同族はコボルト以下
さっきまで聞こえていたあの子の声に向かって、燃える港町をシオウは駆けた。
途中燃える家から助けを求める人や、泣き叫ぶ人、逃げまどう人を見かけたが、シオウはそれを全て無視して目的の人物がいるであろう場所へと全力で向かった
港町に入ってから悲鳴が酷くなり目的の人物の声は聞こえなくなった。
目的の人が乗せられた馬車も見失っている。
だが、奪われた物や人々が港に集められているのはしている為、シオウは真っ直ぐ港へと向かった。
道が塞がっているならば木を登るように家の壁を登り、屋根を伝いひたすら真っ直ぐ港へ向かう。
「見つけたっ! あっ!」
屋根の上から縄で縛られた子供達が殴られたり、蹴られたりしながら無理やり船に乗せらている。
そして暴力を振るわれている中に、シオウが助けたいと思う人がそこにいた。
「あーーーーっ! やめろぉぉぉぉっ! シェミちゃんをイジメるなぁぁぁぁっ!!」
シオウが助けたいと思っている人物は探索者になる前に何度もお世話になり、何度も親切にしてくれたユクランとミラの娘、シェミだった。
貧民であったシオウにも仲良くしてくれるシェミ。
シオウにとって、生まれて初めてできた友達である為、自分の様に誰かにイジメられて泣いて欲しくないと思う人の一人であった。
「むがぁぁぁぁっ!! やめろばかぁぁぁぁぁっ!!」
だが、そんな泣いて欲しくない人が今大人に蹴り飛ばされて無理やり船に押し込められた。
大人達が笑いながら何かを言っている。
大人達が何を話しているのか知らないが、あんまりおしゃべりが得意じゃないシェミがそんな大人達にイジメられ大声で泣いているのだ。
笑ったりするのも苦手で、滅多に表情を崩さないシェミが顔をくしゃくしゃにしながらわんわん泣いている。
そんな姿を見せられたシオウは顔を真っ赤にして怒り出すと、こん棒を手に突撃した。
「出航するぞ! さっさと積み込めっ! 兵士共が戻ってきちまうぞ!」
「だぁぁぁぁぁぁっ!!」
「あ? なんっ!?」
屋根から飛び降り、今まで駆けていた速度よりもさらに早く駆けだしたシオウは、その勢いのままバリケードの様に置かれていた荷馬車を飛び越え、真っ直ぐ船へと駆けた。
当然船を向かうのに邪魔な男達もいたが、そんな奴等は全員こん棒で殴り倒し、ただ真っ直ぐ船へと向かう。
目的は悪い奴等を全員倒すこと・・・ではない。
シェミを助けることだ。
だからシオウは必要最低限の敵をぶん殴りながら、船へと乗り込んだ。
「なんだ? ガキが檻から逃げ出したのか?」
「依頼は八歳児未満のガキだろ。こんなデカいガキ回収するわけねぇよ」
「ならぶっ殺せ! 出航の邪魔だっ!」
「うるさーーいっ! シェミちゃんを返せー!!」
そう言うと、数人の男達がシオウを取り囲みだすも、囲まれる前にシオウはシェミがいるであろう船の中に向かって駆け出した。
「じゃまーーーっ!!」
扉の前にいる男達ごと扉に体当たりしながら扉を破る。
シオウの身体はクリッカーで強化されており、普通の人間が体当たりするよりも早くて強く、そして肉体自体石並みに固くなっていた。
なので、体当たりされた男達は人間大の大きな岩が豪速球で投げつけられたような錯覚を覚えながら、内臓やアバラを破壊されてしまい、全員意識を失うか命を散らしていった。
「シュミちゃんどこーーーーっ! 返事してーーーっ!!」
「ぐあっ!?」
ただの体当たりがそれほどの威力になっているなど知る由もないシオウは、こん棒を振り回しながら船内を走り回る。
狭い船内でこん棒を振り回せば嫌でも壁や天井を殴ってしまい手を痛めそうなものだが、いつも無駄に固いクリッカーの画面をぶっ叩いているシオウにとって、ただの木の板や人を殴っても痛めることはなかった。
更に言えば、加減を知らずに思い切り振り回しているのでシオウが通った後は廃船のようにボロボロになり、悪い意味でのビフォーアフターができあがっていた。
「シュミちゃんっ! いない! シェミちゃんっ! いないっ! シェミちゃんっ!!「「ぶへっ!?」」 いなーーーい!!」
目についた扉を全て蹴破りながら中を確認する。
たまに扉の前に大人・・・と言うより盗賊?がいるのだが、そいつ等も遠慮なく蹴り飛ばしていった。
余りの勢いに壁に盗賊達が突き刺さっていることもあるのだが、シオウはそれを気にすることは無かった。
「シェミちゃーーん! シェミちゃーーーーーん! 返事してぇぇぇぇぇっ!!」
なかなか見つけられないことに苛立ちを覚えながらも、シオウは必死にシェミを探す。
そして、
「――――――――――!!」
「シェ・・・・・・お?」
下へと繋がる階段から、子供の声が聞こえたことに気付いた。
階段を除き込んだ先には頑丈そうな鉄の扉が開いているのが見える。
目的のシェミの声は聞こえなかったが、この階段の下から子供達の声が聞こえるのは確かで、連れ去られるとき何人かの子供達と一緒だったことを思い出したシオウは、間違いなくシェミは子供達と一緒にいるだろうと思い落ちるように階段を駆け降りた。
「わわっ! なんだここ!」
階段を駆け下りた先に何十人もの子供達が動物を入れるための鳥かごの様な檻に入れられていた。
「なんだよまだガキがいるじゃねぇか。檻がたらねぇぞ」
「無理やり押し込んどきゃいいだろ。別に数日座らせなくとも死にゃしねぇよ」
「それもそうだヅァ!?」
「このガビィッ!?」
刃物をちらつかせながら油断しまくりの男達を前にして、シオウは一気に距離を詰めると一番殴りやすそうな箇所を思い切り殴りつけた。
コボルトの身長は大体70~80cm。
そして平均男性の股下もそれくらいであり、男の股には撃ちやすそうなボールが二つもあった・・・とだけ言っておこう。
「よしっ!」
声にならない悲鳴をあげながら、男達は口から泡を吐きながら地に沈む。
今の一撃で彼等が彼女等になったのだが、そんなことはどうでもいいことだ。
「シェミちゃん! どこっ! 助けに来たよ!!」
そう大声をあげるが、檻に閉じ込められている子供達の助けを呼ぶ声や泣き声が酷すぎてシェミの声を拾うことができなかった。
それに
「も~うるさいよ~! あっ!? マズイ! 悪い奴等が来ちゃうっ!」
そんな事をしている間に、悪い盗賊達がシオウを追い、階段から駆け下りてくる音や怒鳴り声が聞こえて来た。
シオウは慌てて扉を閉めようと・・・・・・するのではなく、今さっき倒した男?の足を掴むと
「うりゃっ!」
扉の方へと思い切りぶん投げた。
そして丁度良く降りきった男にあたり、そのまま縺れるようにして後ろに倒れる。
「もう一個!」
男?を物の様に数えながら、また扉の方へと投げつける。
そのおかげで一瞬盗賊達の動きが止まり、その間に扉に駆け寄ると力いっぱい扉を閉めた。
鍵をかけたかったが、この扉は外からしか鍵をかけられない作りのようなので、シオウは必死に扉を押さえ続ける。
「クソガキ! ここを開けやがれっ!」
「絶対ヤダッ! 誰が開けるもんかっ! あっち行けばーかっ!」
そう文句を言いながらシオウは力いっぱい扉を押さる。
何かバリケードになるモノがあればと思い周りを見回すが、近くには何もなかった。
遠くの方には樽や木箱が積んであるが届かない。
どうしよう。どうしようとシオウは焦りながら扉を押さえ続ける。
そして
ガチャンッ!
「・・・・・・・・・・・う?」
扉の先から鍵を閉められる音が聞えてきた。
恐る恐る扉を開けてみようかと、軽く扉を引いてみるが開かない。
「え? え? なんで?」
「バカはテメェだクソガキ! こっちは元々逃がさねぇために閉めるつもりだったよ!」
「う?・・・・・・あっ! だせーーーっ! ここ開けろーーーーっ!!」
今更ながらに入り口が塞がれたことを知ったシオウは、どんどんと扉を叩くが残念なことに木製ではなく鉄製だ。
いかに身体能力が上がったシオウとはいえ鉄扉を殴って破壊できるわけもない。
「ガキなんざ煽ってないでさっさとお前も手伝え! そのガキに何人もやられて漕ぎ手が減ってんだぞ! さっさとずらからねぇと兵士共が来ちまう! 奴等の軍船もまだ何隻か残ってんだからなっ!」
「チッ、仕方ねぇな。おいガキ、テメェは後で料理してやる。それまでせいぜいそこで縮こまってな」
そう言うと、扉の前にいたであろう男達はどこかに行ってしまった。
「うわ~~~~ん、ど~~~しよ~~~~う」
出口を封じられ、袋のネズミとなったシオウは唖然としながら鋼鉄の扉に項垂れた。




