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クリッカーの転職物語  作者: タヌキ汁
第二章 強くなり・・・そして
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脳筋的な出口の作り方


「まぁまぁ~! まぁまぁ~!!」

「わたしのおにんぎょう! おにんぎょうがないのーー!」

「いたい・・・・いたいよぉ、うぇぇぇぇぇん!」


 これからどうやってここから逃げようかとわたわたしていると、シェミが他の子達も助けないとと言って来たので、まずは全員の檻を力任せにひん曲げて救出することにした。

 そして全員を無事に檻から出したのだが、それからが大変だった。


 暴力を振るわれた子は痛みで泣き、その泣き声につられるように他の子達も泣きだす。

 先程まで静かだったのはあらかじめ大人達から黙る様に怒鳴られていたからだろう。

 だが、今は怖い大人がおらず、檻から出られたことで少しばかり気が緩んでしまったのだ。

 なので仕方のない。

 泣くのは仕方が無い。

 ここにいるのは子供達は皆八歳未満の子供なのだ。

 まだ親が恋しい年齢なのだから仕方ない。


「な、泣くなよー! 泣いたって何にもならないんだぞー!!・・・・・・うぅ・・・」


 そして、身体はデカくなっても心は八歳児のシオウである。

 知らない子供達ばかりだとしても、皆が泣けばつられて泣きたくなるものだ。


「うぅ、うぅううぅぅぅ~~~!! ふぐ・・・泣かない! 僕強いから泣かない! むんっ!!」


 頬を叩きながら泣きそうになるのを必死に我慢し、己を鼓舞するように胸を張る。

 それでもやっぱり周りが泣いていると泣きそうになるので、気を紛らわすために倉庫内を歩き回る。

 勿論シェミと手を繋いでだ。

 こんな状況では流石に一人ぼっちでいるなどできない。

 一人ぼっちだと我慢するのは心細くて泣きそうになるから、シェミの手は絶対離したくないシオウであった。


「ズズズッ・・・・他に出口ってあるのかな? どう思うシェミちゃん」

「・・・・・・・わかんない」

「えへへ~、だね~、どうしよう~」


 他愛無い会話ではあるが、ちゃんと返ってくる。

 それだけのことが嬉しくて、泣きそうになっていたシオウは機嫌良さそうに笑みを浮かべた。


「あ~あ、やっぱりあの扉頑張って殴って壊すしかないのかなぁ? けどあの扉とっても固くて僕の武器の方が先に壊れちゃいそうだよ」


 こん棒を手に取り意味もなくブンブンと振り回すシオウ。

 勿論シェミや他の子達にはぶつからないように振り回しているので問題ないが、そんな事をしていると、


 ベキッ!


「あっ・・・・・ぶつかっちゃった」


 壁を殴って穴を開けてしまうのだった。

 もしもここが宿屋などの家の壁であれば、物凄く怒られていただろうが、運がいいことにこの船は悪い盗賊達が占拠した船である。

 なので怒られることはないし、怒るような大人もいない為、シオウは気にも止めず倉庫の中を歩き回ろうとした。

 だが、シェミが立ち止まって歩こうとしない為、動けなくなってしまった。


「どうしたのシェミちゃん?」

「・・・扉壊せないのに壁は壊せるの?」

「・・・・・・・・壊せるみたい?」


 小さな穴ができあがっている壁を指さしながら、問いかけてくるシェミ。

 壁を壊したことを責められているみたいでちょっとシオウは気まずそうに俯く。

 別に怒られている訳ではないとわかってはいるんだけど・・・。


「なら、壁壊せば外に出れない?」

「う?・・・・・・・・・・おぉ! シェミちゃん頭いい!」


 言われてみればその通りだ。

 確かに扉を壊せなければ違う場所の脆そうな部分を壊せばいいだけ。

 何故そんな簡単な事に気が付かなかったのか。


「よーし! それじゃあすぐに壊すね! でりゃぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」


 シェミの手を離すとシオウは先程誤って殴ってしまった壁に向かって、こんどは全力で殴りかかる。

 最近スライムを助けるために何度もクリッカー画面を殴っているので、もはや動かない的を殴り続ける行為は大得意になっていた。


 ベキベキベキッとどんどん船の壁が壊されていく。

 まるで小さな獣が壁を食い破ろうとしているかのように。

 そして、数十秒ほど殴り続けていると、子供一人十分通れるだけの穴が開いた。

 開いた穴から太陽の光がもれ、更に海がキラキラしていて眩しい。


「おー! 海だー!」


 そりゃあ船の中にいるのだから海の上であるのは当然である。

 だがまあ、シオウにとって海は近くて遠い存在だったので少しテンションが上がるのも仕方がないのかもしれない。


 街にいた頃は税を納めていない貧民が海に近づくことを許されていなかったからな。

 海で魚を取る権利も貝や海藻を取る権利さえもなかった。

 別に法で禁止されている訳ではないが、許されない行為であり、そこを管理する者達に見つかれば良くて袋叩き似合うため、こんなに海が近くに見れたのは生まれて初めてだった。


「よーしシェミちゃん! ここから逃げよっ! 街もまだ見えてるし泳げば帰れるよ!」


 泳げば帰れると言うが、それでも結構離れている。

 確かに大人ならば泳ぎきれるだろうが、流石に八歳児未満の子供達が泳ぎきれるほどの距離ではない。

 それに


「私・・・・泳げない」

「うぇ? そうなの?」


 流石に港町に住んでいるからと言って誰もが泳げるわけでもなかった。


「えっと・・・・どうしよう」

「・・・・・・・・」


 そして、また二人は頭を悩ませるのだった。




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