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クリッカーの転職物語  作者: タヌキ汁
第三章 強者へと至るその代価
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シオウ達はやらかした事を知らない



 赤ん坊から刃物を取り上げる。

 そんな意味のわからない理由の元、シオウは兵士達から武器を取り上げた。


 はっきり言って泥棒以外の何でもないのだが、そこはまあ、襲ってきた方が悪いと言うことで良しとしよう。

 もしもシオウが残忍な性格であったならば兵士達は誰一人生かされていないのだから。


 そして兵士達から没収した武器を縄に括りつけて引きずって歩いたシオウは今どこで何をしているのかと言うと、


パチパチパチパチッ

「じゅるるるる」


 森の中で獲物を捕まえたので、焚火を起こしてバーベキューをしていた。

 しかも没収した剣や槍に肉を突き刺して焼いている。


 もはや武器としての役割など無く、ただの調理道具として扱われているのは如何なものかと思うが、使えるモノは何でも使う精神のシオウだ。

 武器だから調理道具にしてはいけないなどと言った凝り固まった思考にはならない。


『衛生面から考えて武器で焼くのは止めて欲しいのだけどね』

「えいせいめん? なにそれおいしいの?」

『ネタで言っている訳・・・・・ではないのよねぇ』


 純粋に聞きなれない言葉に疑問を浮かべるシオウに、お姉ちゃんは呆れたようにため息を吐く。

 なんでも食べ物に結び付けないでほしいものだ。


『何でもないから食事に集中しなさい。ほら、右端のお肉とかそろそろ良さそうよ』

「あっ! ホントだ! あち、あちちちっ!」

『慌てずに食べなさいね』

「うん!」


 大きな葉っぱで剣の先を掴みながら肉に噛り付く。

 野性味あふれる独特な匂いと、野山を駆け回っていた筋肉質な肉。

 焚火で焼いている為余分な脂が更に落ちてしまいパサパサした固い肉になってしまっているが、


「うまい!」


 それでもシオウにとってはご馳走以外の何物でもなく、とても美味しそうに頬張っていた。

 そんなシオウを見て、お姉さんはもう少し美味しい物を食べさせたいわねぇと親心のようなモノを思い浮かべていた。


『食べ終わったら先を急ぎなさいよ。その剣を没収した兵士達が追い掛けて来ないとも限らないのだから』

「もぐも? ごっくん。何で追いかけてくるの?」

『なんでも何も、ああいう手合いは無駄にしつこかったりするのよ。まあ、流石にあれだけの力の差を見せられれば、追いかけてこようとは思わないでしょうけど。それとちゃんと嚙んでから飲み込みなさい。喉に詰まったら大変でしょ?』

「もぐも! もぐもぐもぐもっ!!」

『話すときは口の中に物が無くなってからにしなさい! めっ!』

「もえっ・・・・・・・・『いえっさ~!』」


 返事をしたかったのだが、まだ口にお肉が入っていた為シオウは心の中で返事をする。

 これで怒られなくてすむし、よくよく考えればこうやってお話すれば食べ物を喉に詰まらせることなくおしゃべりができる。

 これは良い考えだと思うシオウである。


『変な事考えてない? もしも悪い事考えてたら、そのうち悪い子になっちゃうわよ~。悪い子になっても知らないんだから』

『悪い子!? やだ! 僕強い子がいい!』


 そしてちょっとつついてみれば、ボロが出る。

 ホントに隠し事をするのが下手な子だと呆れながら、シオウの食事が終わるのをまったりと待ち続けた。

 そんな平和でゆったりした時間が流れていった。









「面白い知らせが届いたぜ」


 ここはシオウの良く知る奴等がいる場所。

 そう帝国騎士達の訓練場だ。

 そんな場所でシオウをサンドバックにしていた騎士の一人、ザンザが連絡要員から面白い話を聞かされて笑みを浮かべる。


「面白い知らせだあ? どうせまた聖教国のスパイでも見つけたとかだろ。殺すのはいいが、流石に雑魚ばっか相手だと飽きてくるぜ」

「残念ハズレだ。もっと面白い内容だぞ。笑えるくらいにな」


 ニヤニヤと気持ちの悪い笑みを浮かべ続けながら勿体つけるザンザ。

 その笑みが気にいらないのかタングラはザンザに向かって拳を振るう。


「あぶねぇな。気を付けてくれねぇと殺しちまうところだったぜ」

「できもしねぇこと抜かしてんじゃねぇよ」

「喧嘩なんてくだらねぇことしてんじゃねぇよ。やるなら殺し合えよ。つか俺も混ぜろ」

「サンドバックがくたばってから全員鬱憤が溜まってるからな。俺も混ざらせてもらうぜ。戯れるだけでもいい運動になる」


 そう言うと騎士達は殺気だつのだが、その中でザンザだけが一人楽し気に笑みを浮かべていた。


「なんだコイツ? 脳みそイカレタか?」

「サンドバックがくたばったか。そうだよな。そうだよな。根性ねぇサンドバックはくたばっちまったよなぁ。くくく、クハハハハハッ!」

「・・・壊滅的にアホになりやがったな」

「殺し合いは好きだがアホの相手はしたくねぇぞ。こっちまで同類とみられそうだからな」


 ザンザの奇行に、流石の仲間達も心身ともに距離を取りだす。


「ヤバイ薬にでも手を出したのか?」

「油でも一気飲みしたんじゃねぇ?」

「大方どこかの奴隷女を抱いて来たんだろ。性病にでもかかってショックでイカレたんだろうよ」

「「あぁ~なるほど・・・・ご愁傷様だな」」


 そして、いつの間にか先程までのギスギスした殺意はなくなり、笑い続けるザンザにどこか同情的な視線を向けていた。


「いやぁすまねぇ。すまねぇ。アホになった訳じゃねぇんだ。ただな。クソ面白い話を聞いちまってよぉ。それを思い出しただけだ・・・クククッ」

「そうかよ・・・・つかマジでキメェ」

「そうだな。俺も同意だ」

「左右に同じ」


 未だに笑いが止まらないザンザに三人の距離が更に開く。

 どれだけアホと関わり合いになりたくないのだろうか・・。


「クックック、俺の事を散々キメェ、キメェって言ってるが、この話を聞けばお前等もキメェくれぇ笑うと思うぜ?」

「はっ、だったら早く言えよ。どうせ大したことじゃねぇんだ「サンドバックが生きてるぜ」・・・なに?」


 バカにしたように煽るタングラであったが、ザンザの言葉に真顔になる。


「さっきあの伝令から面白い話を聞いた。ビスデールって街の雑魚兵士共が一人のガキに丸裸にされて武器を奪われたってな。」

「あん? ガキだぁ?」

「まさかそれがサンドバックのことだとかぬかすつもりか?」

「そうだ。報告で聞いた特徴と俺等が知っている特徴と一致している。身に着けていた服も髪の色も身体付きも年齢も、そして」


 名前もな。と言う言葉に、自然と全員の口元が弧を描き出す。

 それだけ一致しているのであれば高確率でサンドバックは生きている。

 どうやって首輪の爆発を耐えきったのかなど知らない。

 だが遊び道具が生きている可能性がある。

 しかも自分が死んだと思わせて俺等を騙したのだ。


「ククククッダーハハハハッ!!」

「ケケケケッ、いいなおい! いいなおう!」

「グフフフフ、騙されてしまったな。あんなガキに、あんなサンドバックに騙されちまったぜ。グフフフフフフフッ」


 こんな最高に面白い奴は見たことがない。

 ああ楽しい。ああ楽しい。

 殴られるだけの道具ではなく、此方を楽しませてくれる道具であるのがとても楽しく、そして嬉しい。


「久しぶりに狩りに出かけようぜ。獲物は小狡い野ネズミだ」

「「「おう!」」」


 そうザンザが声を掛ければ、珍しくも息ピッタリに返事をするのだった。




「お姉ちゃん! 今日の寝床ここでいいかな!」

『・・・・・・・・・・・・』

「ありゃ? お話しできなくなっちゃた。ならここでいいや! えっとこういう時はここを『キャンプ地とする!』・・・・・また知らないオジサンの声にセリフとられた! 邪魔しないでよ~!」

『ここをキャンプ地とする!』

「僕が言いうの! ここを『キャンプ地とする!!』むっきー! 僕もそれ言いたいのにー!!」


 そしてシオウは、騎士達の魔の手が迫っていることに気付くわけもなく、自由を謳歌していた。





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