体験奴隷兵
「万本打ち込みはじめっ!」
ここは帝国。ガラダニア帝国の奴隷が収容されている施設。
その施設には大体百人区切りで奴隷が収容され、それぞれ仕事をさせられていた。
・家畜奴隷
・愛玩奴隷
・肉壁奴隷
・自爆奴隷
・戦闘奴隷兵
奴隷は主にこの五つにわけられている。
家畜奴隷は満足な食事や休息を与えられぬまま掃除や武器のメンテナンスなどの雑務をこなし、愛玩奴隷は言わずとも兵士達の下の世話をする奴隷である。
肉壁奴隷は戦争時の盾として使われ、自爆奴隷もまた戦争時に敵の城塞や施設に突撃させ、その身に刻まれた爆裂魔法でもって破壊する仕事である。
要するに自爆テロを強要される道具と言う訳だ。
そして最後の戦闘奴隷兵は、その名の通り一兵卒として参加させられるが、基本的には帰ってくるのが困難な任務をやらされるため、肉壁奴隷や突撃奴隷と同じように戦争に出てもまず生き残ることができない。
そう言ったとても過酷な環境であり、そんな場所で
「うりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃぁぁぁぁぁぁぁ!」
シオウは元気に木剣・・・・・ではなく丸太を振るっていた。
勿論奴隷の証としてゴツイ首輪を嵌めながら。
先日アナーキー部隊の騎士として、いやサンドバックとして扱われていたが、本日から戦闘奴隷兵に格下げとなってしまった。
「うりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃ、うおりゃああああぁっ!」
気合の入った連撃に耐えかねて打ち込んでいた的がバラバラに砕かれる。
「ふんすっ!」
それを見たシオウは得意げに胸を張った。
「58番! 休むな! 的がないなら大岩にでも打ち込めっ!」
「誰が58番だ! 僕の名前はシオウだぞ!」
「うるせぇ! 言い訳せずさっさと打ち込みを続けろ!」
「いたっ!? いたいだろっ!? う~~~~!」
だがすぐに教官の激と鞭が飛んで来たため、シオウは逃げるように施設の端っこに置かれている岩に丸太を叩きつけ始めた。
「よう、元気そうだなガキ」
「う?・・・・・お前は」
一人寂しく端っこで丸太を振り回していると、見知った男が現れた。
そいつは帝国騎士。
この国の、こんな場所に連れて来て、昨日まで一切の躊躇も遠慮なく人に剣を突き立てて来た頭の可笑しな細剣使いの帝国騎士だ。
改めて顔を見てみると凄く目が細い。
糸目といっても可笑しくないほどだ。
「何しに来たんだよっ! あっちいけよっ! ザンザ!」
「ハハハッ! 相変わらずの減らず口、雑魚の癖にいい根性してるぜ」
ザンザと呼ばれた帝国騎士は細い糸目を更に細めて楽し気に笑う。
「尻尾撒いて逃げ出す雑魚を、ぶっ殺さないで見逃すのは、かなり珍しい事なんだぜ? それなのに反省の色が見れねぇのは流石に面白くねぇなぁ~」
「知るかバーカ!」
昨日シオウは闇夜に紛れて逃げ出そうとした。
強くなって騎士達をぶん殴ると言う目標は変わっていないが、よくよく考えてみれば別にこんな理不尽な場所で強くなる必要などないと結論に至ったのだ。
飯や薬が支給されても毎日ボロボロに痛めつけられたくはない。
そう思うのは至極当然である。
なので、さっさと街を出て適当なダンジョンで金を稼ぎながら、自分のペースで強くなろうと思い出て行こうとしたら、運悪く帝国騎士に見つかり連れ戻されたと言う訳だ。
そのペナルティとして、今日から騎士ではなく戦闘奴隷兵として降格され、こんな状況になっていると言う訳だ。
首にも奴隷が嵌めるようなゴツイ首輪をはめられており、あるキーワードを発すると爆発するおまけ付きだ。
クソッタレでダサい最悪の首輪としかいえないね。
「いっとくけどな! 僕は逃げ出した訳じゃないんだからなっ! 適当なダンジョンに潜って強くなるつもりだったんだ! お前等をぶっ飛ばすために強くなるつもりだったんだからなっ!」
「はははっ! いっちょ前に吠えやがるぜ。まあ嘘は言ってねぇようだしそれは信じてやるよ。あれだけ痛めつけられても心が折れないで、マジで俺等に勝つつもりだったしな。いやいやホント、お前マジで面白れぇよ。やっぱ雑魚のまま殺さなくてよかったぜ」
「何が殺さなくてだ! ばーかばーか! 今はちょっとお前達の方が強いだけだばーか! すぐに追い越してぶん殴ってやるんだからな! ばーか! ばーか!!」
ガルルルルと唸らんばかりに敵意剥き出しのシオウ。
騎士の目からはそれは虚勢の張っている様にしか見えない。
「くくくっ、ホントいい根性してるぜ。それよか暇だろ? こっちきて相手しろよ。可愛がってやるぜ?」
「誰が行くか! あっちいけばーか! 気持悪いぞばーか!」
「なんだよつれねぇなぁ・・・・だったら、こっちから行ってやるよ!」
「くっ!?」
「おらおら! ちゃんと避けろ! じゃねぇと死んじまうぞ!」
「うぎっ!? こ、このぉぉぉぉっ!!」
奴隷に落とされても変わらずサンドバックの仕事を継続してくる帝国騎士のザンザ。
彼の細剣が目にも止まらぬ速さで迫りくる。
もう何度も見せられたおかげで、初めの頃より避けられるようにはなってきたが、流石に全てを避けきれる訳もなく、すぐに全身を斬られ、血がにじみだした。
それでもここ最近クリッカーのステージも上がっているおかげで防御力や自己回復力が上がり、見た目ほど酷い傷は負ってはいなかった。
ただそれでも痛い事には変わりない。
「おぉ~おぉ~、またお前固くなったな。俺達の様に使いこなせている訳じゃねぇってのに、スゲェな。お前の身体マジで可笑しいぜ」
「うるさい! いった!? この! いい加減にやめろよっ!」
「だから言ってるだろ? ここは帝国だ。願いを叶えたいなら力づくで叶えろっ! ここは強者が全てを仕切る国! 力の帝国だっ!」
「知るかばかー! イギギッギギッ!? こんちくしょうーーーっ!」
そして文句を言いながらシオウは迫りくる斬撃を避けて、反らして、受け流しながら逃げ回る。
勿論逃げてばかりではなく反撃もするが、持っている武器がただの丸太であるため、反撃しても輪切りにされてしまうだけであった。
「僕にも鉄の武器寄越せ! うわっ!? また切れた!!」
「まともな武器が欲しけりゃ自分で用意するんだな。ああ、そう言えば奴隷兵の体験は今日でしまいだからな。明日からまた騎士に復帰しろ。そして、サンドバック以外の仕事も特別に手伝わせてやる。しっかり働いて強くなれよ。そして殺させろ」
「誰がお前等の仕事なんて手伝うもんか! 危なっ!? もぉぉぉぉっ!! やめろよこのっ!!」
「ほら、動きを止めるな。楽しようとするな。死ぬ気で生きねぇならさっさと死ね。くたばれガキが。はははははっ!」
「がぐぅっ!? だぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁッ!!」
そしてシオウと帝国騎士は相も変わらず手合わせと言う殺し合いをしながらも、会話をしていくのだった。
若干だが、シオウもこの状況に慣れつつあるので、徐々に帝国色に染められていることが、不安を覚えるところではある。




