一応の騎士
「こんのーーっ!!」
ジジタイに吹き飛ばされ、見知らぬ騎士のハンマーで殴りつぶされた翌日からシオウは騎士となった。
どうやら、試験と言うのはジジタイの攻撃を食らって生きていられれば合格と言った内容のようだ。
加えて無防備にも他の騎士の一撃を食らっても死なずに生き残れたので満点以上の結果で認められた・・・・らしい。
誰も頼んでないし、こんな奴等の仲間になんかなりたくないシオウだが、拒否権は無い。
拒否したいのならば自分達より強くなれとのことだ。
なのでいつか、騎士達を全員叩き伏せてやると思うシオウである。
まあそれはそれとして、騎士になったシオウが今何をしているのかと言うと
「いっちょ前に反撃とはいい根性してるぜ」
「まぁ、無駄だけどな」
「ほらほら、頑張れ頑張れ、死にたくねぇならちゃんと防げよ」
「お前のは防ぐではなく、お前以上に力を受け流せねぇと対処できねぇだろ」
騎士達と模擬戦をしている。
ただし、シオウにとっては模擬戦であっても、騎士達にとっては全力で壊しにかかっても壊れない良質なサンドバックで遊んでいるとしか思われていない。
現にシオウの攻撃は騎士達に届かず、騎士達の攻撃は面白いくらいシオウにあたっていた。
シオウも攻撃を受けないように避けたり、受け流したりするのだが、速度も技術も何もかもレベルが違う為、結局は無防備に受けるくらいしかできなかった。
「さて、そろそろ形だけの巡回でもしてくっか。あんまりサボるとまた面白くもない仕事を押し付けられちまうからな」
そんな模擬戦は騎士達が飽きるか、仕事に出かけるかしない限り休みなく続くこととなった。
なので終わる頃にはシオウの身体はイヤでもボロボロになっていた。
「うぅ・・・・・・次は絶対・・・ぶっ飛ばして、コラッ!って叱ってやるぅして・・・うぅぅぅ」
帝国に連れていかれて数日とたっていないが、若干騎士達に感化されたシオウの口調は荒くなっている。
まあ、口調が荒くなっていると言っても全く怖くないが。
「うぅ、いたいよぉ~」
ボロボロの身体を引きずって訪れたのは訓練場の傍にある備品倉庫だった。
この備品倉庫は今は使われていないので誰かが来ることはない。
一応シオウは帝国騎士達と同じ隊に入り、帝国騎士と名乗ることを許されてはいるが、扱いは帝国騎士達専用のサンドバックでしかない。
故に騎士達の備品。
故に備品倉庫がシオウに与えられた部屋であった。
そしてサンドバックとなったシオウの仕事は殴られ、蹴られ、切り裂かれることが仕事である。
禄でもない仕事であるが、騎士達と戦うだけで好きなだけ食い物と高価な薬が手に入るので、そこまで悪くないとも・・・ちょっとだけ思っていた。
生傷は絶えないし少しでも油断すれば死んでしまうが、貧民区で暮らしていた時よりも飢え死にも凍え死の恐怖もない。
勿論攫われる前の探索者生活の方がよかったが、それでも最悪ではないだけマシだと考えていた。
「うっぐ・・ひっぐ」
備品倉庫の奥に置かれている大きな木箱を開け、その中に入るシオウ。
別のそんな中に入らなくても横になれる場所はいくらでもあるのだが、元来狭い場所で身を隠すようにしながら生きて来たシオウにとって、開けた場所は好きにはなれないのだった。
「う~~、う~~~~」
大きな木箱の中には騎士達に渡された大量の薬と非常食が入っており、シオウは木箱の中で傷の治療を済ませると膝を抱えるようにしながら横になる。
「くりっか~」
傷ついた身体は高価な薬のおかげか、それともクリッカーで自己治癒力が強化されたおかげか、痛みはすぐに引き始める。
それでもやはり毎日殴られ、斬られることは、肉体よりも心に負担がかかり、シオウは心の安定を求めてスライム達を呼び出していた。
「ひっぐ、ひっぐ・・・」
「・・・・・・・・・」
「・・・ぐ・・・・うぐ・・・・」
「・・・・・・・・・」
「・・・・・ずずずっ・・・へへ・・・えへへ、今日も僕は頑張ったんだぞ」
「・・・・・・・・・」
「僕な。僕な。今日も反撃してやったんだ」
「・・・・・・・・・」
「倒せなかったし、あてられなかったけど、次やるときは絶対ぶっ飛ばしてやるんだ」
「・・・・・・・・・」
「そしてそして、もっとも~~と強くなって、アイツ等皆いっぱいぶっ飛ばしやるんだ」
「・・・・・・・・・」
「そしたらこんな怖い所出て行ってやるんだ。もっとな、もっといい所に行くんだ」
「・・・・・・・・・・」
「そうだよ。またダンジョンで暮らそう。ダンジョンでご飯拾って、お金になる魔石拾って過ごすんだ。絶対その方が楽しいもん」
「・・・・・・・・・」
シオウの問いかけに答えず、相変わらずスライム達は楽しそうに飛び跳ねるだけだが、それでもシオウは嬉しそうにスライム達に語り掛けながら、ツンツンと触れ続ける。
触れても相変わらず冷たくて固いだけだが、それでもシオウは満足そうだ。
「だからその為にも強くならないとな。うん、頑張んないとダメだよな・・・・・」
「・・・・・・・・・」
「・・・・よし! お薬塗ったしご飯食べて修行しよう! 早く強くならないとなっ!」
「・・・・・・・・・」
「頑張るぞ! おーーっ!!」
「・・・・・・・・・」
一人でそんな事を言い出すと、木箱の蓋を持ち上げ外に出る。
少々独り言が多くなってきているが、それも心の安定を図る手段なのだろう。
そしてこれ以上何もできずにサンドバックにされないようにシオウは日課となりつつあるスライム画面を的に武器を振るいだした・・・・・・・お前、今さっきまでそのスライム画面に慰められていただろ、それを殴りかかるとか頭大丈夫かと思ってはいけない。
『ステージクリア! ステージ21に上がります! くわえて貴方の全てが上昇します!・・・・・二つの機能が追加されています。一つがこの私に感情が追加され、日に一分間感情豊かで癒し系の私と対話することが可能になりました。対話を望んでみては如何でしょうか? どうぞ、貴方の精神安定剤としてご活用してください。
もう一つが、現実世界で破損したスキンの修復が可能になりました。詳細をお聞きになりたい場合は是非ともスキンを変更してみてください』
修行中そんな声が聞こえてきたのだが、強くなるために集中していたシオウには届くことはなかった。
『・・・・・・・ぷく~!』
どこかの誰かが頬を膨らます音すらも気付くことはなかった。




