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クリッカーの転職物語  作者: タヌキ汁
第三章 強者へと至るその代価
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たどり着いたのは見慣れた所


 シオウは街には一度も寄らずに、そして村にもできるだけ近づかないようにしながら、森の奥でひっそりと過ごしながら他国に渡る為に東へと進んでいた。

 人と関わることを恐れている・・・・・というか、この国の人達と関わることに警戒しているのだ。


 この数日の間に色々な人と出会った。

 狩人さんや樵さん、各村々にお手紙やお荷物を運ぶ配達人さんや流れの傭兵、中には狩狼官(狼を駆除する人)などといった人にも出会った。

 そしてその全ての人が生粋の帝国人だった。


 行き成り殺しに来るわけではないが、絶対森の中で出会うと呼び止められる。

 呼び止められて、皆笑顔でテメェ何処のモンだと優しく問いかけては、俺の狩場で、俺の森で、俺の通り道で何をしているんだと問われ、そのまま呼び止めた人達に実力を試させられる。


 雑魚なら毒飯食って死ね。

 雑魚なら首落して死ね。

 雑魚なら沼にハマって死ね。

 雑魚なら俺に斬られて死ね。

 雑魚なら獣に食われて死ね。


 出会った人は皆そんな感じである。

 そして、そんな物騒な人達もちゃんと彼等が提示した試験を乗り越えれば、特にそれ以上の事はせず、普通に話して別れるだけだった。


 中には旅に役立つ物をくれるが、はっきり言おう。そんなの貰っても割に合わないと。

 なのでシオウは定期的に高い木々によじ登ると、周囲を伺いつつ村や街道を探すようになった。

 そして村や街道を見つけたらどれだけ時間がかかっても、離れるようにしている。

 だってそうしなければいちいち変な人に試させられるから。


「うぅ~、まだ~」

『まだみたいねぇ』


 まあ、気を付けているとはいえ全てを回避できるわけもなく、何度も変な奴等に絡まれてしまいシオウはもうこの国に嫌気がさしていた。


「うぅ~! 帝国広すぎだよっ! もうこの国イヤなのに!」

『そうねぇ。思ったより広いわねぇ』


 珍しくお姉ちゃんに感情をぶつける。

 それだけこの国の住民達はシオウにとってストレスでしかないのだろう。

 いや、帝国の価値観がストレスと言った方がいいのかもしれないな。


「うぅ、いつになったら着くんだよぉ。もうやだよぉ~」

『そうねぇ。嫌よねぇ。だけどもう少し頑張りましょ? もしかしたらあの山越えれば国境が見えてくるかもしれないじゃない』

「そうかなぁ~?」


 帝国がどれほど大きい国なのかわからないが、流石にそろそろ国の端っこくらいは見えてもいいはず。

 馬並みの速度で真っ直ぐ数日進んでいるのだから。

 良く変なのに捕まるし、食料採取に明け暮れる日もあったが、そろそろ着いてもいいはずだ。


『ほらほら頑張って、あそこの山まで登りましょう。それでもしも国境が見えなかったら美味しいご飯探ししましょ? 一つ山を越えれば新しい食材が見つかるかもしれないしね』

「む~・・・は~い」


 優しく先を諭され、更には餌までぶら下げられたシオウは、やる気無さそうにしながらも、進みだした。

 そして、お姉さんに諭されながら山の頂上へと着いた。

 そこで見た景色は、目的のモノとはかけ離れたものを目にする事となる。


「・・・・・・・・・・・・・」

『あらあら・・・・・・・・・』


 シオウにとってはとても見慣れた景色。

 大きくて青くて肌に張り付くようなベタツク風が強く吹いている場所。

 そう、遠くのほうには太陽の光を反射させた美しい海が広がっていた。


「・・・・国境は?」

『海の彼方かしらね。恐らく帝国の東側は海なのよ。う~ん、そうなるとどこかの街で他国に渡れる船に乗らないとダメね』

「ねぇ、お姉ちゃん。お船に乗るのとってもお金かかるって聞いたことあるんだけど・・・・」

『とってもお金がかかるかどうかはわからないけど、確かにタダではないわね。そうなるとしばらく街で資金稼ぎしないといけなくなりそうね』

「街で・・・・・」


 せっかく怖い人達から距離を取っていたと言うのに、ここにきて距離を詰めなければいけなくなった。

 物凄くイヤだ。

 関わり合いになりたくない。


『落ち込んでも仕方ないでしょ。海を渡るには船が必要なんだから。まさか自分で作る訳にもいかないし・・・・あっ』

「作る?・・・おお!? 作る!!」


 軽口を発してしまった後、やってしまったと思うお姉さん。

 この子の性格上、絶対無謀な事であっても興味を惹かれたらやり始めると思ったから。


『ちょ、ちょっと落ち着きなさい! 船なんて素人が作れるわけないでしょ! しかもそれで海を横断するとかバカにも程があるから!!』

「大丈夫! 僕は港育ちだから大丈夫! 遠くからだけどいろんな船見たことあるし! 形とか大体覚えているから大丈夫っ!」

『形ぐらい誰でも覚えているわよ! というか外観だけ見て作れるほど船作りが簡単なわけないでしょ!』

「だいじょ~~~ぶ! 僕に任せて! 絶対カッコイイの作ってみせるから!!」

『どこからその自信が来るのよ! 絶対無理! お願いだからあんまり無謀なことはしない『海賊王に俺は!!』うるさい! 今出てくるな! 空気読め』

「よ~し! 頑張るぞ~!!」

『いや! 私の話聞きなさいよ!!』


 そして案の定変なスイッチが入ったシオウは、先程とはうって変わってヤル気に満ちると、そのまま海へ向かって駆けていった。


『『『大秘宝を探しに行こうぜ!』』』

「おぉ!? 大秘宝!? 何それカッコイイ! それ僕も探す!!」

『探さないわよ!』






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