脳筋的な壊し方
「う~~~~~・・・・・・・・・しょうがないか、まずはシェミちゃん探そう」
うじうじと扉の前で数秒いじけていたシオウだがすぐに立ち直る。
そして先程ぶん投げた盗賊達が落としていったナイフを腰に差し、念の為盗賊達がこちら側に入って来られないように扉を木箱や樽で塞いだ。
これで盗賊達に背後から襲れることはないだろう。
「シェミちゃ~ん、いる~?」
シオウは名前を呼びながら檻を一つ一つ覗いていく。
本当に動物を入れるための檻ばかりで、中にはとっても小さな檻に押し込められている子もいた。
可哀想だと思いつつも、一番の目的はシェミを見つける事なので後回しにする。
「シェミちゃん? シェミちゃ~ん。シェミ・・・あっ、みっけた!」
そして何個目かの檻の中を除くと目的のシェミをみつけることができた。
厳密に言えば隠れるように蹲っているので顔が見えない為、それっぽいとしか言えないが、シオウには顔が見えなくともなんとなくシェミであろうことはわかった。
「シェミちゃん! 助けにきたよ!」
「ひっく、ひっく・・・・だ・・・・だれ」
しゃっくりをあげながら、身体をビクつかせているシェミに声を掛けると、予想外の答えが返ってきた。
「うぇっ!?・・・僕シオウだけど・・・・僕のこと忘れちゃったの?」
そうだったら物凄くショックだと肩を落とすシオウ。
シェミにとってシオウがどういう存在なのかわからないが、シオウにとってはシェミは初めてできた大切な友達だ。
シオウにとってはそれだけで特別な存在なのだ。
なのにその存在から知らない人扱いされればショックを受けるのも当然と言えよう。
「・・シオウ君は、もっと小さいもん。貴方みたいに大きくない」
「う? 大きい?・・・・・・あ」
今更ながらにクリッカーで身体が急成長してからシェミと最後に会ってない事を思い出した。
確かに自分でも驚くほど大きくなったのだから、シェミが気付かないのも無理はない。
「あのね! あのね! 僕おっきくなったんだよ! なんか知らないけどこんなにおっきくなったの!」
説明にもならない説明で必死に事情を伝えようとするが、当然シェミがそんな説明で理解できるわけもない。
「起きたらおっきくなってたんだ! ちんちんもおっきくなってて凄いんだよ! むん!」
下ネタを口にしているのに、なぜか胸を張り誇らしげなシオウ。
その価値観だけは女の子には絶対伝わらないと思うし、
「??」
子供のシェミには更に何を言っているのかわからなかった。
「あれ?・・・・・えっと、えっと・・・・・・う~、なんて言えばいいのかわかんないから後で話す! それより早く逃げよう! 今壊すから待ってて!」
そう言うと、檻を開けるために鍵をぶっ叩きした。
だが残念なことに木で作られたこん棒では、鉄で作られた錠を壊すことはできなかった。
「むぅ、壊れな~い! むぅ~!・・・・・・・・むぅ?」
むぅ、むぅ、唸りながら困っていると、ご都合主義宜しくシオウの脳内に前世で見た映像が流れだした。
流れた映像の内容は胸に七つの傷が刻まれたイカツイ男が牢の鉄格子をへし曲げる。
そんな感じのモノだった。
アタァッ! とか ホワタァッ! とか言ってそうな人とだけ言っておく。
それを見たシオウは、素直にその男が凄いと思いながら、そうやって開ければいいのかと納得した。
そして浮かんだ映像の様に鉄格子を掴み、檻を破ろうとした。
「ふんぬぬぬぬぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!」
檻の壊し方と検索し、そんな映像を見せられたとしても普通は参考にしないのだが、シオウにとっては困ったときに良く助けてくれる人達と認識しているので信じないと言う選択肢は存在しなかった。
そして信じる者は救われると言った感じに
ベキャッ
普通ではありえないことが現実に起るのだった。
クリッカーの能力のおかげで身体能力が強化されているシオウ。
もしかしたらゴリラ並みの腕力になっているのかもしれないな。
「やったー! 開いたーー!」
「・・・・・・・・おぉ」
流石にそれで開くとは思ってもみなかったシェミは目を丸くする。
あまりの驚きでぽろぽろと流していた涙が引っ込んだようだ。
「えへへ、凄いでしょ! ほらシェミちゃん!」
「え・・・・・う・・・・」
手を差し出すシオウ。
やはり自分の知っている姿のシオウではない為シェミは躊躇する。
「ここ危ないからお家まで送っていってあげるね!」
「・・・う、うん」
そう、躊躇していたはずなのだが、以前貧民区で迷子になったときと同じようなことを言われ、あの時と同じように笑うシオウを見て、思わず差し出された手をとっていた。
「よ~し、それじゃあ・・・・・・・・・・・・・・どうしよう?」
シェミを檻から引っ張り出して、さあ逃げようと思っていたシオウだが、残念なことに入り口が鍵を閉められて出ていけないことを思い出し途方に暮れる。
「・・・・あっ・・・・・・・・・・まずい」
そして悩んでいるうちに船がゆっくりと動き出すのを感じたシオウは、早く脱出しなければと焦り出すのだった。




