スキンの修復方法とお姉ちゃん
「・・・・・う・・・うぅ~ん」
日が落ちて真っ暗になった頃にシオウは目を覚ました。
「・・・ちっこ・・・」
別に尿意を催した訳ではないが、起きたら小便に行くべきだという条件反射で勝手に口から出ただけだ。
そしていつもの様にどこか適当な所ですませてしまおうと周りを伺って・・・・・・首を傾げる。
「暗い・・・けど・・・・・・・・ここどこ?」
暗闇の中ではあるが、シオウの目にはしっかり部屋の中に何があるのか見えていた。
流石に昼間のように色までは識別できないが、物の輪郭は完全に見分けることができていた。
これもクリッカーのおかげで色々強化されているおかげだろう。
まぁそれはいいとして、シオウは首を傾げながらやけに大きな椅子や机を見上げた。
「巨人が住んでるのかな? そうだったらすげぇなぁ~!・・・・お?」
ペシペシと椅子を叩きながら危機感なくそんな事を言っていると、不意に己の手が可笑しいことに気が付いた。
「おぉ!? ち、ちんちんが無くなってるぅっ!?」
己の身体を見下ろしてちんち・・・・ではなく人の身体でなくなっていることに気が付いたシオウは、驚きのあまり飛び跳ねる。
だが飛び跳ねてすぐに、己の身体がスライムの身体になっていることに気付き落ち着きを取り戻した。
「あ~びっくりした。大事なモノが無くなったのかと思ったよ・・・・・・・もぞもぞ」
落ち着きを取り戻してはいるが、なんとなく股間部分をまさぐり本当に無いのか確かめる。
スライムはアメーバやゾウリムシの様に細胞分裂する原生生物だ。
なので生殖器が無いのが当たり前なのだが、それを知らないシオウは青スライムが雄なのか雌なのか気になりまさぐり続けた。
「もぞもぞもぞもぞ・・・・・ないなぁ~。青スライムは女の子なのかなぁ?・・・・・もにゅもにゅもにゅもにゅ」
女の子ならおっぱいがあるはずだ。
そう考えて今度は自分の胸を調べるシオウ。
言っておくがこの子にいやらしい考えなど一切ない事だけ言っておく。
ただ子供であるが故気になっているだけだ。
好奇心が旺盛なのだ。
「もにゅもにゅもにゅもにゅ・・・・・柔らかいから多分青スライムは女の子だな! なぞは全て「じっちゃん」「真実」「の名に」「は」「いつ」「かけて!」「も」「ひとつ!」とけた!・・・・・ん?」
よくわからないが、聞きなれない二人の声が聞えて来た。
何が言いたいのかさっぱりだが、時々意味のわからないことも突拍子もなく言って来るので、気にしないこととする。
「変なの~・・・もにゅもにゅもにゅもにゅ・・・もぞもぞもぞもぞ」
そして青スライムは女の子と断定したにもかかわらず、未だに胸や股間を調べる事を止めなかった。
まあ、結論が出てもやっぱり違うかもと疑うことは大事なことだ。
気になるのも仕方がないし、興味があるのだから仕方がないが・・・・そろそろやめた方がいいと思う。
なぜなら
『いい加減! おやめなさい!!』
「うひゃいっ!?」
その行動を見ている者がいるのだから。
不意に女性の声に怒られ身体が飛びあがり、情けない声を出しながら周囲を伺う。
「だ、誰かいるの!!」
警戒しながら声をあげるが、その女性から返事は返ってこなかった。
ただかわりに、
『これより修復ステージの説明を始めます』
聞きなれた無機質な女性の声が頭の中に響き渡った。
声色は変わらないのに、なんだかとても冷たい感じがする。
『まずは能力を使いクリッカー画面を表示してください』
「ね、ねえさっきの人だよね? どこにいるの?」
『まずは能力を使いクリッカー画面を表示してください』
「あれ? 聞こえなかったのかな? おーい! さっきの人だよねっ!!」
『まずは能力を使いクリッカー画面を表示してください』
「ねぇ! ねぇってば!」
『まずは能力を使いクリッカー画面を表示してください』
「ぶぅ・・わかったよ」
何度問いかけても同じような事しか言わない為、シオウは不満そうに唇を尖らせながら言われとおり能力を使う。
『次にスキンの項目をタッチしてください』
「タッチ?・・・触ればいいのかなぁ?」
ぴかぴかと点滅を繰り返しているそれに触る。
すると二つのスキンが現れた。
一つは赤スライムの姿と、もう一つは全裸になったシオウの姿だった。
「おぉ? なんかちんちん以外赤く光ってる?」
己の身体が全裸状態で、あちこち赤く表示されていたり点滅していた。
なんで赤くなっているのかわからず首を傾げながら、
つんつんつんつん
やはり、一番気になる突起物をつつくシオウ。
いや、確かに気になるのはわかるが、いい加減それは止めろ。
しかもつついているのが、子供の手ではなくスライムの身体であり、しかも細く触手のようなものでつついているので、あまり褒められた絵面ではない。
それにそんな事ばかりしていると、また
『そんな所ばかりつついてないで! 赤く表示されている所をつつきなさい!』
「うひゃいっ!?」
感情豊かな女性が怒り出すことになる。
『赤い所をタップし続けることで徐々にスキンの修復が可能です。ですが修復タップを行うためには栄養が必要となります。高カロリーの食材を摂取し修復タップ回数を確保していきましょう』
「・・・・・・・・・ん?」
そしてまた無機質な女の人の声に変わった。
聞きなれているけどなんか冷たい感じの声だ。
同じ声なのに変なの~。
『・・・・要するにご飯をいっぱい食べて、赤くなっている部分が無くなるまでつついていけば、あんなに痛かった怪我も治ると言うことよ。わかった?』
「う?・・・・うん! わかった!」
なんで赤くなっている部分が無くなれば怪我が治るのかわからないが、今回は暖かそうな女の人の声だったのでシオウは素直に頷く。
よくわからなくても、なぜかこの声には素直に頷けた。
『良い子ね。ならまずはこの家の中に何か食べ物が無いか探してみなさい。幸いスライムの身体なら調理しなくても生のまま食べられるし、腐っていても微弱の毒素を含んだ食材であってもお腹を壊すことなく栄養に変換することが可能だから安心して食べていいわよ』
「うん! 全部食べる!」
『ええ、全部食べて赤いのを無くしなさい。そうすれば大丈夫だから・・・・・・・・・頑張りなさいね』
「いえっさ~!」
見知らぬ人の指示になど従うのは危険なのだが、とっても優しそうでなんだか心がポカポカ温かくなったので、彼女を疑うことはしなかった。
心をポカポカと温かくしてくれるんだから、絶対いい人に違いないもん。(ただの直感です)
「よーし! ご飯食べるぞーーっ!」
そう言うとシオウは家の中を跳ね回り、食材を探し出した。
だが不意に思う。ここって他人の家であり、この家にある物を勝手に食べたら泥棒さんになるのではないかと。
『この村にはもう生きている人はいないわ。帰ってくる人もいないから放置された食材を無駄にしない為に食べてあげなさい。彼等が必死に育てたり集めた食べ物を無駄にしないために、ゴミにしないために』
「うえ? ゴミになっちゃうの?」
『そうよ。ゴミになっちゃうわ』
「ふ~ん、ならゴミにさせないために僕が全部食べないとダメだね! よ~し! 全部食べてやるぞ~!!」
彼女の言葉を信じてシオウは遠慮することなく家の中を物色しては、見つけた食材を片っ端から食べていくのだった。




