騎士に連れられて
翌日、馬に乗った騎士達に連れられてシオウはある場所に訪れた。
勿論シオウは馬に乗れないし、自己中で横暴な騎士達が一緒に馬に乗せて貰える訳もなく、奴隷の首輪に鎖を付けられながら走らされた。
奴隷の首輪を付けさせられている時点で逃げることなどできないのだが、この騎士達はどうしてもシオウを逃がしたくなくて、鎖でつないでいるようだ。
一応否定しておくが、皆シオウが大好きだから傍にいて欲しいわけではない。
ただ死ぬなら、己らの手で殺したいと思っているだけだ。
一応逃走防止策のために、奴隷の首輪などといった物騒な物を付けてはいるが、そんななんの面白みもない道具で死んでほしいとは誰も思っていなかった。
ホント、この帝国の人間は頭の可笑しい奴等ばかりだ。
「なんとも、根性が無さそうな村だな。」
のどかなで小さな田舎の村を、小高い丘から騎士達は見下ろす。
所々に農夫が広がり、畑を耕す光景はどこか安らぎを与えてくれた。
「クソド田舎じゃねぇか。本当にここに鼠がいるのか?」
「そりゃあこういうド田舎にドブネズミが大量発生するもんだろ」
「田舎より都会の方がドブネズミは繁殖するぞ。こういう農村地帯ではハツカネズミとかそう言う種の方が繁殖するだろ」
「「「鼠はどれも同じじゃねぇのか?」」」
「同じな訳ねぇだろ。何で知らねぇんだ」
「別にクソ雑魚い鼠なんざ細剣の的にしかならねぇし?」
「アイツ等拳圧で弾けちまうから興味もわかねぇし?」
「そもそも汚くて触りたくねぇし?」
「「それな!」」
「あ~、そこは確かに共感できるぜ」
「・・・・なんでこんな所まで来てアホな漫才やってんの? イテテテテテテッ!?」
頭の悪そうなアホな漫才を始めたので純粋に質問してみれば、なぜか全員にぶん殴られた。
解せぬ。
少しはこののどかな風景を見て、野蛮な行動を抑えて欲しいものだ。
「さて、ふざけるのもこれくらいにしてさっさと終わらせるか。いつも通り早い者勝ちでいいか?」
「それでいいんじゃねぇの? あと終わったら戦利品の奪い合いゲームしようぜ」
「異議なしだ。時間はジジタイが来るまでだな」
「俺は今回パス。こんなド田舎じゃ得る物も少ねぇから実験してるぜ」
「なら俺等三人とガキ一人で勝負か。丁度審判役も欲しかったし丁度いいな」
いったい何を話しているのかわからないまま、何かのゲームに参加することになった。
絶対碌でもないゲームなので参加したくないのだが・・・・・拒否権はないのだろう。
「ねぇ、今から何をするんだ?」
「見てればわかる。おっしゃいくぞ!」
その声と共に、騎士達は馬を走らせ、丘から駆け下りる。
シオウも鎖に繋がれている為、仕方なく騎士達と共に走り、村へと駆けて行った。
そして
「・・・・・え?」
村へと侵入すると細剣使いの騎士が畑仕事をしていた老人の首を刎ね飛ばした。
コロリとまるで石ころの様に転がる老人の首。
一瞬何が起こったのか、何をしたのか理解できず唖然とする。
「き、騎士だーーーーッ!!」
まるで賊だと言わんばかりの恐怖交じりの声に思考停止状態だったその声を聞いて意識を取り戻す。
「何やってんだっ!」
「おとと、あぶねぇなこのガキ」
今までは逆らっても無駄だと思い、従順に騎士達の後を追いかけていたが、流石に人殺しの現場を見せられて止めない訳もいかず、シオウは己の首に巻き付いている鎖を引っ張り、騎士を止める。
「やめろよ! そう言うのやっちゃダメなんだぞ! 可哀想だろ!!」
「これが俺等の仕事だっての。わかったらお前も目についた雑魚共を始末していけ。ああ、若い女と子供はできるだけ殺すなよ。繁殖と労働に使える」
そう言いながら引きずろうとするが、騎士の言葉を受け入れることなどできる訳もなく、反抗する。
「・・・・・・備品の分際が逆らうな。物は物らしく俺達に使われていろ」
「僕は物じゃない! それにお前達に使われる謂れもない!」
「まだわかってないのか? お前は俺達の備品でサンドバック騎士と言う仲間であり、ただの物だ。強者である俺達がそう判断しているのだから、弱者のお前は何も言わずに従え」
「うるせぇ! 何が従うもんか!!」
「・・・・・・チッ、タングラ! このバカを使え!」
言っても聞かないシオウに細剣使いのザンザは嫌気がさしたのか、シオウの鎖をタングラと呼んだ騎士に放り投げた。
中年男の頭を潰していたタングラと呼ばれる騎士は、人を殴っていたぶるのが大好きな騎士だ。
よくシオウも殴られており、その振りかぶる拳をまともに受ければ骨が折れる程の破壊力を持つ。
それほどまでに力の強い騎士がシオウの鎖を受け取った。
「なんだ? ペットの躾けでもすればいいのか?」
「ああ、こっちが優しくしてやればつけ上がってやがる。ここらで帝国のルールをその身に刻ませてやってくれ。俺じゃあやり過ぎちまうからな」
「まっ、確かにそうだな。なら遠慮なく、ぶっ殺してやるか」
言うが早いか、タングラはシオウの鎖を力いっぱい引っ張り出した。
勿論引っ張られないように抵抗するシオウだが、ザンザが抵抗するシオウの手足に細剣を突き刺し抗えないようにする。
怪我を負った手足で、抗えなくなったシオウはグルグルと振り回され、逃げ惑う人達に叩きつけられた
「ッ!?」
ゴギッという嫌な音が聞こえた。
身を守る為にとっさに頭を守っていたのが悪かったのか、それともクリッカーの力で身体が普通の人よりも頑丈になっているのが悪いのかわからないが、誰かに当たった瞬間その人から骨が折れる音が聞こえた。
「ぎゃぁぁぁぁぁぁっ!?」
耳を塞ぎたくなるような悲鳴。
悲鳴ならばこの国に来る前に嫌でも聞いて来た。
シェミを助けるために悪い盗賊達を何人も倒したし、殺しもした。
けれどなんだかこれは違う。
あの時とは全然違う。
己の意志で殺すのではなく、己がただの武器として殺してしまったことに、言いようのない不快感が襲い掛かる。
意図せず人を傷付け殺すのはとても嫌な気持ちだ。
「流石は俺等のサンドバック騎士。普通の人間ならすぐに骨が折れて泣き叫ぶが、お前は面白いくらい頑丈だな。的だけが壊れちまう。よし、俺が飽きるまでぶっ壊れんなよ!」
ふざけたことを言うなと言いたいが、その言葉を発する前にシオウはオモチャの様に振り回された。
抗いたくとも抗えず、一度地面に足が付いても傷を負った足では踏ん張りがきかず、なすすべなく、タングラの武器として使われていった。




