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クリッカーの転職物語  作者: タヌキ汁
第三章 強者へと至るその代価
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街の中より外のほうが安全・・・されど出ていくには・・・


「街をでるぞー!」


 翌日シオウは宿の一室でそう決意表明を口にする。


『もうでていくの? お金稼がなくてもいいの?』

「いいの! というかこの街怖いからヤダ! みんな怒ったりすると普通に斬り合うんだもん! 物騒すぎて怖いよ!?」


 お姉ちゃんとお話できなくなってから、街で旅の準備を整えていたシオウ。


 初めは雑貨屋で携帯食を購入しようとしたのだが、店主と強盗の戦闘に巻き込まれ、強盗達に襲われた。

 そして強盗を撃退したのちにその物騒な雑貨屋で携帯食を買った。

 その後お肉屋さんで干し肉を買いに行ったら、人の首など軽く切り落とせそうな出刃包丁を振り回しているおっさんがお店の中にいた。

 話を聞けば蠅がウザかったから追い払うためだと言っていたが、追い払うのになぜそこまで大きな包丁を使うのか意味がわからないし、食材を切るための包丁を振り回さないで欲しいと思った。


 そして干し肉を買った後、ちょっと高いがドライフルーツと言う、甘いものを作っているお店に訪れることにした。

 一握りだけでも甘い物は欲しかったからね。

 だからそのお店に訪れたのだが、またそのお店でも鋭利な刃物を振り回していた。

 果物を切っているだけだと言っていたが、何故まな板の上ではなくわざわざ果物を宙に放り投げて切る理由がわからない・・というか果汁とか時々顔にかかってきて迷惑だった。

 まあ、果汁は甘くておいしかったから許すけどね。


 そんな感じで街を出歩けばほとんどの人が凶器を振り回していて、とても危なくて落ち着かないのだ。

 別に殺意を向けられている訳ではないが、ただのお店に入るだけでも身の危険を感じることが多々あったので、さっさとこんな街を出ていきたいのだ。


「これならお外の方が安全だよ! 確かに宿は快適だよ! 寝床だってモコモコで柔らかくて最高だけどお外の方が長生きできるよ!」


 快適だが危険な街の中にいるか、不自由だが安全な街の外にいるか、どっちがいいと聞かれれば僕は不自由でも安全な街の外がいいと答えるだろう。

 別段固い土の上で眠るのなんて慣れっこだ。

 一応外には猛獣の類は存在するが、そんなのよりも刃物を振り回すことに躊躇の無い人達に囲まれるよりも安全に決まっている。


 それに今はなんだかんだ手に入れたローブがあるから問題ない。

 あれ? そう考えると森で過ごす方が安全でいいかも・・・。


『けど森の中だと早々お腹いっぱい食べられ・・・・・ない事もないわね。今のシオウの身体能力なら全力で逃げる猪だろうが鳥だろうが走って捕まえられるだろうし』

「だよね! だから森で暮らそう! あれだ! 目指せスロウライフってやつだよ!」


 なんか前に頭の中の変なおじさんが森の中で暮らしながらスロウライフ最高だぜ! とか言ってたから僕もあんな感じの生活を送りたい!


『それを言うならスローライフだと思うけど・・・まぁ、シオウがそれを望むならそれでいいわ。それにあの騎士達の街から少しでも離れることは良い事だし』

「ホント! やったー!・・・・・・・・・・・・(これでまたお姉ちゃんの長い買い物に付き合わなくてすむよ)」


 安全な外に行きたいという理由以外にも、女性の長い買い物に付き合わされたくないという子供ならでは、いや男ならではの思惑が叶いシオウは安堵する。

 十分にも満たない買い物でも、目的の物をさっさと買って終わらせたい男にとっては、だらだらと物を選ぶ行動そのものが嫌なのだ。


『なにかいった?』

「う!? う、ううん。何にも言ってないよ! それより早速街出たいなぁ~。ここ怖いし~」

『?? そう? なら旅の準備が整っているなら行きましょう。けど出ていく前にちゃんと持ち物の確認をしなさいね。ちゃんと指差し確認して忘れ物が無いようにするのよ』

「いえっさ~!」

『それと部屋を出たら私との会話は口に出さない事。普段から心の中で会話するように心がけなさい。他人から見たら物凄く可笑しな子に見られちゃうんだから』

「い『え』っ『さ』ぁ~『!』」

『・・・・・・・・・まったく』


 一文字ずつ交互に口と心で声を出しながら、返事をしてきた。

 こういう可笑しなことだけは無駄に器用だなとお姉さんは呆れる声を聞きながら、約一日ぶりの会話を楽しみながらシオウは宿を出た。








『何でこんなことになっただろう』

『・・・ごめんなさい。多分これは私のせいだわ』


 街を出て行こうとしたシオウだが、街を出ていくために門を通りかかった瞬間、門の兵士に襲われた。

 今は二十人近い兵士達に囲まれながら、見知った顔の兵士が得意げに何か叫んでいる。

 というか、叫んでいる兵士には見覚えがあった。

 この街に入る時に絡まれた二人の兵士だ。


『別にお姉ちゃんのせいじゃないとおもうなぁ。だってこうなったのってあの兵士達が僕からお金を奪おうとしたのが悪いんじゃん。それを拒否しただけの事でしょ?』


 確かに兵士達のお金を取っちゃったのは悪いと思うけど、それも元々は兵士達が勝手に受け取ってくれと差し出してきたのだから、あまりこっちが悪くないと思う。

 誰もお金寄越せなんて脅してないし、命だってとる気はなかったのに勝手に命乞いしてきたんだもん。

 受け取らないとダメみたいな空気になっちゃったから仕方なくだもん、僕達は悪くないよ!・・・・・悪い事をしたとは思うけど、やっぱり逆恨みだよ!


『だけど私の失態なのは変わりないわ。本当にごめんなさい。脅しが足りなかったのね。教育に悪いから拷問なんてさせたくなかったけど次からやらせてみるべきかしら? こういう状況に陥らない為に』

『むぅ~! だからお姉ちゃんは何も悪くないの! 悪いのアイツ等だもん!・・・・・・・う? なんか怖いこと言ったような?』

「おい聞いてんのかクソガキ!」

『うるさいな! 今お姉ちゃんを励ましてるんだから邪魔しないでよっ!!』

『シオウ。声に出てない。声に出てない』

『・・・・・・う?』

「相変わらずだんまりかよ。脳みその回転がおせぇのか?」

「脳みそは回転しないのに何言ってるんだろう? あの人バカなのかな?」

「んだと!?」

『この場合の脳みその回転と言うのは、素早く知識を検索し引き出せる人という意味よ。ただ脳みその回転が と言うのではなく 頭の回転が と言うのが正しいわ。多分あの人ちょとおバカなのよ』

「おバカなのかぁ~、なら仕方ないなぁ~」

「このガキぶっ殺す!」

『それとまた普通に声に出して私と話しているからね。気を付けなさいよ』

「い『え』っ『さ』~『!』」

『・・・それ気に入ったの?』


 そんなバカな話をしていると、なんでかわからないが兵士が殺気立ち武器を向けてくる。

 お姉ちゃんとお話している間に何かあったのかな?


「一斉に串刺しにしちまえ! ガキの懐には結構な金が入ってるぞ!」


 そんな指示と共に槍を突き出して迫ってくる兵士達。

 刺さったら絶対痛い、そう思い避けようとしたのだが、


『魔力を纏っていない刃は今の貴方にはかすり傷一つ付かないわ。遠慮せず穂先を全て殴りなさい』

『え? でも・・』

『大丈夫だから信じて』

『・・・・・うん』


 お姉ちゃんに信じてと言われれば信じない訳にもいかず、言われるがままに迫りくる槍に向かって拳をつきだした。

 まあ流石に突き出される槍が痛そうなので突き出す拳が気持ち引っ込めているが、そこは仕方がない。

 誰だって大丈夫と言われても先の尖った鋭利な刃物に拳を突き出すなど怖いに決まっているのだから。


ベキベキベキベキッ!


「んな!? げはっ!?」

「おぉ!?」


 お姉ちゃんの言う通りシオウの拳は槍を打ち砕き、突撃してきた兵士の腹に拳がめり込む。

 こう言っては何だが槍が紙で作られたオモチャのようで、物凄く脆かったよ。


「ていていていていっ!」


 そして兵士達が持っている武器は怖くないとわかり、今も武器を構えて迫ってくる兵士達の槍をぶん殴り、破壊しながら兵士を殴り飛ばした。


『すげぇ~!』

『凄くなんかないわ。シオウ、貴方はステージ30をクリアしているのよ。そんな貴方が鉄くずの強度に劣る訳無いじゃない』

『そうなの?』

『ええ、貴方の身体は皮膚から細胞の一つ一つに至るまで鉄以上の強度を持っているのよ。そんな強靭な肉体に魔力も纏っていないただの刃物で傷をつけることなんてできる訳無いわ。筋肉だけでも鋼鉄のワイヤー並み何だから』

『へ~・・・凄いんだね』


 ワイヤーと言うのがよくわからないが、要するに凄い頑丈ということだけは理解した。

 そして今後は刃物に斬られても早々傷を負わないと言うのがわかっただけで十分だ。


「くっ、怯むな! 手に何か仕込んでいただけだ! 陣形を整えて手以外を狙え!」


 流石に素手で武器を真正面から破壊できるとは思えず、隠し武器で破壊したとでも考えたのか、兵士は仲間達に檄を飛ばす。


『丁度いいから今の貴方の性能を理解してもらうわ。シオウったら全然自分の変化に気が付かないんだもの』

『へんか?・・・・・・チラ』

『視線を下半身に向けない! そんな所よりももっと変化している所があるでしょうが!』

『う~~~?? おっぱいはおっきくなってないよ?』

『男なんだから大きくなるわけないでしょ!』

『けどママもパパもおっきいのがいいって・・』

『ホント貴方の両親って何を教えているのかしらね!』

「死ねぇ!」


 囲まれていると言うのに無駄話をするシオウ達。

 その隙にというか微動だにしない為、隙と呼べるのかわからないが、囲み終えた兵士達がタイミングを合わせて一斉に襲い掛かってきた。

 指示を出していた兵士も剣を手に襲い掛かってくる。


『ほら、来たわよ。集中しなさい』

『うん! 壊す!』

『壊しちゃダメ。武器を奪いなさい』

『うえ? そんなの無理だよ』

『大丈夫、シオウならできるわ』

『う~~ん』


 お姉ちゃんにできると言われては信じずにはいられない。

 なので自信はないが、シオウは全体に気を配りながら迫りくる攻撃を避けながら槍や剣を奪いにかかった。


『なんか・・・・・遅い?』


 普通に迫りくる攻撃を避けるように動いているだけなのだが、兵士達の動きが異様に遅く感じた。


『変なの・・・』


 皆のろのろの亀さんになってしまった。

 そんな変な世界でシオウは兵士達の武器に手を伸ばす。

 そして掴んだ瞬間力任せに引っ張った


『う?・・・軽い』


 武器を壊しちゃいけないとは言われていたが、それでも人が持っているのだ。

 奪い取る為にはそれなりの力が必要と思っていたのだが、想像以上に抵抗が少ないことに驚く。

 そして武器を引っ張られた兵士は後ろから思い切り蹴飛ばされたかのように、シオウの元へと吹っ飛んで来た。


『うわっ!?』


 それに驚き地面すれすれまでしゃがみ込みながら前へと滑り込む。


『危なかったぁ~』


 そう安堵しながらもシオウは未だにゆっくり動く兵士達の武器に視線を外すことはない。


『武器を奪わなきゃ』


 お姉さんが言った通りシオウは兵士達の武器に手を伸ばし続けた。

 壊すのではなく奪う。

 奪う方が大変だし面倒だけど、使えるモノをわざわざゴミにするよりいい。


 何より食べないのに無駄に痛めつけたりしないのは、とってもいいことだ。

 痛めつけるとかは嫌いだ。

 殺すよりもちょっとだけ嫌いだ。

 食べるため、生きるため、誰かを守るためならば仕方ない事だけどね。

 それ以外は極力誰かを殴って痛めつけたいとは思えない。


「なんだこれ!? ありえねぇだろ!」

「ふざけんなクソッ! こんな化け物だとは聞いてねぇぞ!?」

『武器を奪ったなら次は鎧を剥ぎ取ってみなさい。奪うのではなく剥ぎ取るのよ。壊さないように丁寧にやるのよ』

『む、難しいよぉ~』

『時間はかかってもいいから、やってみなさい。できるから』

『うぅぅ~・・・・・・うん』


 そしてお姉さんの無茶ぶりともいえる指示にシオウは従っていき、いつしか丸裸にされた兵士達が地面に転がることとなった。


『酷い絵面ね』

『うえ~、汚いちんちんばっかり。あれやだ~。もっと綺麗なちんちんがいい~』

『そう言うこと言わないの。というか見ない。目が腐るでしょ。それよりこういう危ない人には剣を持たせてはいけないわ。安全のために没収しておきましょう』

『え? それって泥棒じゃあ・・・』

『違うわよ。赤ちゃんが包丁とか刃物を持っていたら危なくて取り上げるでしょ? それと同じ事なのよ』

『そうなのかなぁ~?』

『そうなの。ほらほら、彼等を守るために彼等のために取りあげなさい。彼等が怪我しないようにね』

「『う~ん・・・・』い『え』っ『さ』~」

『ほんとその挨拶の仕方好きねぇ。まあいいけど』


 何かと理由を付けて無理やり納得させられたシオウは、言う通りに武器を全部集めて、兵士達の武器を旅のお供として持っていくのだった。





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