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クリッカーの転職物語  作者: タヌキ汁
第三章 強者へと至るその代価
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ゴールドスライム現る


 ルビースライムの夢を叶えるために、ルビースライムを応援するシオウ。

 寝る間も惜しんで必死にタップする姿は、まるでいつかの廃ゲーマーのようだ。

 そして、その努力の甲斐もあり



『パンパカパーーーン! ステージクリア! ステージ27に上がります! くわえて貴方の全てが上昇します! 更に貴方の応援のおかげでルビースライムの心に小さな勇気が湧きました。 これでルビースライムはスラコレに参加できるでしょう! 報酬のルビースライムの感謝とルビースライムのスキンを贈呈します』



 目標のステージ27に上がることができた。

 そしてまた勝手に始まるムービー。

 スライム村にいつの間にか作られた神秘的な宮殿に、照明・音響・審査員などの多種多様のスライム達が、今か今かとスラコレが始まるのを待ち望んでいた。

 予選とかの下りは無いのか? 結局ルビースライムは服を決められたのか? などのツッコをしてはいけない。


「わ~~! すっごくきれ~!!」


 スラコレ会場に訪れたルビースライムは目(あるか知らん)をキラキラとさせる。

 夢にまで見た世界に足を踏み入れられたことにルビースライムはとても興奮していた。

 まるで田舎から都会に始めて来たお上りさんの様に、あっちへふらふら、こっちへふらふらとしていた。


「きゃっ!?」

「あっ!」


 なので他のスライムとぶつかってしまう。


「痛いでスラね! どこに目(あるか知らん!)を付けて跳ねているのでスラ!」

「ご、ごめんなさい! ワザとじゃないから許して!」

「スラ? ワザとじゃないのでスラ? なら許してあげまスラ!」


 普通ならばここで喧嘩が起こりそうなものだが、そこは流石性格が温厚なスライム達。

 ちゃんと謝れば、すぐに許してくれる者達ばかりの優しい世界であった。


「ごめんね。痛くなかった?」

「ふふん! 全然痛くないでスラ! 何て言ったってわたくしは! 有名なゴールドスライムでスラよ!」

「わ~! 本当だ! とってもゴールドしてるねっ!」

「ふふふふんっ! そうでスラよ! 貴方わかっているではないでスラ!!」


 ぶつかったスライムは黄金の様に輝くスライム。ゴールドスライムであった。

 とはいえ今は光を浴びていない為、少々くすんでいるので一目でゴールドスライムだとわかる者は少ないだろう。


「あれ? もしかして貴方って前回のスラコレで優勝したゴールドスライムのオーロさんではないですか? 黄金都市ゴールド・ゴルドーの娘のオーロさんですのよねっ!」

「そうでスラ。貴方よくわかったスラね」


 ゴールドスライムのオーロは、今の輝いていない状態で、自分がゴールド・オーロだと気付かれたことにとても驚く。

 光りに照らされる輝きを見て、皆自分がスラコレで優勝したゴールドスライムのゴールド・オーロだと理解するのだが、今は光など浴びていない状態だ。

 そこらにいるゴールドスライムと何ら変わりないと言うのに、わたくしを、このわたくしをゴールド・オーロだと言い当てたのだ。

 このルビースライム・・・・・できる。

 警戒すべきか・・・。


「そりゃあわかりますよ! だって私ファンなんですから!」

「ふぁ、ふぁん?・・・・・ふふふ・・ファン」


 などと意味ありげに警戒していたオーロだが、キラキラした目を向けられてすぐにそんな考えは彼方へと飛んで行ってしまった。


「いつも月間スラコレ新聞読んでます! とってもカッコ可愛かったです! あっ、私オーロさんが書かれた『光の色はゴールド』を読ませてもらいました! あれとっても面白かったです! それと『わたくしのゴールドロードは終わらない』も『絶望の先に光がなくともゴールドがある』も何度も読みました! すっっっっんごくよかったです! 感動しました!!」

「ふふ・・ふふふふふ・・・・・ふふふふふふふふん! そう! 良かったでスラの! そうそうそう! そうでスラのぉ!!」


 オーロは機嫌よく、そしてどこか恥ずかしそうに身を捻じりながら喜びだす。

 光を浴びれば世界を照らすかの如く輝くゴールドスライムの中でも一番に光り輝けるゴールドスライムのオーロ。


 毎年の開催されるスラコレの優勝候補であり、誰もが敬うゴールドの輝きを身に纏っているが、輝きが美し過ぎるが故に太陽が出ている時間帯に、お外を出ると他のスライム達に迷惑が掛かるので、夜にしかお外を歩けない。

 なので基本夜に出歩いているのだが、月明かりだけでは、自慢のゴールドを輝かせることができず、くすんだ色になってしまう。

 そんなくすんだオーロを見て、誰もがあのスラコレの優勝候補で、多くの自伝本を出しているゴールドスライムのオーロだとは気付いてくれなかった。

 というか、自伝本の方はあまり売れていないので、読んで貰えているだけでもかなり嬉しかったりする。


「気に入りまスラわ! 貴方わたくしのお友達にしてあげまスラよ!」

「本当ですか! わ~い! お友達だ~!!」

「そう、お友達でスラ! あっ! そうでスラ! そうしたら一緒にお友達スラコレに出るのでスラ! 普通のスラコレよりとってもハイレベルなスラコレでスラよ!」

「お友達スラコレ!? 今日お友達スラコレもやるの!?」

「そうでスラ! 特別な時しか行われないお友達スラコレでスラけど、いじめっ子ゴブリンを追い返した事を記念して、特別に開催されることに決まったのでスラ!! だから一緒に出ましょうスラ!」

「うん! でるー! 一緒に出るーっ!!」

「ふふ、ふふふふふん! やったでスラ! 嬉しでスラッ!!」


 今までブラックスライム(夜行性のスライム)しか友達がいなかったオーロ。

 ブラックスライム達は明るい所を嫌い、目立つことを嫌う為、何度もお願いしてもお友達スラコレに参加してくれなかった。

 なのでいつもお友達スラコレに参加できず寂しい想いをしていたオーロだが、やっと自分にもお友達スラコレに参加して貰える友達ができたことにとても喜んだ。

 それはもう身を捻じり切ってしまうのではと思うほどの喜びようだ。


「ふふふ、ふふふっふふふふふ・・・・・あっ」


 そして喜びのあまり身体を捻じり過ぎたのか、身体が変な風に捻じれて固まってしまった。


「た、た、た、た、大変でスラ! 固まっちゃったスラっ!」

「えぇー!? だ、大丈夫?」

「痛みはないスラ。だって痛覚ないし・・・」


 確かにスライムの身体はゼリー状であり、コアが傷つかない限り痛みを感じることはないだろう。


「それはそうだね。けど何で固まっちゃったの?」

「時々メタル系のスライムはなぜか固まったりするのでスラ。よくわかっていないでスラが、コアが温まると一時的に身体がとっても柔らかくなって、その熱? を元に戻そうと身体が一時的に冷却されるみたいなことを偉い学者さんが言っていましたスラ。よくわかんないスラけど、そんなこと言ってたスラ」

「へ~、そうなんだ~。メタル系は大変だね?」

「ええ、そうでスラ。だから下手に感情を高ぶらせることができないでスラよ。まあ放っておけばそのうち治るスラが・・・・・・流石にスラコレが始まるまでに治るとは思わないでスラね」

「えぇっ!? それとっても大変だよ!?」

「そうでスラっ!! そうなのでスラ! だから助けて欲しいのでスラ! わたくしは貴方と一緒にお友達スラコレに出たいのでスラ!」

「うん! 私もオーロさんと一緒にお友達スラコレ出たいよ! けど助けるって言ってもどうすればいいの?」

「叩くスラッ!」

「うえ? 叩くの?」

「そうスラ! 叩いて柔らかくするスラ! 固いお肉を叩いて柔らかく方法スラッ!!」

「わかった! なら叩くね! 叩いて柔らかくするね!!」


 そう言うと、ルビースライムはペシペシと叩き出した。

 だがルビースライムの力は弱く、何度ペチペチ叩いても一向に柔らかくならない。


「あ~ん! 全然柔らかくならないよぉ~!」

「頑張ってくださいスラ! 頑張って・・・・あ~ん! このままじゃ一緒にスラコレ出れないよぉ~!」


 流石に今のままではどうすることもできないとスライム達は「あ~ん、あ~ん」と泣きだしてしまった。

 楽しみにしていたスラコレに参加できない。

 夢だったスラコレに参加できない。

 今まで見ている事しかできなかったお友達スラコレに参加できると言うのに、それを諦めるしかない。

 このままでは、このスライム達はいつまでも悲しみ泣いている事でしょう。










 このままでいいのですか?









 このまま放っておいていいのですか?







 否!






 そんな光景を見せられて貴方は黙っていられますか?

 ただ見ている事しかできないと諦めていませんか?


 違います。


 貴方だから助けることができるのです。

 貴方だけが彼女達を助けることができるのです。

 さあ、ゴールドスライム・オーロが言った言葉を思い出しなさい。

 オーロはなんと言いましたか?

 そう、叩けと言ったのです。

 さあ、力のないルビースライムの代わりに叩きなさい!

 オーロを叩いて柔らかくするのです!

 そして、彼女達に悲しみの涙ではなく、喜びの涙を流させてあげるのです!!



 クエスト発生

 ステージ29まで上げてゴールドスライムを助けよ


 報酬 ゴールドスライムの感謝 & ゴールドスライムのスキン



「だりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃぁぁぁぁぁっ!!」


 もはやお約束と言わんばかりに、シオウは画面に向かって連打する。

 先程まで眠そうにムービーを眺めていたと言うのに、全て見終わった瞬間、狂ったようにタップを始めだした。


 あまりに騙されすぎだろとか。

 この子のおつむは大丈夫なのだろうかとか思うだろうが、気にしてはいけない。


 純粋な子。


 ただそれだけなのだから。




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