表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
クリッカーの転職物語  作者: タヌキ汁
第三章 強者へと至るその代価
73/411

帝国では死練と書いて試練と読む


 どんよりと厚い雲に覆われた空の下、シオウが一人芋虫の様に地を這いながら、帝国へと帰っていった帝国騎士を必死に追った。

 だがどんなに必死に追いかけてもその動きはとても鈍く、未だに壊滅した村の中でもぞもぞと動いているだけだった。


 何故今一人でこんな場所に放置されているのかと言うと、帝国騎士達が逆らったシオウに対して罰を与えたからに過ぎない。

 弱者が強者に逆らった。

 しかも三人もの騎士に対して暴言を吐いたのだ。

 本来ならばその場で殺されても可笑しくないのだが、ジジタイが来るまで道具として使われて生き残ることができたことを称賛され、無意味に殺すのではなく死練(無謀な試練)を受けさせられることとなった。


 勿論シオウは反論したが聞き入れてもらえず、明日の今の時間までに、街で待つ儂等の元に戻って来なければ奴隷の首輪が爆発するように設定したとのことだ。

 そんな説明だけ言い残すと手足の止血だけ済ませたのちに置いていかれた。

 手も足も使えない状態で、本気で走らなければジジタイ達がいる帝国にたどり着くことなどできないと言うのに、そんな無理難題を言い残していってしまった。


「はぁはぁはぁ、ぐっ、うぐっ!?」


 少し休んで一歩前へと這いずる。

 ただそれだけの動きが、全身に痛みが走る。

 手足以外にも色々な部分が痛い。

 目に見えていないだけで身体の中のあちこちが傷ついている。

 道具としてぶん回され、使われていたのが原因だろう。


「いった・・なん・・・ッ!・・・・・」


 何でこんな目に合わなければいけないのかと言いそうになるが、弱音を口にしたくなかったのかシオウは口を噤む。


「・・・・負けるもんか・・・絶対・・生き残ってやる」


 痛みと見知らぬ土地で一人と言う恐怖に飲まれないように、己の意志と願いを口にしながらシオウは這う。

 無様であっても生き残りたい。

 あんなくだらない奴等に舐められたまま死んでやるもんかと必死に動くが、そんなシオウの意志とは裏腹に身体は徐々に動かなくなっていった。


ぴちゃん


 更には天気まで崩れ雨が降って来た。

 一時的に痛みで熱を帯びる体には冷たい雨はありがたいのだが、残念なことに一時的ではない以上最悪としか言いようがない。

 雨足は徐々に強まり小雨から大雨へと変わり、服が雨水を吸って重くなる。

 動きにくい以上に体の熱が奪われカタカタと体が震えだす。

 一旦どこかに雨宿りすべきと考え、近くに家に避難しようと這いだした。


「カチカチカチカチッ」


 何とか、屋根のある家に着いたシオウは歯を打ち鳴らしながら家の中に入る。

 騎士達が襲ったにしては、家の中は綺麗なままでよかったと思いながら、シオウはその場で一息つく。

 服を脱ぎたいがそれすらも今のシオウには難しい。


「さ、さむい」


 身体は熱いのに、なぜかとても寒い。

 風邪を引いた時のようだと思いつつ、どうにかしようとするが、先程の戦闘や受けた傷のせいでうまく身体が動かせなくなり眠気が襲ってきた。

 屋根がある場所に安心してしまい、一瞬気が緩んでしまい、身体が眠ることで体力を回復させようとしているようだ。 


(あ、マズイかも)


 なんとなくこのまま寝たらマズイ。

 そう、身体が大きくなる前にも似た感覚を思い出していた。

 あの時より切羽詰まった感じではないが、寝てしまったら多分もう二度と起きれなくなる。

 そんな感じがした。

 どうにかしなくちゃいけない、そう思いつつもどうしようもなくシオウの瞼は徐々に落ちていく。


『貴方様の生命に危機を感じました。至急クリッカーを使用しスキンの変更をしてください』

「・・・・・・・」


 だが、瞼が閉じきる前にどこか聞きなれた声が聞えて来た。


『至急クリッカーを使用しスキンの変更をしてください』

「・・・・・・・」

『至急クリッカーを使用しスキンの変更をしてください』

「・・・・・・・」

『スキンの変更をしなさい!』

「・・・・・う・・・くり・・・か~」


 しつこいほどに同じことを伝えて来ては、最後はかなり切羽詰まったような声を出すので、眠りそうになっていたシオウは気力を振り絞ってクリッカー画面を開く。


 いつもと変わらず楽し気にスライム達が跳ね回るスライム村。

 それを目にして気が緩んでしまい、また眠りそうになるが、画面の端っこのスキンと描かれている項目がピカピカ・・・というかビガビガッと自己主張激しくしているので、眠気を振り払いながらその点滅に触れた。

 手をあげるだけでも激痛が走るから動きたくないんだけど・・。


『文句を言わず早く押しなさい! 水スライムでも火スライムでもどちらでも構わないから早く押しなさい! 押したら休んでいいからっ!!』

「・・・・・・・・・」


 水とか火とかよくわからないが、シオウはお気に入りの青スライムのスキンに手を伸ばした。

 これだけやればもう眠れる。

 寝ちゃダメなのはわかっているけどもう無理と思い、指が青スライムに触れた瞬間シオウは眠りについた。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ