旅のお約束
お姉ちゃんの指導のもと食料採取を行った日。
その日の夕食は、シオウにとって生まれて初めての豪華なディナーと呼べる食事をとることとなった。
主食は街で買っておいた安くて固いが長持ちするパン。
副菜は色々な野草の生サラダ。
主菜はむかんごを塩ゆでにしたものと、野草採取中に捕まえた蛇の丸焼き。
そして鳥の卵(採取中に鳥の巣から拝借)と色々な野草を一緒に炒めたものと、獣の油でさっと焼き揚げた野草の素揚げモドキだ。
デザートには多種多様の果物も用意されている。
流石にドリンクは水だが、それでも採取中に湧き水を発見したので飲み放題であった。
ほとんど塩味で、中には苦くて顔を顰める料理もあったが、それでも、お腹がはち切れんばかり食べられたことは幸福以外の何物でもなかった。
「ねぇ~、おねえ~ちゃ~ん。ご飯探そうよ~」
そんな食事をした次の日。
昨日の豪華な夕食が忘れられないシオウは、また森の中で食料採取を願った。
『まだ出発してから三十分とたってないでしょ? もう少し我慢しなさい』
「む~~~~、けどあそこに赤い実があるんだよ? 取りたいよぉ」
『木の実なら昨日取ったのがまだ残ってるんだからいらないじゃない』
「けど取れるときに取っておかないとまた見つけられるかわからないよ・・・」
『それはそうだけど、シオウの移動速度なら問題なく違う採取場所を見つけることができるわよ。それと貴方は気付いてないと思うけど、森の中を進んでいるのに平地で小走りするのと変わらない速度がでてるのよ?』
「?? ふ~ん」
異常な速度で移動していることを、どうでも良さそうに聞き流すシオウ。
まあ、シオウからすれば目の前の食材を採取できない方が重要だからな。
「ねぇ~おねぇ~ちゃ~ん」
『ダメったらダメ。採取するにしてもお昼を過ぎてからにしなさい。それとお話するのは一旦終わるわよ。あんまり無駄話しているといざと言う時話せなったら困るでしょ?』
「うぅ~・・・は~い・・・・ちらちら・・・・」
『・・・・・・はぁ、まったくそんなに気になるなら移動しながらクリッカーでもやってなさい。移動速度は落ちるけど、変に未練がましくされるよりそっちの方がいいわ。それにステージをクリアしていけばそれだけ身の安全が・・・・・いえ、食べられる物が増えるしね』
「あっ! そうだね! うん、なら移動中もステージクリア目指す! 採取できないなら食べられる物を増やす努力だ!」
『やっぱりそうなるか・・・・・・・毒を食べられるようになるのが強みじゃないんだけどなぁ』
「う?」
『何でもないわ。それじゃあね』
「うん! お休み!」
別に寝る訳じゃないのだがと思いつつも、無駄に話せる時間を無くすのもどうかと思いお姉さんは静かに口を閉じた。
そしてお姉さんと話せなくなったシオウは、寂しさを紛らわすようにさっそく画面を呼び出すと、いつもの様に剣(鞘付き)と拳で訓練を行っていった。
勿論周りに気を配りながら剣が枝にぶつかったり、木々を伝っているので足を踏み外し、落下しないように気を付けながら。
「てい! やぁ! とうりゃうわぁぁぁぁぁっ!?」
まあいくら気を付けていても、落下する時は落下する。
そして地面に落ちても頑丈な身体は傷一つ負うことはない。
「ふ、ふいぃぃぃ。怖かったぁ」
ただ木から落ちる恐怖はなかなかに慣れるものでは無かった。
「よし! もう一度だ! 頑張るぞ!」
そしてまた木を登り始めると木々を伝いながら移動し、訓練を始めるのだった。
「むふ~、ご飯! ご飯! ご飯のさいしゅ~!」
お昼を食べた後、お待ちかねの採取の時間が訪れた。
今日の夕食も豪華絢爛な食卓を囲むのだ!
そう意気込みながらシオウは周りを見回し、食べられそうな物を探し始めた。
「キノコ! キノコ! キノコ! 草草草! 虫! 変な黒い実発見! わっ!? 蛇だ! やったぁ! キノコ! キノコ! 草草草臭? あぁ、ウンチか。これはいらない。キノコ・草・キノコ・草草・虫」
じめじめした場所で採取を始めた為か基本異様にキノコの収穫量が多い。
そのほとんどが全部毒持ちのキノコなのだが・・まぁ、食べるときにお姉さんが止めるだろうから問題ないだろ。
「虫虫・キノコ・草キノコ・・・・・・・・??」
どこか歌を歌うように楽し気に採取をしていたシオウだが、不意に人の声が聞えてきた。
かすかに聞こえる程度でここから結構な距離があるようだが、何人かの叫び声? みたいなものが聞こえる。
「・・・なんだろう?」
変な人達がこの近くにいるのかと思い、一旦採取を中断すると近くの木に登り始めた。
「ん~~・・・・・もうちょっと登ろう」
軽く木を登った程度では、声の主達を発見することができなかったので一気にてっぺんまで登り、再度声のする方へと視線を向けた。
すると遠くの方で街道のような道を発見し、その街道では武器を持った人達が殺し合いをしていた。
片方は安そうな武器や鎧に身に着け、もう片方は高価な鎧や武器を身に着けている。
そして高価な鎧を身に着けている人達は一台の馬車を守る様に戦っていた。
「盗賊・・かな?」
その状況を見てなんとなく予想が付いたシオウ。
多分あの馬車にいる人はとってもお金持ちなのだろう。
だから襲われているのだ。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・負けそう」
しばらく様子を見ていると、徐々に高価鎧の人達が押されているのがわかった。
武器が優れていても、流石に護衛10人に対して80人近い戦力差を覆すことは難しいようだ。
後方から弓や石が馬車目掛けて投げられいるので、高価鎧達が攻めあぐねているのもあるのかもしれない。
「・・・・・・・・・・・・むんっ!」
様子を見続けて、色々考えた結果、シオウは一度気合を入れてその争う人達の元に行くことに決めた。
『・・・・・・あまり関わることはお勧めしないわよ? 面倒ごとに繋がるもの』
「けどあのままだとあの人達盗賊に殺されちゃうよ。流石に見過ごせないよ」
『そうかもしれないけど、私はあまり関わって欲しくないなぁ・・・・・・・まぁ、貴方が行きたいなら止めないけど』
否定的なお姉さんの忠告を聞きながらも、やはりその意見には賛同できず、シオウは木々を伝い争う人達の元へと向かった。
今の自分はとっても強い。
鉄の武器だって簡単に砕ける程強くなったのだ。
力が無くて悪い大人達から逃げて、隠れていた時とは違い戦えるようになった。強くなれたのだ。
ならこの力を使って人助けくらいはしたい。
人助けをすればいつかお空にいる両親と会う時に、胸を張って会える。そうシオウは思っているのだから。
「・・・見えた」
木々の合間を縫って数分後、未だに戦いは続いていた。
先程見た時よりも、立っている人の数が減っている。
ぱっと見盗賊の人数が20人ほど減り、高価鎧の人は3人減っていた。
そして地に伏している人達から濃い血の匂いがするので、倒れている人達は死んでしまったのだろう。
「もうあんなにやられちゃってる。早く助けなきゃ」
そう早く助けなければいけない。
なのにまだまだ距離は遠い
剣を振っても決して届くことはない。
「むー!・・・・あっ、いい事思いついた!」
良い事を思いついたシオウはまた木の天辺まで登っていく。
そして何を思ったのか、天辺まで登り切るとそこで思い切り真上にジャンプした。
強化された身体能力は三階建てのマンションに届くほどの跳躍力を見せる。
跳んだ本人もその跳躍力に驚きながら、背負っていた剣を一本引き抜き投擲の構えをとる。
届かないなら武器を投げればいい。
盗賊だって石を投げているのだから、初めから真似していればよかったよ。
「盗賊悪い子! 退治は必至! えいっ!」
殺すことに罪悪感が無いわけではないが、それでも盗賊は倒さないと後々酷い目に合うことは理解している。
だから躊躇を捨てて、思い切り盗賊目掛けて剣を投げた。
焼き鳥・・もしくは団子。
そんな風に表現するような物体が、シオウの投げた剣でできあがった。
たった一本の剣が、たった一度投げつけた剣が人の身体に深々と突き刺さり、そのまま勢いが止まることなく、一人目を吹き飛ばしながら更に二人目も巻き込んで突き刺さる。
やっと剣の勢いが止まったのは三人目に剣が刺さってからであった。
人を殺していると自覚はあれども、悪い人を退治することを止める気はない。
人を殺している時点でいい事ではないが、それでも良い人が死ぬよりマシだ。
悪い事をしている人を生かすより良い人を生かした方がいいに決まっている。
「えーーーいっ!!」
そう言い聞かせて次々と背負っていた剣を投擲していった。
「うわっ!? むぎぎぎぎぎ!・・・ふぅ」
そして落下の際は何とか木々にしがみ付き地面に叩きつけられるのを防ぐ。
痛くはないがいちいち叩きつけられ、また一から木登りするのは面倒だからね。
それにさっきは真上にジャンプしたが、今度は斜め前にジャンプしよう。
そうすれば攻撃しながら先に進める。
『・・・・なにか可笑しいわね・・・・何かしら・・・とても嫌な予感がする』
そう思い、またジャンプしては剣を投げ付けていたのだが、行き成りお姉ちゃんがブツブツと独り言を発しだした。
「お姉ちゃんどうしたの?」
『・・・・・どうしたと聞かれると困るけど、なんかあの盗賊達に違和感を感じるのよね・・・ねぇ、やっぱり関わらない方がよくない?』
「ダメだよ。まだあんなに盗賊がいるんだもん。あの護衛の人達死んじゃうかもしれないよぉ」
『・・・・そうよね。シオウってそう言う子よね・・・わかったわ好きにやりなさい』
「うん!」
なぜか悪者退治を渋り出すお姉ちゃんに首を傾げたくなるが、お姉ちゃんからも許可を貰えたのでシオウは張り切って盗賊達を退治しだした。
そして、二十本近く背負っていた剣や槍を投擲し終えた頃には半数以上の盗賊が息絶え。
最後は現場に着いたシオウと、生き残った護衛達で退治していくのだった。




