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クリッカーの転職物語  作者: タヌキ汁
第三章 強者へと至るその代価
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頭のネジが飛んでる奴ばかり


「つっかれた~」


 あれから、あの息継ぎしないで話し続ける無表情受付お姉さんは何度も腹を殴られながら説明してくれた。

 そしてカードの再発行もしてくれたのだが、もはやあのお姉さんの元に行くことはないだろう。

 だって隣の受付のお姉さんがお腹を殴らないと何度も机に突っ伏すんだもん。

 面倒とかそう言うのではなく普通に怖い。

 関わり合いになりたくない人って感じだ。


『さぁ、疲れている所悪いけど、これから買い物よ! 張り切っていきましょう!!』

『・・・・お姉ちゃん楽しそう』

『ふふ、だって買い物よ。買い物! シオウを着飾れるなんて楽しみじゃない!』


 そして街を歩いていると、なんか知らないがお姉ちゃんがはしゃいでいる。

 元々旅に必要な買い物をするつもりではあるが、何だろう・・・なんか不安だ。


『ほらほら! あっちの古着店に入りましょ! まずは服をどうにかしないと! いつまでもそんな汚れた服じゃダメなんだから!』

『えぇ~、服は良いよ~。これまだ着れるし』

『ダメダメッ! 着れる着れないじゃなくて身だしなみを綺麗にしておかないと! あんまり汚れたの着てると変な奴等に絡まれかねないんだから!!』

『う~~~』

『唸ってもだ~め! それに元々旅用のローブも必要だったでしょ! ほらほら! そう言うことだからあの古着屋に向かいなさい!』

『う~~~・・・・・・・・は~い』


 お姉ちゃんに言われるがまま、シオウは仕方なく指定された店へと入っていった。

 そしてそのお店で


『これでいい?』

『う~ん、ダメね。もうちょっとベーシックな色合いの服の方がシオウには合うわ』

『べーしっく?・・・・・・これは?』

『悪くないけど、ちょっと子供すぎるわ。それなら隣の服の方がいいわよ』

『あれは・・・ヤダな』

『確かに、なんで古着屋に貴族っぽい服があるのかしら? それも何あの服、アコーディオンみたいな変な服ねぇ・・・・けどああいう変なのも一度着せてみたいわね』

『うひぃ!? イヤだよ! 僕あれは着ないからね!』

『・・・一度くらい着て見ない?』

『やっ!』

『そっか残念・・・なら次はアレを着てみて』

『えぇ~、もういいでしょ~。つまんないよぉ~』

『そんなこと言わないで、あともうちょっと。あともうちょっとだけだから』

『ぶ~・・・・』


 お姉ちゃんとのお話の時間が無くなるまでシオウのファッションショーが続くのだった。






「つ、つかれた」


 服屋に入って10分とたってないが、それでも凄い量の服を選ばされて、着せられたシオウ。

 なんか帝国騎士達にサンドバックにされていた頃より疲れた気がする。

 ああ、ちなみに服は一着も買わなかった。

 というか買えなかったと言った方がいいだろう。

 だって服を買ったら旅に必要な非常食とか買えそうになかったんだもん。


 なんかお店を出ていくとき店主が物凄い目でこっちを睨みつけながら、長い槍を持っていたので、多分あの古着屋にはもう二度と行けないと思う。

 漁るだけ漁って何も買わずに出て行って御免なさいとしか言えないけど、買わないからって武器を手にするとか普通あり得ないよ。

 ただの古着屋の店主なのに怖かったぁ~。


「はぁ・・・・お姉ちゃんともお話しできなくなったし、これからどうしよう・・・」


 本当は一緒に旅に必要な物を選ぶはずだったのに、一人で考えなければいけないことに寂しさを覚える。

 とはいっても寂しいからと言って何もしない訳にもいかない。

 自分なりに旅に必要なものが何か考えて買わなくては。


「えっと、旅に必要な物は・・・ローブはぶかぶかだけど村(廃村)から貰ってきたし、水袋もあるし、ご飯は狩るけど携帯食は買って、お鍋はあるけど食器が無い。けどお鍋のまま食べるから関係ないかな。後は・・・・」


 声に出しながら一つ一つ必要な物とそうでない物を確認していく。

 とはいっても


「替えのパンツは別に無くてもいいし、最悪履かなくても問題ない。あっ、お薬!・・・は高いからいいや。靴もボロボロだけどまだ使えるし、壊れたらはだしでいいや・・・う~ん、なんか必要なのあんまりないなぁ。携帯食だけ買えばいいかも」


 やはり旅慣れていないシオウにとって何が必要なのか全くわからなかった。

 そもそも貧民区育ちである為、普通ならば買い替えるべき衣服や靴も必要と思わない。

 ボロボロの服でも寒さを凌げれば良し、靴など無くとも何とかなる。

 シオウの価値観はそんな感じである。


「さあさあ! 寄ってらっしゃい見てらっしゃい! 力自慢の者は是非とも買ってらっしゃい!」

「う?」


 街をぶらぶら歩いていると、そんな声が聞えて来た。

 その声につられるようにシオウは人だかりができている店に、ふらふら~と足を進めた。

 人だかりの中には金持ちそうな人もいて、下手に接触したら絡まれそうだったので輪に入ることはしなかったが、丁度人だかりから離れた所に空樽が放置されていたのでそれに登り、視線を向ける。


「ここにありますのは先日ダンジョンでドロップした重岩鋼鉄を使って高名な錬金術師様がお作りにならた鬼金棒! その固さはあの力自慢のオーガですら破壊することのできないほど! だがしかし驚くのはその固さではありません! 驚くべきはこの武器の重さなのです! 巨漢なオーガですらこれほど重い武器を愛用することなどできないでしょう! なに? そんなモノ武器になるのかって? そりゃあ普通の人ならただデカいだけの置物以下でしょうよ! ですがこの武器を扱えるならばその人は天下無双となること間違いなし! かの高名な騎士様も! かの特級探索者もご愛用している破壊力抜群の武器だよ! さあさあ! 我こそはと思う力自慢の方はいないかね! もしもこの武器を扱えるものがいるならたった銀貨七枚! たった銀貨七枚で売るよ!」


 そう声を張り上げる男の横には大人人以上に大きな金棒が立てかけられていた。

 というか地面に突き刺さって・・・いや、めり込んでいる。

 あの金棒の全体像はもっと大きいような気がする。


『あれこそ千年前の魔王との戦いで勇者が予備として持っていた剣! アレを引き抜きし者は現代の勇者の付き人としてとあがめられるであろぅ・・・・・って設定で書いて行こうと思うんですけど、どうですか編集長!』

『うん! クソだね!』

「・・・・・・・・・・う?」


 久しぶりに変な声が聞こえたかと思えば、無意味な話を聞かされた。

 何か意味があるのかと首を傾げつつ考えるも、やっぱり何か意味があるとは思えなかった。


「おい! そんなもん売ってんじゃねぇよ! 帰れアホ商人が!」


 そんな事を思っていると行き成り集まった見物人からヤジが飛んだ。


「な、何を言うのですか! これはとても強力な武器なのですよ! 破壊力と頑丈さは特級探索者が持っていても魔法武器に負けないほどです!」

「アホ商人がアホなこと抜かしてるぞ! 重岩鉄鉱は確かに頑丈だが重量がバカおもてぇ。持ち上げるだけで体力使うってのにそんなの持って探索なんてできる訳ねぇだろ! しかも斬撃ではなく打撃とかバカにしてんのか! 鈍器で殴り合って攻略できるほどダンジョンてのは甘くねぇんだよ!」


 ヤジを飛ばしているのはどうやら探索者の一人のようだ。

 ガタイがとてもよく大きな剣を背中に担いでいる。

 グレートソードとか、確かそんな名前の剣だった気がする。


「ですがとても頑丈です! 武器が破壊される恐れもないのです!」

「はっ! 頑丈さを求めるならそれこそアダマンタイトでも使った方がましだろ! あれは鉱石のわりに軽くて頑丈だ。しかも魔導伝導率が高い。属性魔法だって付加術師に頼めば燃える剣だって作れるだろうが!」

「アダマンタイトなど特級探索者でも得られるのは稀な鉱物です! そんな高価な物が滅多に入る訳がありません! ウチにだって欠片程度のアダマンタイトしか持っていませんよ」

「なに!? 貴様アダマンタイト持っているのか!?」


 商人がアダマンタイトを持っていると言う言葉に、今までヤジを飛ばしていた探索者の男が周りのやじ馬達を押しのけ商人の目の前に来る。


「おいお前! それ俺に売れ! 金貨だ! 金貨一枚出す!」

「え、えっ? こ、こんな欠片に金貨ですか?」

「おう! そうだ! 文句ねぇよな! ほら売れ! さっさと寄越せ!」

「えっ、あ、は、は、はは「ちょっと待て!」ひぃ!?」


 金貨一枚握らせてアダマンタイトの欠片を奪おうとした探索者だが、その行動は他の探索者によって止められる。


「なんだテメェ! 外野がしゃしゃり出てくんじゃねぇ!」

「うるせぇ。それは俺のだ! おい店主! 俺は金貨一枚と大銀貨一枚払うぞ。それを俺に寄越せ!」

「なにぃ!? ふざけんなこのヤロウ! おい店主! 俺は金貨一枚と大銀貨二枚だ!」

「なら俺は大銀貨三枚!」

「こっちは四枚だごらぁ!」

「五ッ!!」

「六ッ!!」


 そして二人の探索者は睨み合いながら大銀貨の枚数を増やしていき、このまま金貨の枚数まで増えていくのか!?・・・と思えばそうではなく、今度は銀貨や小銀貨。はたまた小銭の銅貨にまで持ち出してギリギリまで金貨二枚にならないようにしている。

 なんかとってもみみっちぃ。


「おい! なにそんなみみっちぃ勝負してんだよ! 値を上げるなら金貨にしろよ! 見てて面白くねぇぞ!」

「それでもチンコついてんのかよ! 男見せて見ろよ!」

「玉無し! 玉無し! 失せろ!」

「うるせぇ! 黙ってろバカ野郎が!」

「ぶっ殺すぞこのヤロウ!」


 そしてみみっちぃと思うのはシオウだけではなく、他のやじ馬達も同じだったのか、周りの大人達がヤジを飛ばし始めた。

 その声はどんどん大きくなり、その内アダマンタイトの欠片を買おうとしていた探索者とやじ馬が喧嘩するように怒鳴り合いだした。

 こんな状況になってはあの商人も商売あがったりだろう。

 気の毒にと思い商人に視線を向ければ、なぜかその商人は笑みを浮かべていた。


 楽しい面白い、そんな笑みではなく、なんか凄く気持ち悪い、そんな笑みだった。


「何で笑ってるんだろう?・・・・・・・・・ん?」


 首を傾げていると、人ごみの中で何か不自然な動きを見せる男達が数人いるのに気付いた。

 するすると人と間を縫うように歩む者達。

 時々裕福そうな人の近くに止まったかと思えばすぐに離れる。


「・・・・・・・スリだ」


 上から覗いていたおかげもあって、一瞬男達の手の動きが見えた。

 とはいってもどうやって取ったのかまでは見えなかった。

 ただ何も持っていなかった右手に行き成り財布らしきものが握られているのを見ただけだ。


「・・・・・・・・」


 まるで蛇の様に人だかりを進み、次々と盗んでいく男達。

 静かに、それでいて風が頬を撫でるように緩やかな動きで、やじ馬達の懐から財布を盗んでいった。

 手慣れているのは見ていてわかるが、なんか彼等だけの実力だけじゃない気がする。

 何だろうこの違和感。何かが引っかかる。


「・・・・・・あっ・・・そういうことか」


 先程の商人の笑みを思い出したシオウは、その違和感が何を指しているのか気付いた。

 要するに元々商人は物を売る気など無かったのだ。

 ただこの騒ぎを起こしたかっただけ。

 騒ぎを起こせばやじ馬の目も意識もその騒ぎに向けられるから、スリの成功度が上がるのだから。

 それに多分、今騒ぎを起こしている探索者・・・違う。探索者っぽい服装をした人達もグルだ。


「うへぇ、こわっ・・・にげよ」


 絶対碌な奴等じゃない。

 そう危機感を覚えたシオウは樽から降りるとその場から逃げ出す。

 ああいう手合いには関わらないに越したことない。

 君子危うきしに近寄らずだ。


「あんなのが普通にいるとか、この街もこわいなぁ。早く旅に必要な物買って宿に帰ろうっと」


 ぼやきながら、シオウは必要な物を買うために雑貨屋らしき店へと入っていった。

 そして、


「「「・・・・・・・・・」」」

「・・・・・・・おぉ?」


 入った店では強盗が押し入っている現場に居合わせることになった。

 店主と強盗が互いに剣を抜き戦っているのだ。

 ホントこの街怖い・・・というかこの国が怖い。

 みんな物騒なんだもん。

 そう思いつつ、現場を見られた強盗が襲ってきたので必殺黄金パンチ(金的)で強盗を沈めるとさっさと買い物をすませるのだった。




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