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クリッカーの転職物語  作者: タヌキ汁
第三章 強者へと至るその代価
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最弱スライム・・・だけど固い


 あれから数日間、シオウは必死になってクリッカーをやり続けた。

 食事と短い睡眠と本当に短い時間女の人と会話するだけで、それ以外は飽きもせずクリッカー三昧であった。

 そのおかげで



『パンパカパーーーン! ステージクリア! ステージ29に上がります! くわえて貴方の全てが上昇します! 更にゴールドスライムの身体が元通りになりました。これでルビースライムとゴールドスライムは共にスラコレに参加でき、最高の思い出を手にすることができるでしょう! 報酬のゴールドスライムの感謝とゴールドスライムのスキンを贈呈します』



 無事目標のステージ29までクリアすることができた。

 ステージのレベルが上がるごとにタップする回数が増えていき、もはや苦行の域に差し掛かっているのだが、それ以外の娯楽を知らないシオウにとって、これくらいどうってことなかった。

 それに、クリアすればご褒美と言わんばかりにムービーが流れる。

 そのムービーはシオウにとって楽しみの一つであった。


 この世界でテレビなどといった科学技術は無い。

 なのでまるで現実の様に動く絵は、それだけで娯楽にたりえるモノだったのだろう。


「はぁ~~、よかった~」


 ルビースライムとゴールドスライムは仲良くスラコレに参加し、楽しそうにしている映像を見て、シオウは安堵のため息を吐く。

 結局スラコレの優勝者は誰なのかと言う疑問は残るが、そこは皆素敵だったから皆一番でいいよね!・・・・ということに自己完結した。


 なんとも消化不良を起こしそうな結末だが、そこら辺は気にしてもしょうがない。

 多分このムービーを作った奴は、結末を用意するのが面倒だっただけなのだから。


「ん、ん~~~~~・・・疲れた~」


 ゴキンゴキンと凝り固まった肩をほぐすように肩を回すシオウ。

 まあ、身体はスライムなので本当に肩を回しているのではなく、プルプル震えたり上下運動をしているだけだが。


「ん~~~、ふひ~~~、ん~~~~、ふひ~~~~、ん~~~~~~~・・・・・・ん?」


 のびの~びとスライムフォルムを動かしていると、廃村となった村から獣の鳴き声が聞こえてきた。

 何かなと思い茂みからひっそりと顔を出す。


「おぉ! いっぱいいる」


 いつの間に訪れたのか。

 村には何匹もの猪や鹿が、我が物顔で村の中を歩いていた。

 ある獣は一心不乱に畑の地面を掘り返し野菜を食い荒らし、ある獣は家に小便を引っ掛けたりとやりたい放題である。


「・・・・・・・じゅるり・・・おいしそう~」


 そしてシオウからすれば、獣達はとても美味しそうな肉にしか見えていなかった。

 小さな小鹿であってもシオウの胃袋であれば、お腹いっぱいにすることができるだろうし、新鮮なお肉を食べるのは実に久しぶりである。

 帝国に連れて来られてからと言うもの、干し肉などしか食べさせてもらっていないし、この村にも新鮮なお肉は一欠けらもなかったからね。


「ご飯はまだあるけど、新鮮なお肉食べたいなぁ・・・・・・・よし! 捕まえよう!!」


 保存食はまだ残っているが、新鮮お肉で焼き肉がしたいシオウは、茂みから出ると動物達の元まで駆けて行った。


 無駄に強化された人の姿であるならば、追いかけて捕まえることも可能であり、逃げ回る馬の足にもついて行けるだけの速度と体力を持ち合わせていた。

 だが、それは人の姿であっての話。

 残念なことに今のシオウは魔物の中でも最弱と言われるスライムの姿。

 ぽよんぽよんと跳ねる動きはとても遅く、草食動物達にとって何の脅威にもならなかった。

 そして仮に近づけたとしても


「まてーーっ!! うえっ? ぎゃふんっ!?」


 返り討ちにあうのは当然と言えよう。


 鹿には蹴られ、猪には突進されては地面をコロコロと転がる羽目になった。

 力のないスライム。

 ゴブリンの弱い力でさえ抗えないほどにスライムの力は本当に弱く、最弱だった。


「あいてて・・・て?・・・・・・・・あれ? 痛く無いぞ??」


 ただし、打撃の耐性がとても強いのでかすり傷一つ付かなかった。

 ただ地面を転がるので目は回るが。


「おぉ!? 痛くない! 痛くないっ! すげぇっ!!」


 ぽよんぽよんと跳ねながらどこも痛くないことに感動するシオウ。

 若干真ん丸フォルムが凹んだが、それも時間がたつと徐々に元通りになってきているので問題ない。


「よーし! これならやれるぞーっ!」


 何を思ってやれると思ったのか知らんが、シオウはまた獣達に向かって跳ねだした。


「のわぁぁぁぁぁっ!?」


 そして案の定何もできぬまま返り討ちにあうのだった。

 スライムの姿になったせいか、若干知能が低下しているのではないかと思わないでもない。


『全く何をやっているの。そんな事をしている暇があるなら早くステージ30までクリアしちゃいなさい』

「あっ! お姉ちゃんだ! やっほーーっ!」

『はいはい、やっほー』


 そんなシオウの行動に一言言いたくなったのか、女の人が自発的に話しかけてきた。

 説明口調ではなく、素の自分を出す感じで。


 というか本来シオウの精神状態を少しでも緩和させるためのサポート要員であり、シオウが望まなければ出てこない仕様になっているはずなのだが・・・・まあ、そこは気にしてはいけない。

 もしかしたらシオウ自身、常時この女の人と話したいと望み続けているのかもしれないのだから・・。


「えへへ~、お姉ちゃん! おはよぉ! 起きるの遅いよ!」

『別に寝てたわけじゃないんだけど・・・・まあ、それはいいとして。あと一息でステージ30になれるのだから頑張りなさい。そうすればスライムの姿ではなく、人の姿に戻れるようになるわよ』

「あれ~? お姉ちゃんとお話しできる時間が長くなるんじゃなかった~?」

『それも間違ってないけど、一番の目的は貴方の首に付けられている奴隷の首輪の取り外しでしょ。アレを外さないと人型に戻っても爆発して死んじゃうんだから・・・って、一度言ったはずなんだけど?』

「う?・・・・・・・・あ、あぁ~、お、思い出した~。うん、僕、思い出した~」

『・・・・・なんとも嘘臭い』

「う、嘘じゃないよ? ちゃんと思い出したよ? なんか新しい・・・・力? ってのが手に入るんでしょ? ほら思い出したでしょっ!!」


 スライムの身体で胸を張るシオウだが、罪悪感があるのかいつもよりスライムの身体がプルプルと震えていた。


『・・・・・・・・・』

「・・・・・・・・・」

『・・・・・・・・・』

「・・・ごめんなさい。嘘つきました。忘れてました」


 そして結局は嘘をつくのに耐えかねて素直に頭を下げるのだった。


『はい、良く謝れました。いい子ね』

「・・・・・・えへへ」


 すぐに謝ったおかげか怒られることはなく褒められた。

 誰かに褒められるなど、とても久しぶりでニヨニヨとしてしまう。

 騎士達にもお前はとても頑丈でいいオモチャだ! と良く褒められてはいたが、あれは決して褒め言葉ではないのでノーカンだ。


『もっと話したいけどそろそろ時間だわ。頑張ってステージ30まで上げるのよ』

「あ・・・・うん・・・またね。お姉ちゃん」

『ええ、またね』


 幸せな時間や楽しい時間はすぐに終わりを迎え、また一人ぼっちの時間が訪れた。

 優しい女の人の声は聞こえなくなっただけ、それだけの事。

 今までと同じ・・・そうわかっているのに、シオウは無性に寂しさを覚えていた。


「・・・・・・はっ! ぶんぶんぶんぶん!」


 寂しさに囚われ、スライム姿で涙などで無いと言うのに、ちょっと泣きそうになるシオウ。

 最近泣き虫になってきているかもと反省しつつ、一度鼻息荒く胸を張ると女の人が言ったようにクリッカーの続きを


「よし! 肉ゲットだ! まてにくーーーっ!!」


 することはなく、必死に獣を追いかけるのだった。


『・・・・はぁ・・・まったく』


 どこまでも食欲に忠実なシオウを見て、女の人は静かに呟き、呆れたようにため息を吐いていたのだが、その声はシオウに届くことは無かった。




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