂を売り払ってでも!!」
このような欲求を持つ物書きさん、いらっしゃるんじゃないでしょうか。
いや、気持ちはわかります。
痛いほどわかります。
仕事を終え、疲れた体を引きずって家に帰り、即座に布団に入りたい所をぐっと堪え睡眠時間を削って執筆する。
そうやってヘロヘロになりながら書いた小説が、読まれない。
もう、哀しい位に読まれない。
何故、何故、なんで読まれないんだ!?
一向に増えないPV!
最近の日経平均株価の如く上がらないランキング!
まるで書き込まれる様子の無い、群馬の限界集落すら霞む過疎っぷりの感想欄!
たまに赤文字で通知があったかと思えば「誤字・脱字の報告があります」ってな指摘があるだけ!
「そんなもんさ」
と、ため息をつきながらTwitterを開くと「ランキング載りました!」「書籍化しました!」「今度アニメ化するんでみんな見てね!」なんて景気の良い文字が乱れ飛ぶのが目に入る。
ファンの皆様からは歓声が飛び、関係者からはお祝いされ、作者は「これから一層頑張ります!」だのなんだのとキラキラしたコメントをツイートする。
おい、どういう事だ!
何だこの格差社会は!?
俺もおんなじテンプレ作品書いてるってのに、アイツと俺とで何がそんなに違うんだ!?
やってる努力も書いてる話も大して変わんねーはずだろ!?
ふっざけんな!
世の中間違ってやがる!
俺だって、俺だってチヤホヤされたい!
感想欄にいっぱい賞賛コメント書いてもらって、総合ランキングで表紙入りしてTwitterでも「すごいすごい」と褒められたい!
陽の目を見なさそうな、自分と同じような冴えない物書きを相手に「次はアナタの番ですよ!」とか何とか言って励ますふりしてマウント取りたい!
あとなんか有名な、実績ある作家さんにタメ口利いて対等でございってアピールしてやりたい!
とにかく何でもいいから承認欲求を満たしたいんだ!
歯を食いしばり、血の涙を流し、割れんばかりにスマホを握りしめ、この世の不条理さを嘆く。
そんな嫉妬とヘイトに囚われた心に浮かび上がってくるのが「そうだ、不正しよう!」という考えなのです。
「なんてバカな事を! 物書きとしての矜持は無いのか!?」
と、お利口さんな方は言うでしょう。
ですがこの闇堕ち思想。
2025年4月11日、代表作に設定している小説「日常魔王」のPVが1だった熊には、痛いほどわかります。
自分の努力と人格と実力の何もかもが否定され、どうにもならない現実を、それでもどうにかしたいと願うなら、うん。
やっちまうか、不正!
そう考える事の一度や二度、人間あっても不思議ではありません。
だってだってだって!
なんかみんな言ってますやん!
「なろうでランキングに入ってる奴なんて、大半が不正してる奴ばっか! あの総合ランキングは不正してる物書きのブラックリストと同じだ!」とか何とか。
みんな汚れてるってんなら、俺だって汚れてやる!
俺と同じテンプレ小説書いてて人気なWEB小説作家達は、どいつもこいつも不正してあのポジションを手に入れてるんだ!
なんと卑怯な!
だったら俺も、同じ土俵で戦ってやろうじゃあないか!
ようし、Twitterで拡散希望のハッシュタグをつけて「僕の作品にポイントを入れてくれた方には僕からもポイントを送ります!」とツイートだ!
それから、何でも依頼サイトのココ◯ラで「僕の作品にレビュー書いてくれたらお金を振り込みます! 稼ぎたい方あつまれー」とか依頼を出しておこう!
これで俺も晴れてランキング作家だ!
ひゃああああ!
と、こういうダメな方向に思い切りの良い真似をするのは、気持ちはわかりますが熊はお勧めしません。
ああ?
なんだなんだぁ?
ここに来て「物書きたるもの〜」とか言い出しちゃうのかテメェ。
飢えた貧民にいくら綺麗事を語っても腹は膨れねぇんだよ!
そんなもんよか盗んだパンを食った方が飢えは満たされるんだ!
そう思うのもわかります。
つーかTwitter見てる方はわかるでしょうが、熊はどっちかってーとソッチ寄りの思考してます。
「やった方がメリットあるなら、やらない理由無いじゃん」派です。
じゃあ何でオススメしないかって、そりゃ単純に背負うリスクとリターンが釣り合ってなくて、旨みが少なすぎるから。
あのな?
パン一個盗むにしても、バレたら腕一本切り落とされるなんてペナルティあったら普通やらんやろ。
それと同じ事なんよ。
「そんな大袈裟な」だって?
じゃあまず、なろうでもカクヨムでもどこの投稿小説サイトでもさ。
不正してランキング載ったのがバレたとして、どういうデメリットがあるか考えてみようか。
ざっと思いつくだけでもこの位あんぞ。
・作品削除
今まで書いた作品が削除される。
当然今まで得た読者ポイントも、書き込んでもらった感想も、レビューも、作品データも全部消える。
当たり前だけど、ランキングからも除外。
・アカウント削除
作品どころかアカウントが消される。
そこのサイトじゃ2度と作品の掲載が出来ない。
大手サイトなら、そこの場所が開催する新人賞やらイベントやらが丸ごと利用出来なくなる。
・作者への悪評
当然だけど、バレたらヤバいくらい悪評が立つ。
物書きとしての信頼なんざガタ落ちで、作者のSNSやら残ってる作品の感想欄に、自殺ものの誹謗中傷が書き込まれる。
ゴキブリ並のメンタルでそれらの罵倒を耐えたとしても、単純に読者が逃げる。
出版社からも警戒されて、書籍化のチャンスが大幅に減る。
というか最悪なくなる。
・孤立する
他の物書き達からも距離置かれる。
親しくしてたら「あいつも不正仲間か?」なんて疑われるリスクあるし。
相談したり、趣味や悩みを共有する相手を軒並み失う事になる。
・賠償請求
もし仮に書籍化した後で不正がバレた場合、損害賠償請求喰らう可能性がある。
出版社がネットでの評判を見て出版したなら、その評判が虚偽のものだったなら普通に「詐欺られた!」と捉えて訴えてくる可能性がある。
不祥事やらかしてドラマやテレビ番組が取りやめになったタレントが、ヤバい額の賠償金支払ってるのと同じ構図。
額は違えどアレが降り掛かる可能性がある。
・デジタルタトゥー
「寿司ペロ事件」や「おでんつんつん男」や「逆走ママチャリおばさん」とかさ。
ああいうの、半永久的にネットに残るわけで。
中にはへずまりゅうみたいに復活したケースもあるけど、ああいうのはかなり例外。
大抵の場合、地味ーに残り続けて、何かで注目されてチャンス回ってきた時に、ここぞとばかりに晒されて潰されるネタになる。
と、ざっと考えただけでもこの位のリスクがある。
対するメリットはというと、上手くいって総合日間ランキング数百位程度にちょろっと載る程度。
そこで波に乗れなきゃ書籍化ラインまで打ち上がる事も無いし、打ち上がったとして依頼が来る保証も無い。
しかも注目度が高まれば、それだけ不正がバレるリスクも上がる。
見事書籍化したとして、それで稼げる金なんて初めは一冊100万円程度が精々で、その為に何ヶ月間の労力を費やすか考えたら、とてもじゃ無いけど割に合わない。
お前、月給いくらだよ。
今のご時世、そこらの新入社員ですら月に30万は稼ぐぞ。
何も後ろ暗くない、まっさらな金で。
「不正が成功したら、書籍化確約の上数千万円ゲット!」位までメリットあるなら、まだ悩む余地もあるけどさ。
こんなショボい見返りの為に物書きと自分の人生ベットするとか、マジでやめとけって。
と、不正しても大して人気出ずに消えていった過去のやらかし物書きさん達を振り返りながら、思ったのでした。
やるなら銀行強盗にしとけ。
そうだ、不正しよう!……END
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