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クリッカーの転職物語  作者: タヌキ汁
第三章 強者へと至るその代価
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イオバンザ連合国の港にて


 船に揺られて4日、帝国の船はある小さな港へと停泊していた。

 ここはこの船が目的としている帝国領内の港ではなく、帝国の隣にある国、イオバンザ連合国の小さな港町であった。


「補給に二時間はかかるとよ」

「マジかよ。結構かかるじゃねぇかクソッタレめ」


 シェミを逃がすために樽や木箱の中身を捨て、イカダモドキを作ったシオウ。

 その樽の中身は航海に必要な飲み水や食料が入っていた。

 別にシオウが捨てた食料が船の大半を占める訳ではなく、餓死する程でもなかったが、それでも飲み水を失ったのはいたい。

 だたでさえ攫って来た子供の数が予想よりも多く、水の消費が激しいというのに。

 なので致し方なく他国の小さな港町で水を補給することにしたのだ。


「おい! 酒がねぇとはどういうことだ! 舐めてんのかクソ獣!」

「ッチ、気味の悪い女しかいやしねぇ。ここに人族はいねぇのかよっ!」


 まあ、飲み水の他にも酒や女を買いに来たようだが、生憎とここは多種族が寄り集まって作られたイオバンザ連合国。

 人族至上主義を一応掲げながらも、実力重視のガラダニア帝国とは違い、この連合国には人族は限りなく少ない。


「テメェ等に売るモノなんざ元々ねぇんだよ。さっさと失せろ。汚らしい人族が」

「モノが小さい禿げザルなんてこっちから願い下げよ。さっさとお国に帰ってママとでもやってな」


 そしてこの共和国の人達も人族が大嫌いだった。

 特に人族至上主義を掲げている帝国は人族以外の種族を奴隷や家畜としか見ておらず、今現在も多くの多種族を奴隷として飼っている為、二国の間はかなり冷え切っていた。

 ここで殺し合いにならないのは、今の所国同士で休戦協定が結ばれており、意味もなく殺し合い、そして奪い合うことを良しとしていないからだ。

 そうでなければ今頃、血の雨が降っていた事だろう。

 現に、帝国の船が港に乗り入れてからというモノ、街の者達全員が武器を手にして警戒している。

 女でさえ包丁や野良仕事で使う農具を構えているほどだ。


「あの毛むくじゃら殺してぇなぁ。剥いだらいい便所マットになりそうだ」


「流石にやめとけよ。ウチ帝王が決めたクソ休戦だ。それを破っちまうと、流石に帝王もブチギレちまうからな」


「ワザとキレさせて、帝王ぶっ殺して、王座を奪うってのも楽しそうじゃねぇか?」


「武力も知力も財力も権力も全てにおいて劣っているお前がどうやってあのクソ帝王に勝てんだよ。夢見過ぎじゃねぇか?」


「ハッ! それはテメェも同じだろうが・・・つか、あのクソ帝王はどうやったら殺せるんだ。あの変な力を持っているせいでクソツエェったらありゃしねぇぜ」

「対処法なんざ知らねぇよ。だがその内帝王は俺が必ず殺す。殺して俺が王になってやんぜ」


 そんな物騒な事を言いながら、帝国の騎士達はキャンキャン騒ぐ村人や船員達を眺めた。

 騎士達の国。ガラダニア帝国は人族至上で実力主義の国家。

 身分など関係なく、力があればのし上がれる国。


 純粋な力以外にも金でも権力でも知力でもなんでもいい。

 人族で優秀な者であれば、生まれなど関係なくのし上がれる国なのだ。

 それが皇帝の座であろうとも、強くて優秀な者が全てを手に入れることができる国であった。


 それ故帝国に住む者達の意欲は高い。

 いや、意欲が高いと言うより、危機感を持って暮らしている為どの国よりも成長が早かった。

 強い男で無ければ食い物も住む場所も底辺となり、好きな女も手に入れることもできずに奪われる。

 女も何かしらの力を持っていなければ、性奴隷と変わらぬ生活を強いられることになる。

 故に帝国の人民は強く、


「そしたらテメェを殺して俺が王になってやるよ」


「そうか・・・なら王になる前に殺しておくか」


「雑魚が誰を殺すって? 寝ぼけてんじゃねぇよ」


 そして短命であった。


 優秀な者達が多く、世界を制覇する程の武力を持っている帝国だが、協調性の欠片もない奴等の集まりであるが故に、世界の均衡は未だに保っていられるのだろう。

 もしも彼等が一つにまとまり、世界征服、もしくは世界統一を目指したならば、世界はたちまち彼等のものになっているだろう。

 それだけ帝国に住む人々の戦闘力は高いのだ。



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