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クリッカーの転職物語  作者: タヌキ汁
第三章 強者へと至るその代価
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優しい人と話したい


 ぽよぽよと廃村とかした村の中をシオウは跳ね回る。

 あれから女の人の声に従い、ちゃんとご飯を食べて赤く光っていた部分を青色に治したのだが、その後元の姿に戻ろうとしてもなぜか×マークが出て、元の姿に戻ることができなかった。

 何故戻れないのかわからないが、戻れないならば仕方がない。

 そう判断したシオウは、いつまでも家にいるのも暇なだけなので村を見て回ってことにしたのだ。


 ダンジョン以外で魔物は存在していないので、もしも誰かに見つかれば見世物小屋に売られることになるのだが、廃村と化しているので多分問題ないだろう。

 少々無警戒過ぎるが。


「青スラぱ~んち!」


 まあ村を見て回るのもすぐに飽きてしまい、いつも通りスライム画面を呼び出すと画面を的にして訓練を始めるのだった。


「たりゃあああ! ぺちぺちぺちぺちっ!!


 と言うよりもはや遊びである。

 本気で攻撃している訳ではなく、短い触手のようなモノで軽く叩くだけ。

 そして無駄にモーションが大きく


「ダーク・ブリンガー討ち取ったり!」


 仮想の敵と戦ってはポーズを決めていたりしていた。


 この歳の子供は、何かのヒーローに憧れるものであり、こういった遊びをするのは仕方がないのだろう。

 ただその相手が、以前頭の中に現れた中二病全開の暗黒竜をその身に封印せしダーク・ブリンガーであるのだが、そこは気にしてはいけない。

 暗黒とか、ダークとかついているが、別に悪い人ではないとか気にしてはいけない。


「これで暗黒の歴史は消し去ったのだ! 平和になったぞーーっ! うおぉぉぉぉーー!!」


 俺やってやったぜと言わんばかりに拳(触手)を天高く振り上げる。

 シオウの中で暗黒の歴史が消し去られたようだが、10年後には己の今の行動を振り返って身もだえする黒歴史ができたとか気にしてはいけない。


「たのしかった~! 次何しようかなぁ~」


 後々思い出して恥ずかしい思いをすると言うのに、それに気付かないシオウは丸1日遊び続けた。


 普段はここまで遊ぶことはないのだが、今まで騎士達のサンドバックとして使われていた為、精神的な負担がかなりかかっていたのだろう。

 強気の口調も、なんてことない態度も全て虚勢を張っていただけ。

 誰だって骨を折られる痛みも、謂れの無い暴力を振るわれることも怖いに決まっている。

 なので、やっとそれから逃れられたことで、痛い事をしてこない人達がいないことがわかり、浮かれてしまうのは仕方がない事だ。








 遊び疲れて適当な家で一夜を過ごしたシオウ。

 もはや奴隷の首輪の事など諸々忘れており、今日は何をしようかと思いながら食糧庫を漁る。


 うん、今日も新鮮お野菜が美味しい。けどお肉が食べたいぞ。


『お食事がすみましたらすぐにクリッカーのステージ上げをしてください。ステージ30に上がるまで貴方はそのままスライムスキンのままでいてもらいますからね』

「おぉ!? お姉ちゃん! やっと出て来た!!」


 何度か声を変えてみたのだが、あれから何の返事もないままであった。

 やっと声が聞けて嬉しいよ。


『私とお話する時間は限られています。ですのでよく聞いてください。ステージが30に上がれば新たな力を開放することができます。その力を使い物騒な奴隷の首輪を外さなければ元の姿に戻っても死んでしまいます。わかりましたね? 状況を理解しましたか? 理解しましたね? でしたらレッツクリック、レッツクリッカーです』

「・・・・?」

『・・・無垢な瞳で、コイツ何言ってんだ? みたいな風に見ないでください。バカにされるより傷つきます』

「う?・・・・うん、わかった」


 よくわからないが傷つくと言うので視線を向けないように気を付ける。

 とはいえスライムの姿の為、目など無く視線を閉じるとかできないんだけどね。


『まあそう言うことですので、ステージ30目指して頑張ってください。それにステージをあげていけば私とお話できる時間が増えますし、もっと適切なアドバイスをすることもできるようになります。ですから本当に頑張ってくださいね。今の貴方は見ていてとても危なっかしくて心配・・・・』

「・・・・??・・・・・・・・あれ? お姉ちゃん?・・・・・おーい!・・・・・?? 黙っちゃった」


 時間制限が来たのか強制的に女性の声が途切れた。

 その後何度呼びかけても反応がない為、本当に短い時間しか話せないのだと理解し、シオウは寂しそうに肩を落とす。


「・・・・・・むんっ!」


 だが先程クリッカーのステージをクリアしていけば、もっとお話しできると言われたので、シオウは一度気合を入れると、クリッカー画面を呼び出し魅入られたように画面をつつき始めるのだった。


 何が彼をそこまで追い立てるのか・・・・恐らくその理由は、見知らぬ土地と怖い大人達しかいない世界で、やっと自分を一番に考えてくれそうな、そんな人に出会えたと思ったからだろう。


 シオウはまだ8歳。

 身体は能力で大きく成長させられたが、まだまだ甘えたい盛りであり、人からの愛情を欲する年頃であった。

 それが全く知らない人であっても、声だけの存在であっても、あの優しそうな女性と少しでも多く話したいと願い、身体がかってに動きだしていた。



『ステージクリア! ステージ25に上がります! くわえて貴方の全てが上昇します!・・・・・イベントが発生しました!』




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