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クリッカーの転職物語  作者: タヌキ汁
第二章 強くなり・・・そして
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その声は誰か


 青スライムと赤スライムに変身できる力を手に入れたシオウだが、だからと言ってその力で何かが変わる訳もなく、普通に朝早く起きて五階層でコボルトを狩り、一階層や三階層で訓練する日々を送っていた。

 生活は決して楽ではなく、毎日命を賭けた戦闘をさせられているが、貧民区で暮らしていた頃と比べれば、幸せな日々を送っていると言えるだろう。


 飢える心配がなく、屋根は無くとも奪われることのない住み家がある。

 それだけで、シオウは幸せだった。

 だが、そんな何気ない日々がいつまでも続くわけがなかった。

 この世界は何気ない日々が、何気なく過ぎて行ってくれるほど、優しい平和な世界では無いのだから。




「えへへ~、今日はいっぱい倒せた~」


 今日も今日とてコボルトを退治し魔石を得たシオウ。

 日々の訓練とクリッカーで身体能力が向上したおかげで、今回はなんとコボルトを複数同時に相手しても勝てるようになっていた。

 コボルトとはいえ数日の訓練だけで、一対複数で対峙できるようになるのはあり得ないことだが、そんな疑問にシオウが気付くわけもない。


「ふっふふ~ん!」


 鼻歌を口ずさみながら、シオウはダンジョンを出る。

 いつものように探索ギルドで魔石を買い取ってもらい、腐っていない美味しいご飯を食べるために


「ふっふふ~ん、ふふふふ~ん、ふふ・・・・・・・・・くんくん、煙の匂い?」


 だが、ダンジョンを出てすぐに違和感に気が付く。

 街から物凄い量の煙の匂いが漂い、視線を向けてみれば真っ黒な煙が上っていた。

 火事でもあったのだろうか? と思いつつ、街へと歩いていくと、いつもの平和な港町の光景ではなくなっていた。


「きひゃひゃひゃひゃひゃひゃ! 燃やせ燃やせーっ!!」

「か、金だ! 金を寄越せ!」

「酒があるぞ! 食い物もだ!」

「さっさと積み込め! 逃げるぞっ!」

「や、やめてくれ! それを、それを奪われちゃあウチは!」

「邪魔すんなっ!」

「イヤーーーーッ!?」

「お父さん! お父さーーん!!」

「おい八歳児未満のガキは連れてけ! 女より金になるぞ!」


 そこかしこから火の手が上がり、人の悲鳴が木霊していた。


「た、た、大変だ! 盗賊! 盗賊がっ!!・・・・あ、あれ? あの人達ってどこかで・・・・」


 街の人達を襲っている大人達の中に、何人か見覚えのある者がいた。


「あっ、あの人達貧民区の・・・」


 答えは見覚えが貧民区に住んでいた怖い大人達。

 彼等が何度か貧民区の子供を攫ったりしているのを見たことがあり、シオウも何度も追いかけられた経験がある。

 恐らく人身売買に関与している人達なのだろうと思いつつ、極力見つからないようにしていた人達だ。


 とはいえ彼等が襲う対象は、身寄りがなく、いなくなっても問題ないと思われている貧民区の子供だけで、流石に身分のある平民に手を出すことはしなかったはずだ。

 攫うにしても足が付かないように攫うだろうし、まず街中で誰かを攫うなどバカなことをしない。

 なのになぜ、今回こんな大々的に街を襲うのか意味がわからない。

 こんなことをすればお尋ね者になり、捕まれば縛り首になるのは必然。

 そもそも人や物を奪った後、どこに逃げると言うのだろう。

 こんなに大ごとになれば、どこに逃げてもこの国の兵士達が追いかけてくると言うのに・・・・。


「・・・・・・・う?・・・・・・・あっ! あの人達船を奪うつもりだっ!!」


 物資を門に運ぶのではなく、港に運んでいた。

 遠目で良く見えないが、港の方で何人か倒れているのでまず間違いなく港が占拠されているだろう。

 おあつらえ向きに大きな船が何隻も停泊しているし。


 これは大変なことになった。どうしようどうしようと思いながらも、頭の中でこれはどうしようもないと言う事がわかっており、いつもの如く危険から遠のくために、一旦ダンジョンに戻り、隠れることに決めた。

 盗賊達が暴れる街にいるよりもダンジョンにいる方が安全。

 そう考えて逃げ出そうとした。


「――――――――――!!」

「・・・・・・う?」


 だがいざ逃げ出そうとしたとき、とても聞きなれた声が聞こえた気がして街へと視線を戻した。


「―――――――――――!!」


 やっぱり聞こえる。

 聞きなれた人の声が・・・。

 色々な悲鳴に混ざって聞き取りにくいが、クリッカーで色々強化されているシオウの耳には聞き逃してはいけない人の声が聞こえていた。


「――――――――ま――――――ぱ―――――!!―――――――」

「・・・・・?・・・・・!?」


 そしてその声の主が誰なのか思い出し、その声のする方へ視線を向ければ、そこには無理やり馬車の檻に押し込められ、連れ去られる子供達の姿が一瞬見えた。

 その中にはシオウにとって見慣れた子供が涙を流しながら叫ぶ姿もその目に捉えていた。

 その子を見た瞬間シオウはその子を助けるために駆けだす。

 街は危険だとわかりつつも、その子を放って逃げるという選択がシオウにはできなかったからだ。

 だって、シオウにとってあの子は、初めて友達になってくれた優しい子供なのだから。




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