僕達は一心同体
『ステージクリア! ステージ34に上がります! くわえて貴方の全てが上昇します!』
お姉さんの言う通り丸一日のんびり休んだシオウ。
木に登ったり、穴を掘ったり、クリッカーで遊んだりしていたおかげか、次の日の朝にはステージをクリアすることができた。
おかげで力が更に強くなっのを感じる・・・かも?
うん、よくわかんないや。
確実に力はついているとは思うけど・・・・。
まあ、わからないのだから仕方がない。
それに、僕にとっては
「お姉ちゃん! ステージクリアしたよ!」
『ええ、よく頑張ったわね。偉いわよ』
「えへへ~」
こうやってレベルが上がるたびに褒められる方が楽しみだ。
いつもお姉ちゃんは褒めてくれるが、こうやって何かの結果を残したときに褒めらえる方がなぜかとっても嬉しく感じる。
恐らくシオウのその気持ちは、子供がテストで満点取ったときに親に褒められるような感覚に近いのだろう。
シオウにとって画面をつつく(ぶん殴る)行為は鍛錬であり遊びであるのだが、それでも自分が何かを成して目に見えた結果を認めてもらえ、更には喜びを共有できるのが嬉しいようだ。
「それでお姉ちゃん。こっちであってるんだよね?」
『ええそのはずよ。けど本当にやるの? もう二日たっているし放置されていたら酷いことになってると思うけど・・・・』
そしてシオウが今向かっている場所は、二日前に戦闘した街道だ。
いったい何をしに行くのかと言うと、殺してしまった男達の死体が野ざらしに放置されているのであれば、埋葬してあげようと思っているのだ。
悪人ではない人を殺してしまった。
そんな罪悪感を紛らわすために向かっているのだろう。
お姉さんからすればどんな理由があろうとも武器を持ち、人に刃を向けた時点で殺されることは覚悟の上であるのだから、そんな事をしなくてもいいと思うが、埋葬することでシオウが前を向けるのであればと考え口を挟むことはない。
心の中では死体など獣に食われてしまっていればいいのにと思っているが、それを表に出すことはない。
「うえぇぇぇぇ、くさいよぉ。」
『だから来ない方がいいって言ったのに・・・』
街道に着くと男達の死体は装備一式奪われ、服さえも脱がされて全裸状態で一箇所に集められ放置されていた。
更に獣に食い荒らされており、かなりグロテスク光景が広がっている。
物凄く情操教育に悪い光景だ。
「うっぷ・・・・・きもちわるい」
『ほらほら、一旦離れて休みましょ? 流石にこれを片付けるのはきついでしょ』
「う~~~・・・・・・・・・・・むん! 大丈夫! 頑張って埋め・・・うえぇぇぇぇ」
『もう、吐くくらいならやらなきゃいいのに』
「だ、ダメだもん。やるんだもん」
『まったく、変な所で意地っ張りなんだから』
ここで逃げたら意味がないと思い、お姉さんが優しく止めるのも聞かずに穴を掘り始めた。
死体のすぐ傍で穴を掘っているのでちょっと、というかかなり匂うが漂って来るが、そこは我慢だ。
「うっぷ・・・・うぷ」
何度も嘔吐きながら、必死に穴を掘り進めていき、物の数分で深い穴を作る。
「うえぇぇぇぇぇぇぇぇ。なんか変だよぉ」
獣の死体なら何度も触れたことがあるが、人の死体に触れるのは初めてのことで物凄く気持ち悪い。
氷のように冷たいし、異様に固いのだ。
お肉はプニプニしているが、腕とか全然曲がらなくて変な感じだし、獣に全く食べられていない死体は風船の様に膨らんでいる。
まだ獣が食べられている奴の方が気持ち悪くはない。
いや、やっぱりバラバラ死体のようだからどっちにしても気持ち悪いや。
「うぅぅぅぅ」
気持ち悪さと、異臭に涙目になりながら、死体を穴に入れては埋めていく。
身体能力が高いおかげで素早く運ぶことができ、体力的には全然疲れていないが、精神的疲労はかなりのものであった。
「お、おわったぁ~。うえっぷ」
『まったく、そんなになるならやらなければいいのに』
「だって~」
物凄くきつかったけど、これはやらないといけない。そう思ったから仕方ない。
意味ないとは思うし、これで許されるとかそう言うことは考えてないけど、自分でやったことを最後まで片付けることに意味がある様に思えたから。
『まあ、よく頑張ったわね。彼等もこれで少しは浮かばれるわ・・・なんて流石に言えないけど、少しはシオウの謝罪が届いたと思うわよ』
「うん、そうだと良いな」
『大丈夫、きっと届いているわよ』
「・・・・・うん」
最後に埋まっている男達に手を合わせて頭を下げる。
『『『『なんまいだ~、なんまいだ~』』』』
「う? なんか言ってる?」
脈絡もなくまた頭に知らない人達の声が響く。
なぜか皆同じ言葉を唱えているのだが、なんの意味があるのだろう?
『たまに聞こえてくるわよね。その変な人達の声・・・・・それってシオウの前世の記憶なんでしょ?』
「う?? ぜんせ??」
『そうよ前世。シオウの魂がこの世に生を受ける前に、生きていた人の記憶のことよ』
「?? よくわかんない」
『まあ、そうよね・・・・要するにシオウの頭の中には、シオウが一人ぼっちで寂しくないように、神様がいろんな人の記憶を植え付けてくれたと思っておきなさい』
「う??・・・・うん」
よくわからないが、そう思っておけとお姉ちゃんが言うならよくわかんなくてもそれで納得することにする。
まあ、もともと気にしてなかったし。
「あれ? そういえばお姉ちゃんにも聞こえるんだよね? なんで??」
『そりゃあ私はシオウと一心同体なのだから聞こえるのは当たり前じゃない』
「いっしんどうたい?」
『二人以上の人が心を一つにしている・・・・まぁ、私とシオウはとっても仲良しってことよ』
「おぉ! なるほど! 仲良し! うん! 僕とお姉ちゃんはいっしんどうたいだ!」
ちゃんと説明しても多分理解されないだろうと思い説明を省くお姉さん。
もう少し大きくなったらちゃんと教えればいいだろうと考えているようだ。
『まあ、それはそれとして、挨拶もしたんだし手と体を洗いに行きましょ? 能力のおかげで免疫力が強くなっているとはいえ、絶対病気にならない訳じゃないのだから』
「めんえきりょく?」
『シオウの身体を悪い病気から守ってくれる子達のことよ』
「ほへ~」
『さっ、わかったらここに来る前に見つけた水辺で体を洗いましょう』
「は~い」
そして、お姉さんの言いう通りにシオウは、その場を後にする。
『ああ、それと今日は東じゃなくてちょっと南寄りに進むからそのつもりでね』
「う? なんで~?」
『なんでもよ・・・そうね。しいて言えばそっちの方角に何かいいことが起こりそうな予感がするのよ。もしかしたら美味しい物とか見つかるかもしれないわよ』
「そうなの!? ならそうする!」
なんとも操作しやすいと思いつつ、お姉さんは意図的にシオウが向かってはいけない方角を指示する。
前回シオウが助け、そしてシオウを殴り続けては化け物呼ばわりした男は北へと逃げて行った。
逃げた後生きているのか、それとも死んでいるのかなど知らないが、極力あの男と関わり合いにならせたくない。
出会ってしまえばそれがストレスとなり、またいらぬ罪悪感を抱え込まれても困るのだからと思っての指示である。
『(できるなら私の手で殺してやりたいわね・・・・)』
「う? お姉ちゃん?」
『ん~? なぁ~に?』
「??? ううん、なんでもな~い」
なんか機械的でとても冷たい声が聞こえた気がしたのだが、いつもと変わらず優しい声色であったので、気のせいと思いシオウは言われた方角へと駆けていた。
ピリッ
そしてそんなお姉さんの願いに答えるかのように呼び出してもいないにも関わらず一瞬クリッカーの画面が現れては消えた。




