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クリッカーの転職物語  作者: タヌキ汁
第一章 能力がその子を変えるまで
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お腹いっぱい食べるために


 三兄弟から何とか逃げ切ったシオウは、他のゴミ捨て場で僅かな食料を見つけ腹を満たすとそのまま住み家へと帰っていった。

 そして今は住み家で丸くなりながら、三兄弟の長男であるパルマの言葉を思い出していた。


「8歳になったらステータスが出て、ステータスが出たらダンジョンに行ける。ステータスって・・コレ?」


 ステータスという言葉を発するたびに透明な板が現れたり消えたりする。

 なので、この変な板がステータスなのだと理解したシオウは、これからどうしようかと頭を悩ませる。


「ダンジョンで魔物倒す。魔石手に入れて、お金にして、ご飯と交換する・・・お腹いっぱいになる! むふ~!」


 お腹がいっぱいになるまでご飯を食べられる。

 いつも食べているカビパンや腐りかけの食材ではなく、腐ってない温かいご飯が食べられるかもしれない。

 そう考えると、シオウの瞳はランランと輝きだすが、その瞳はすぐに暗くなる。


「だけど魔物怖い・・・やだよ~」


 ダンジョンにはとっても怖い魔物がいるからね。そんな所に近づいたら食べられちゃうぞ! と、亡き両親から教えられたシオウはまだ見ぬ怖い魔物というのに怯えていた。

 どれくらい怖い魔物なのかわからないが、自分より身体が大きくて強い両親が怖い怖いと言っていたのだ。

 それはもう、シオウが想像するよりも100倍怖い魔物なのだろうと思っていた。


「けど・・けどなぁ・・・ごはん・・おいしいごはん・・・いっぱいのごはん・・・・・・・」


 怖い怖いと思いつつも、美味しいご飯が食べられるかもしれないという誘惑にシオウの心は揺らぐ。

 毎日お腹を減らさなくてよくなる。

 何も食べられない日が続いた時の、あの苦しい日々を送らなくてよくなる。

 そう考えると、怖くてもダンジョンで魔物を退治してご飯を食べたいと考えてしまうのは必然であった。


「怖い・・けど・・ごはん!・・怖い・・だけどごはん!・・こわい・・・おいしい・・ごはん・・・」


 頭を悩ませながら、何度も似たような言葉を繰り返す。

 何度も何度も繰り返しながら


 ツンツンツンツン


 その間も己の心を落ち着かせるために、考えをまとめるために、魔物と言う恐怖を紛らわせるためにクリッカー画面を開き、スライム達をつついていた。


 何度も突いているとまたスライムが一体増えて、三体になっており、シオウにとって癒しが増大しているのだが、今のシオウはそれに構っていられないほど頭を悩ませていた。

 そして、その日は丸一日と言っていいほど悩みながら目の前に浮かぶスライム達をつつき続けた。



『ステージクリア! ステージ4に上がります! くわえて貴方の全てが上昇します!』



『ステージクリア! ステージ5に上がります! くわえて貴方の全てが上昇します!』



 聞きなれた声が聞こえていたが、シオウがそれに反応することはなかった。




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