夜夢(よむ)3
声が聞こえる。これを瞬時に自身の声だと認識して状況を把握する。
無意識からなる声という無意味な音。言葉の羅列。単調な反応。
状況を考えるなら愚者の極みだろう。
あぁ何故なら落ちているのだ。
だが解せない。
何故。の状況だ。
記憶。は皆無か。自身が何者かも判らない状況にて落ちているだけでは答えなど求めるなど非礼だろう。
さて。
どうなるか静観してみよう。
少しだけ後悔している。
感覚的には長いな。と、そう感じるほどだ。
あれから永遠とも思い考える時間を落ち続けているのだ。
着くまで時間を要するなど愚弄と考えていたが終わりの先が見える気配さえない。
さてもういい加減にと言葉に出しても、この言葉は誰に聞かれる事もなく彼方へ消滅していく。
お。漸くか。
長い時間という年月。落ち続けていて漸くソコが見えてきた。
ん。あれ、は。
何て事だ。
着地できて早々に危機的状況ときたのか。
ふはっ逃げ場なし。戻りも不可能。ただ落下してきただけなのだが。
現在地は。遥かな高度の床。いやこの場合は柱と形容した方が的確だろう。
高さにして四百はあるだろうか。淵から見える下は視認するが見えない。
そして、目を凝らすと。ソコが蠢いているような。
突如全身を包む怠惰。骨が震えている。
汗も大量に噴き出している。
上からの圧力か、それより更なる上の何かなのか。
支えていることも出来ず、その場に押し付けられる格好になってしまう。
危機感が全身に指令をだす。
どうにかして現在の危機から脱出せよ。と。
そのような不可を許容できるのなら今頃このような場所にはいない。
さて、下ばかり見ていても埒が空かないだろう。
視線を眼下から前方へと移す。
お、あれは。何かの装置か。
対岸に見える機械的な何かがあった。
それでも簡単に事が進むなど烏滸がましいとさえ思う。
そう世界とは無情にして非道であり、矮小な理屈で塗り固めた滑稽なものなのだ。
足下には柱。埃すらない。有ったとしても使いようがないのだが。
軽くポケットを探ると。お、これは。
取り出したのは一枚の貨幣。
これをあの機械の何処かに当たれば何かしらが動くはず。だと思う。思いたい。
うん思おう。
良しっ。
おぉお上手く一発で当てられたが、もし失敗していたならどうなっていたのか。
うおっおぉ怖ぃ怖い。
さて、この先は。
扉がある。
だがそう簡単に行くものだろうか。
ほむ。なればこそだ。何か無いものか。
と周囲を見渡して芳しい物などないが、あるものはあの橋を起動させた装置。
それと何かないかな。お、これは。
出来た。どうしてか有った伸縮紐とあの装置を組み合わせて、事前に装置を固定していた金具も壊したし。
うりゃっ。
予想より大きな者。
ドレガニスが悲鳴を上げて打ち込んだ杭と共に果てない下へと落ちていく。
ん。どうしてあれの名前を知己しているのだろうか。ふむ。まあ悩んだところで時間の無駄だな。
さて外はどうなっているのかな。
不自然な笑いが聞こえる。いや、これは。自分の声でありながら何処か客観的な感覚を覚えるのはどうしてだろうな。はは。
見える範囲では。果てない空を想像していたが。
暗い。見えないだけかと考えたがそれも無さそうだ。さてどうするか。と悩んだとしても無駄か。なら。とりあえず。
覗いて底は見えない。なので昇る。
違うな。
息を深く吸い上げ限界までくると浅く吐き出す。
これを二桁限界まで繰り返す。
さて。溜まったな。軽く屈んで視線を黒の上部へ移し、力を解放する。
とそういえば落ちてきたときはこんな暗かったか。いやまあそれでも先は見えていたし明るかった。はずだ。
時間がそれ程に経っていないに関わらずだ。
よもや時間の概念がないのか。故に捻れている。ということか。はは。面白いな。
ん、体に違和感が。それでもぐがっ。なんだ。体ががっかはっ。
なん、だっこれ。
体に何かが巻き付いている。
て、おい昔に破棄した人工物体の。
ギレシュレイビン。
どうして存在している。
自分、ん。待て。だからどうして。
ん。時間の無駄か。
先を急ぐか。
お、巻き付いていたのが消えている。
ぐけでっ。
くはっ。何か意図的な殺意を感じるが取り敢えず上でなく逆、最下層へと落ちたが。いやは。全く。狂おしいなぁ。
さぁて。有限なる手札は幾つあるかな。
懐を探ると幾つかの無色透明無香な物が収まっていた。
これに対して対する数は膨大だ。
誤れば命失う先が見えている。
だが不思議と恐れはない。対処法がどうしてか知識に備わっていたのだ。
1つの手札を作動させ腕を振り抜いて上へと投げた。すると内部機構が外界との設置点から流れてくる情報を感知し開くと内部に圧縮搭載されていた縮式装置簡易型を起動、眼前一帯を灼熱へと染め上げる。
と同時に聞こえてくる音で1つの確定を掴んだ。
はっ。笑って、いるのか。ふふふ。そうか。しかしまだまだだ。
見えている分には問題ないがこれは流石に危険だろうと思考が解を導きだす。
くくくききかき、さてなれば問おう。このはこに。
手札の一つ。はこ。
数ヶ所を軽く叩き二回強くしてから足元に設置すると点から管を伸ばし適当な距離に至ると管の節から更に太い管が無数に延びてく。
延びきった先には何もなくではないが、それでも無いようなものである。
面倒になる前に地点を外さなければ命を失いかねない。
幸いに数歩歩いている間にそれは完成していた。
ハコは大きな人形を成し仕掛けを破壊していった。
破壊した先には大きな穴。
ほほっ、これは何とも楽しき愉快な悦を醸し出す実験素体よ。思ってるよりも深く浅く広くて狭く小さく大きな認識を誤認されるな。
だがしかしてだ。
湧き踊り狂うほど良い感覚は何か懐かしい。
しかし浸る事はせず。穴を観察していく。
ほはっはは。なんだこれは知り得て歓喜。無知にして懺悔だ。
それでは改めて行こうか。穴の先へ。
眠っていたらしい。長い落下は怠惰にして傲慢だ。しかし手札をこの場にて起動など愚行なれ。身を任せてみたが着く気配がない。何故だ。間違いはないだろう。
ん。誰のだ。
げぶふっ。
ど、どうやら、到着したようだ。
強かな痛みと嫌な音で到着したが全身が叫んでいる。
が直ぐに痛みは引いていく。
お、自然治癒か。
だが無制限とは有り得ないだろう。慎重に行動するに愚かとは誰も言うまい。
立ち上がり周囲を確認。しようにも、闇一色であるため自身の個としての存在が希薄に成っていくようだ。 悪意しかないな。と危険だな正解は失敗の原因と知っているだろう。いや、だから失敗てなに。
慎重に進みながら壁に触れたようだ。
触れて壁なのか疑問する。
壁にしては柔らかく、湿っていて生暖か。
予感というか予想は当たっており、触れる壁は壁でなくクローキングヴェイヴィーの一部だった。
ふむ。対処法は匂いの根元から遠い部分を撫で上げること。そうすると暴走し自我を崩壊させ自重にて自壊する。
さて匂いとしては左手側から。なら最も遠いのはその先か。
と左手側に進んでいく。
進んで間違いに気づいて仕方なく、更に進んでいく。それは愚策と思い知って項垂れるしかなかった。なれば、だと思考を切り替える。
奥の技を使うしかない。
止まって壁の様に考えるだろう適当な部分に触れ言葉を口にした。
直後に尻尾は光の粒となって消え向こう側が見えた。
あぁ。また失敗だ。
クローキングヴェイヴィーの中には寄生族モンドロクロイラが居住していたのだった。
表面であるクローキングヴェイヴィーを消しても寄生族まで消える事を内容に含めていなかった。
完全な失念で失策だ。
悪態を口にしてモンドロクロイラに持っていた道具で内容液を吹き掛けた。
すると襲い掛かっていた1つを起点として全てが悶えのたうち周りながら全てが動かなくなった。
ふむ。通常なればだ。溶解か崩壊するのだが、どうしてなのだろうか。形を保つとは。新種か進化か。まあ良い。これで障害なく妨害すらも無くなり向こう側へ至れる。と。そうか。時間が掛かったのか。
クローキングヴェイヴィーの頭が此方を見ていた。
全身が走り抜ける寒気と凶気は次の行動を自動で行った。
手札の1つを取り出し両側にある身体へ挿入させる。
と切断面から花が咲き誇りクローキングヴェイヴィーが萎んでいく。
と向こう側の先に出口を認識して近づき触れると場所が移動した。
それにしてもどうして闇に支配されていて個体や現象を認識できたのか不可解である。
出口の先には広がる水と凍てつく氷の世界。
寒さは極限でありこの時に気づいた時には愚かであろう。
小さく笑いながら自分の状態を理解していた。
先程まで着ていた衣服が全て無くなっている。
足元をみても残骸はなく、背後には出口が在るはずなのだが消失していた。
どうも、アレを境界として衣服等は消えるようだ。地区間の持ち込みは不可能と言うことか。
しかしだ。寒い。極限の寒さ。にも関わらずだ。
命の灯が全く、消え去ろうとしないのは、何故だ。どうしてかは、理解しかねるが。そうだな。一応としてだ。立っていても始まりはなく。進んでこそ得るものがあろうというものだ。
足から響く一歩ごとの轟音。普通に歩いているだけで踏みしめる一歩は全裸に響く。
強制振動により全身に僅かながらも体温上昇を認識する。だが僅かなために極限の寒さの前には意味を為さない。なら走るのか。と思考し、どうしてか止めた。止める理由は無いはずだが止めたのだ。だからこうして歩いているのだが。先の先には何も見えていたが近づいている。という感覚はなかった。
何を対象にした感覚かは判らなかったのだが、しかし。足を止めた。止めて。
全てを壊した。
想定通りに全ての構築を分解しそして再構築。
おお、想像通りだ。
一変する。
極限の寒さであった場所がこの通りだ。
流星雨だと。
そんな馬鹿な。
一面を撃ち尽くす流星が隙もなく降り注いでいく光景は正に圧巻と言うべきだろう。だが、だ。これはあり得ない。
想定では確実に一本道のはずだ。
ならば、どういう了見でこの光景だ。
距離はあるが進む事には戸惑われ、ないな。うん。
自身の一歩を妨げるならば、壊して歩もうではないか。
と意気込んでみたは良いのだろうが。さて、正直、どうしたものか。得てしてだ。既知は無限にあり無知はまた同等に在る。しかしてだ。二つは反しても交わり到達点へと着実に近づこうということだ。なここは。
逃避してみるか。
瞼閉じて耳を潰し、うぐ、て。
嗅覚を意図的に遮断し全身の触覚をも絶ち切る。
どれ程の時間が経過したのだ。全てを遮断し自我が崩れる前に知覚を戻したのだが。
むむ。これは想定内。ではあるのだが、見渡す全周囲にはエブラフリメンドが此方を見ていた。
むむ。これは妙な事態に成ってしまった。監視が現れるとは想定したが、四方やだ。
エブラフリメンドが配置されるとは。
む。まて。だから何が配置だ。むむむ。なんなんだ。
だが、これは多少の危険を孕んでいるのだろう。だからこその監視及び救護として送り込んだ。そして対象から一定の距離をもって移動する。
突かず放れず。て違う違う。
付かず離れずだ。
見たところ個の意志はなく完全統一の下で遂行するよう設計開発途中。
て、むむむむ。むむ。
知らないぞ。そんな知識は。誰だっ。誰の差し金めいた理だっ。うぐ、かはっ、い、息ができな、いぐううぅぅぅ。
ははははは。と笑いが頭に共振する。目覚め最悪だ。
笑いの元凶は多重の不協。
目覚め直後に何かが射抜くように見ている。
しかし反論できずに朦朧とし意識は失いいく。
ぐはっ、は、は、は、は、は、ほ、は、何があったんだ。命を失ったように思えたが、生きている。なんだ。一体。
と困惑したように装うってみたが、ひふふふは、愉しいかなぁ。ぃあぁあ、愉悦を満喫したいなぁ。
ふあっ、ダメダメだ。何を愉悦しようと逃げる選択だぞそれは。
気を取り直そう。
落ち着かせてと。現在は、何、何かの催かね。
周囲に配置されていたエブラフリメンドが1つもなく、変わりに後継機として設計段階で在る筈のレヴォーロカルマフルスが回り続けていた。
まだ開発には至っていないはずなんだが。むふむむ。
だけども。
何故に回っているのか。その様に設定しているのか。
設定してこの行動になんの意味があるのか、疑問しかない。ないが、一応は脱出せねば。
ぐぅく。
動けない。動かしたなら即で命を簒奪される。そんな予感というか確信がある。
見られている。という感じはするがその大元は判らない。
数というのもあるが、それだけではない。と。思いたい。
静かに息をする。
隙を探すなどという効率の悪い事はしない。隙は待つのではなく、自ら作るものである。
だから。手札を壊して使う。
壊した最後の札の効果は暴走と同時に一帯を『消す』という結果だけを残して自分だけが何もない世界に取り残されていた。
笑うしかないな。
もうこれは楽しみしか残らない。さてでは進もうか。
ん。待て。進むと考えても何もないのだ。立つ下さえ定かではない。なら自身はどちらを向いているのだろうか。
向いているのか。
まあしかし、貫かれるような視線のような何かは健在だ。
隠れる事も出来ないしする必要もないな。
さて適当に歩くようにしてみますか。
おごっおごごごごぅご。
い、い゛ぎが、でぎ、ないっ。
酸素は十分のはずだ。
たが、これは。十分以上だ。
ぐく、こなのままでは。ひっ。
嫌だっこんな判らないはずの場所で終わるなんて。
くはっ。
混濁する認識と意識を隔離するように分けながら思考は止まらず現状の把握と理解を深めていく。
答えは。
何処かに囚われていた。
囚われていたしても拘束されてるのではなく、狭い空間の宙に浮いていた。
が意識が整うと同時に落とされ顔面を強打した。
突然であり絶叫の暇なく転がり続けながら痛みを堪えられず絶叫を続け耳が痛み全身の神経が悲鳴する。
空間に反響する音が自身を蝕み更に絶叫すると反響して蝕む。永遠の繰り返し。にならないのは苦悶とする声を消す行為。
身体を抱くように小さくなり痛みを我慢する。
痛覚を和らげる方法など知らん。
痛みは続く。
ふとした瞬間とは誰にもが経験することだろう。
自身が正にその時を感じていた。のだ。
目の前に広がる面白い光景はふとした在る時に思い。描き。夢にまで見た。最大の計画。
そう。
わ、忘れた。
あれなんだか凄い壮大な計画を夢想していたんだが。
何か思い出そうとすると。
憎しみが湧き出してくる。
ん。何に対しての憎しみだ。おや。おやおやおやぁ。これは不可解で不理解で不明瞭なのだ。
だが奥底の先に1つのたった一個の感情は平坦な何処までも永遠とも続く先の終わり見えずの世界。
だがとして、自分という自身は肯定しようではないか。
己の中に無限にわき出る疑問という不能。
しかしそれは全てが血肉であり源力。
活力は生かしてこそである。枯渇などは愚弄と同等。
なら。進もうではないか。
驚くという無駄な行動を自身がしていることに打ちのめされながら面倒な場面に出てしまったと後悔している。
光に吸い寄せられる羽虫のようにある地点から聴こえる騒音へと意識を度外視して向かっていたのだ。
到着すると小さな存在が狭く無意味な領土を巡って無益な争いをしていた。
するのは勝手だが今は止めてもらいたいと思うのは。
丁度その領土の先へと行きたいからである。意識を度外視したとしても行く先は決まっていた。
あの地点から見えていた。現在も見える高い建物。塔といっても差し支えない灰色に染められた塔。
この無意味且つ無益な争奪は介入させて貰おうか。
笑い歩く。何か雑音が混ざるが気にしない。最短で向かうは目的たる塔のみ。
時間が思っていたより短く、目の前には多彩な色どられた塔が鎮座していた。
しかし問題があった。
1つの塔として見えていたものは複数の区画からなる巨大で目に痛い建物群だった。
どうして1つの塔に見えていたのだろうか。
視界にズレがあったのだろうか。
まあ今は詮索を中止しよう。さて、入り口らしきものは、今の地点では見当たらず。か。
なら移動してみようか。と見つけた。あれが入り口かな。
やはり入り口だった。
隠れるような位置に造られていたので下手すれば一周してから見つけていたかもしれないな。
ではでわ。行きますか。
くぼうあっがぼぼぼ。
何が起こったんだっ。
入り口だったはずだ。なのに扉に触れた瞬間。身体が固定され意識を半分持っていかれて。其からの記憶を瞬間に失くして、気づいた時にはもうこの液体に入っていた状況。
抗いには遅く思考は停止しそして早鐘は命の終わりを告げていた。
体内に残っていた空気を全て消費して、混沌として混濁して、命は、消えていった。
う゛ぁおぉおえぇえぇぇぇえぇぇ。
肺に腹に入り込んだ液体を体外に排出するため口から多量に出していく。
一通り吐き出し振り返ると大きな水槽。人が多数入れる程の。
調整槽ー複数型ー。
一人のためではないので深く大きく出るには苦労するのだが、出るまでの過程が思い出せない。
だが、それはどうでも良い。
現在の何がどうしてこのような物に入っていたのか。そしてこの場所。見覚えがあるようで知っているし。
知っているからこそで訝しんで、納得出来ずにただ見ていた。
はずだが、自分の意識は何を認知したのだろう。
目の前の全てが加工するように同じ大きさに刻まれ、一ヶ所に纏められ大きな正角形が出来上がり、上空へと消えていった。
残されたのは。何もない空間とも言うべき場所か地点かはたまた、何か。
遣ることがない。
手持ちぶさたもあり行動に移そうにも何もなければ意味がない。
溜め息をして深呼吸をして眠ろうとして吸い込まれる強烈な風が吹き荒れた。
どうしようかね。
右を行くのか左か捻り千切って中央を進むか。さて。どうしようかな。
左右と中央と選択肢を考えたけど、別の道を選んでも問題はないと思う。
目的のない旅路なのだから。
指標は持っていないと途中で折れそうだな。さて。何を指標にしようか。
そうだな。取りあえずはあの山の麓辺りまでかな。
では、どの道を行くかね見たところ、左の先が見えないが、それはそれで楽しみでもある。でもだよ、右のあからさまもまた面白味があるよねぇ。なら間を取って下か。地面を掘り進んでみようか。
僅かに足へ力を込め、地面を打ち抜いた。
が、込めすぎたのか崩落し地面の先へと落ちていく。
何事もなく落ち続けて到着したのは、一面を青に染められた空間。何もなかった。
索敵しても何もなかった。
困惑しかなかった。捻り尽くしても何もなく。視点を変えて考えてみた。
と空間が全てが振るえていた。
何もないはずの空間で何もしていないのに振るえていた。断続的に。
しかし出口など無い。無いのに続く音は徐々に響きを増して空間の一部が弾けて消えていった。
壊れた向こう側の何かが見えたが一瞬で消えた。
警戒して動かないのは馬鹿なので一気に出ていこうとした。がどうしてか見えない何かに阻まれた。
仰け反って一歩を後退しながら大きな一歩を前に出す。
何もなく通れた。何だったのだろうか。
と気を散らすには速いか。
目の前に知らない見たことない怪物が群れて此方を見ていたんだ。
ひぐっ。という言葉が無意識に口から出ていた。
言い知れない恐怖というものを表に出したんだろう。
でも怯んでいては時間が勿体ないので気丈に見せて歩き進む。
振るえる身体を抑えながらその中を歩み進み。
そうして何とか身を隠せる地点まで到着して隠れた。
遮蔽物から少し身をだして、来た方向を見るとあの怪物の群れが此方を見ていた。でも、動かない。見るだけ。
それでも寒さが身体の中心から昇って凍りつかせるような。
動かないなら無視するが得策。下手に何かをして面倒はごめん被りたい。
時間感覚など無いのでどれ程の距離を進んだのは知れないが、疲労は確実に蓄積され限界も近い。だが、休むという選択は出来ない。何故なら、あの怪物が距離を開けて着いてきているから。何もしないとはいえ、何時かは襲ってくるかもしれないのに気を休めてはいられなかった。
その様な緊張状態を維持しながらの移動は、肉体よりも精神に来るものがあり、気づくと大樹の穴で眠っていた。
そしてあの怪物が見ていた。
それはもう大きな声を上げて怪物の群れを分け入って逃げた。よ。
全速力での逃避は思っていたより疲労があり、今は水だと思われる液体に浮いて休んでいた。
何もない上を見ながら何も考えず浮かんで沈んで浮かんで。
思考を放棄したいけど出来ないから揺蕩うことを堪能して、先のことを思い描いてみる。
目下はあの着いてきて何もしない怪物。数は増減するけど着いてくるだけ。
何もしない。見るだけ。
張り付けたような表情はたくさん。
それでも嫌な気分だ。
手持ちはない。
無いに等しい。だからこそ考えを巡らせる。最善手などという贅沢は要らない。欲しいのは不正解を内包した正解。
間違えであっても、僅かな差で届く回答を。
ふうっっ。と息を一気に吐き出し怪物の前へと這い上がる。
やはり、何もしない。見てくるだけ。
なら逃げる事はない。無駄な体力は使わない。
さあ。
目的地は定めた。
出口を。
見つけて理解不能な、この地を終わらせる。
歩いている。背後には変わらずの怪物。
無視して目的地へと歩を進め視界に捉えた最後の関門だろう大きな深い絶望的なまでの何か(・)。
その何かの先には最終目的地が見えている。でもその一歩を踏み出すには勇気がいる。
はっ、そんなもの関係ないね。時間稼ぎにもならない。
さて。では進もうか。淵へ至り。その先へ迷うことなく歩き出す。
迷うことなく思考はあの光景。
数百か数千か。たどり着いたのは寂れた土地。
振り返ると大きな何かは無くなり只の平坦な地面が存在していた。
自分の考えを迷わずに進んだからこその答えを見いだせた。では入ろう。
その土地には統一感のない、それでも整然と並んだ何か。
形も様々で寝かされた板の片方の端から立てられた形の異なる物。
または幾つかの形を合わせて立てられた物。
それ以外にも凝らしたような物が見える範囲で存在していた。
それらの中央には大きな丘のように盛られた物。数えきれない程の塊を綺麗に並べ積み重ねられた建物。
そしてそれぞれの上空にこれ見よがしに浮いている扉。
何を意味するのかは理解している。でも正解は1つ。とは限らない。全てが合っているし。全てが否定するように間違っているかもしれない。
だからこそ少し、考える。
この小さな物は何かを意味しているのか。それとも関係ないのか。はたまたもう答えを持っているのかいないのか。さて。どうするべきか。
少し、歩いてみる。
何かを見つけられるかもしれないから。
おお。そうか。答えは右に。見せて本当は左の方。
であるるように思わせてその間にある地面の中。
と思わせてからの上空だっ。
はぁ。あんな場所までどう行けというのかな。
ん。あれは。
初見では確実に何もなかった筈の坂のような物。が現れていた。
でも違うと即座に改め、観察していると繋がる階段だと理解した。理解したら在ったけど消えて、は現れてを繰り返している。
点滅に近いなぁ。とも感想を思い浮かべた。
しかし見続けていると目に悪い。どうしようかな。
躊躇して何か産まれるのか。否だろ。以下になり下がりたくもない。
だがこれを選んだとして、だ。
正解と歪みは両立するのか。
まあ両立させたら世界は肯定と否定の戦争が始まるのだろう。
なら迷うな。突き進め。そして自分のこれまでを信じず否定しながら抗え。
抗え。とは考えても近づいて触れられるかと思ったけど、点滅する階段は実体が感じられない。僅かだけ。
たと、嫌な空気の流れを感じて目を向けると怪物の群れが近くにいた。
気づかなかった事は驚いたけど、本当に見ているだけで何もしてこない。
不吉で不愉快。だけど其処に何か意味を感じた。
決意して近づいたら距離を離すのかと考えていたのに動かず、佇むだけ。
1つに触れると粒子に成って集まり1つの多角形に変わった。
意味を見いだせ。と思ったけど、この先に何があるのか。
とこの多角形の形。何処かで見たような。そうだ。探索している時にあからさまに在った窪み。それに近い気がする。
と迷うな。思い立ったら勢いだ。
在った。場所が何か違うような気もするけど確かに在った。持っている物と一致しそうだ。でも他には在るかもしれないから更に探してみる。
結論では他にも在った。そして最初に見つけた窪みはやはり、合わなかった。微妙に形が異なり填まらなかった。だから他に見つけた窪みに同じ事をして早い段階で正解を引き当てた。そして元の場所に戻ると階段は点滅もせず触れることが出来た。
気が緩みそうだけど引き締める。この先を終わりと思わず周囲に気を配ることを忘れず一段一段を踏み固めるように昇っていく。
最後の手前で何だろう心が痛い。気が速まっているのか。それとも別の意味からか。
呼吸を整え落ち着かせてから改めて周囲を見渡す。
何もない。無いはずで何かある。という確信のような気持ちがある。これは嫌な予感というよりもう解った。
だから一歩を踏み出し扉に触れると同時に階段から飛び降りた。と同時に破壊音ご頭上から響き着地と同時に衝撃を緩和させるために転がり体勢を整えてから上を向くと大きな怪物が見下して嗤っているように見えた。
不理解な苛立ちと同時にその場を走って逃げを選択した。
走ること暫く。
止まることを否定して走り続けて疲労は限界を超えている。
止まりたい。でも止まればそれはもう命を失うことを意味。ひ、ひいぃぃぃ。
ひたすらに走り続けるしかなかった。
認識。
覚悟を決めて渓谷を飛び渡る。
背後と足元から叫びが聞こえてくるけど無視する。空を数回跳躍して対岸を越えて更に先。先の先へと向かうだけ。
障害を全て通り越えて到着したのは多重に張り巡らされた封印場所。
来るまでに紡いだ結晶を遠投して打つけると結晶は吸い込まれるように消え、封印は解かれて放たれるは正負を交ぜに混ぜた終局の不完全対。
力が片方に寄りすぎて均衡が取れていなかった。だから何時でも暴走するし、したらしたで面倒になる。だから封印した。でもこれは現実を否定する空間だからこの場所には居ない。在るのは小さな欠片。それでも欠片といえ、その大きすぎる領域は誰もが欲して諦めた。さあこれで終わりだ。全てを消し去ってやろう。
この無意味な《夢》を終らせて、く。れ。
誰でも良いから。
意識が解離していく。
認識していた全部が溶けるように消えて最後に残った奥底の塊に触れると。
あ、あああああああ゛あうっ。
途切れて消去されていった。
ソレデハサイショカラヤリナオシマショウ。
光は終わりの地点から再設定した場所へと運ばれ再構成までの時間が表示され。空間は一時的に閉じられた。
~終~
1つの影と背後に複数の影。全てが僅かに揺れている事から実体では無いことを伺わせる。
見ている停止した全域に関してこれまでの事柄が全て内部を含めて記録されている。
誰かはいう。
最後は命を絶って終わらせるて。
誰かは反論する。
これが究極の答えだろう。
また、何者かは答えた。
笑いながら言って良いのなら言わせてもらうけど。飽きてきた。
無機物的な声をだして言う。
むせびなきたいようでありきたり。これでなんどめでしようかね。
それは。ほらこの通りさ。
うえっ。ほんとうですか。
これに関しては虚偽しないという取り決めでしょ。
ははは。わらいたいけどわらえない。
真面目な声。
素直に進めば理不尽に命が消えて。混ぜて進むも絶望を目の当たりにしながら同じ様に命は消える。でも工夫して捻ると少しだけまともな最後で終われるけど正解じゃないのが残念だなと。全員が鬼気として見始めて、今は片手で足りる数しか見ていないのはどうなんでしょうね。
1つの咳払いで話は切られる。これは何時からか決まった。話の総纏め。
進行報告。
複数の状況下での綻び状態から始めて何を出すのか。完全に封じた状態での行動も同じく観察対象とした。
状況打開のための道具あり。
結論。
前者は軽い混乱は見られたが、前向きか単なる浅はかなものか。
道具に対して疑問はあれど素直に受け入れ即座に対応して使用。
後者は同じようだったが道具を用意しているはずで使用せず。というか気づかず肉体と思考と直感で行動していた。不安要素が無いからか思考の切り替えは軽く思考は瞬時にて行動も速い。
悩むという事さえなく目の前の全てを排除して進む。
今回の終わりに関しては全会一致にて呆れていた。多数ある結果と変わらず。代わらずに換わらないもので差異は微弱にて面白味に欠けるため書き列ねる事はないとなった。
纏め。
少しはマシに成るかと思われるが、何ら変化なくこれはまだまだ改竄の余地あり。と書いときます。
報告終了
尚。詳細は別項にて記述するため割愛させていただく。
~完~