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クリッカーの転職物語  作者: タヌキ汁
第三章 強者へと至るその代価
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受付嬢・・・呼吸しろ!


 探索者ギルド


 シオウにとっては馴染み深い場所の一つである。

 だが、それはこの帝国ではなく生まれ育った港町での話だ。

 別にギルド職員と物凄く仲がいいわけではないが、それでも顔見知り程度の受付嬢もいれば、登録してからほぼ毎日顔を合わせていた買取所のおっさんもいた。

 なのでとても入りやすかった場所ではあった。


「・・・・・こ、こんちゃ~」


 だから見知らぬ土地の初めての探索ギルドであっても問題ない。

 なのになぜ身体がプルプルと震えてしまうのか・・・その理由はちょっと緊張しているだけだ。

 決してギルドカードを無くしたから怒られるかもと怯えているわけではないぞ。

 そんなことに怯えている訳じゃないから、受付にだって行けるもんね。


「??・・・・・はい こんにちは 本日は如何なさいました」


 シオウの変な挨拶に一瞬疑問符を浮かべる受付嬢だが、おずおずと言ったように声をかけてくるシオウの姿を見て、人見知りな子なのかもしれないと判断し、普通に対応する。


「えっと、ギルドのカード無くしちゃったから、新しいの欲しいんだ・・・けど」

「そうですか」


 気まずそうに答えるシオウの言葉を聞いても、特に受付嬢は表情を変えることなく無表情のままである。

 どこか友達のシェミを思い出されるその表情の動かなさに、ちょっと安堵する。


「でしたら再登録料銀貨五枚(50,000シルバー)とこちらの紙にお名前と紛失前のダンジョン探索済みの階層 そして探索者の階級を記入してください」

「い、いえっさ~」


 とくに怒られることもなさそうなので、渡された紙に言われるがままに記入していく。

 再登録の料金は、昨日兵士達から貰った? お金と廃村から拾った? お金があるので余裕で支払うことができた。

 ただ探索者の階級という項目でシオウの手が止まる。


「できましたか?」


 無表情のまま問いかけてくる受付嬢。

 どうやらシオウの手が止まったのを見て、記入を終えたと思ったようだ。


「あ、あの、階級って何? そう言うの聞いたことないよ・・・です」

「説明はされていないのですか?」

「た、たぶん?」


 シオウの答えに、いったいどこのギルドがこんなおざなりな対応をしたのだろうと、僅かに目を細める。

 初めて無表情が動いたと思いつつ、目を細めた理由は自分が何かやってしまったのではないかと、少し怖くなり、ビクンと肩が跳ねる。

 別に彼女はシオウに対して怒ってなどいないのだが。


 それと一応訂正をしておくが、シオウが登録したギルドでもちゃんと階級の説明はしているし、シオウも説明を受けている。

 ただ、ギルドカードを受け取る際、買取所のおっさんが探索者達と喧嘩をしたり、受付嬢達がおしゃべりをして仕事をさぼったり、サボって暴れるギルド職員達を副ギルド長達が説教したり、なぜかその説教に何もしていないシオウが巻き込まれたりと、色々あって覚えていないだけだ。

 階級の説明よりも、あまりに印象に残ることが起こっていたから記憶に残っていないだけである。


 そう考えると結局悪いのはあのギルドの職員達のような気もするが・・・・・まぁ、そこは気にしてはいけない。


「でしたら今から説明させて頂きます それと申し訳ございませんが紛失前の階級がわからない以上 階級は最下級探索者からやり直しになりますのでご了承ください」

「は、はい、ご了承ちました」


 淡々と話出す、無表情な受付嬢がちょっとだけ怖いと思いつつ、シオウは舌を噛みながら了承する。


「では初めにギルドの階級とは何か そしてその利点などをかいつまんで説明します 一般的に階級とは身分や地位などと言った意味をさしますが ギルドの階級はそれとは少々異なります 仮にギルドの階級が特級探索者になったとしても身分が貴族になることはありませんし ギルド外での地位が高くなるわけでもありません ギルドの外に出ればどの階級も全てが等しくただの探索者です ただしギルド内では別です 階級が上がれば上がるほどギルドの地位は高くなり ギルドへの発言権を得ることが可能になります 更に階級が高いほどギルドが契約している最高級の宿屋や武器屋などの紹介状が用意されますし 怪我や病気を患った際優先的に治療を受けられます もしもお金が払えず治療を受けられなかったり 探索に失敗し失った武器などを買う資金が無い場合もギルドが一時的に資金を提供致します 勿論利息は付きますが 暴利を貪るつもりなど無く優秀な探索者の再起を願っての投資ですので ひと月大体1%~10%ほどです 利息が固定でない理由は高階級かそうでないかの話になり・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・」


 行き成り饒舌になった受付のお姉さん。

 無表情のまま決められた説明内容をただ口にしていく。

 そんな印象だ。


『お姉ちゃん。このお姉ちゃんの話聞かなきゃダメ? とっても長いよぉ・・・』

『一応は聞いておきなさい。シオウにとって今は必要のない無駄な情報が多いけど、所々必要になりそうな情報も話しているし』

『うえ~、とっても長いよぉ~。それにこのお姉ちゃん息継ぎ無しでお話してるよ。ホントのお人形さんみたいでちょっと怖いよぉ』

『お人形さんなら怖くないでしょ? 頑張りなさい。というかシオウのお友達のシェミだってこの人と同じ感じで無表情じゃない』

『シェミちゃんはちゃんと息してたもん。このお姉ちゃんみたいに全く息をしないでお話なんてしないよ!』

『息してないってそれはあり得ないでしょ? 流石にそんなことすれば倒れ「ガンッ!!」・・・』

「うひぃ!?」


 頭の中でおしゃべりしていると、行き成り目の前のお姉さんが机に突っ伏した。


「またですか? 全く話している間もちゃんと呼吸しなさいよ。別に変な所で一呼吸入れたって誰も怒ったりしないってのに」


 そして隣にいた受付嬢が机に突っ伏したお姉さんの腹を殴った。

 その衝撃のおかげかゴブフッ!となんとも女性が発してはいけなさそうな呼吸をした後、突っ伏していたお姉さんが起き上がった。


「次に階級の種類についてご説明いたします 階級の種類は最下級・下級・中級・上級・特級の五つあり 中級からギルドの宿屋などの紹介状を受け取る恩恵が得られます 最下級と下級の方々にも宿などの案内はできますが ギルドでは下級以下の方々は試用期間と判断している為 紹介状をお渡しすることはできません そちらはご承知願いますようお願い致しまゴブフッ!」


 そしてまた長々と息継ぎ無しに話し出したお姉さんに、また隣の受付嬢が腹に拳を入れて無理やり呼吸させる。

 なんかやり慣れている・・・そう思うシオウである。


『・・・お話聞く人間違えたかしらね』

『僕もそう思う』




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