全てが動く日
「賊は全て殺しなさい。余裕があったら捕まえなさい。奪われた者達を取り返しなさい。そして、決して手心を加えてはいけません。賊に躊躇などしてはいけません。一人残らず逃さず縛り首にするのです。気を引き締めなさい」
「「「「「イエッサーッ!!」」」」」
人身売買する罪人達への見せしめも終わらせ、こまごました仕事も一段落させたアドットは、次に巷を騒がす盗賊退治へと赴いていた。
盗賊のアジトは判明していたし、各ギルドに討伐依頼も出していたのだが、残念なことに報奨金が低すぎたために誰も相手にすることなく放置されていた。
なので仕方なく、アドットは自ら兵を引き連れて出陣してきた。
盗賊退治くらい誰かやれと思わないでもないが、先程も言ったように報奨金が少ないので仕方がないのだ。
そして、アドット達は盗賊のアジトになっている古城へと侵入する。
入り口の門は錆びて倒れており、家の扉でさえ鍵がかからないほど劣化していた。
住めなくはないが、住みたくない場所だと思いつつ、アドット達は古城の中をできるだけ音をたてずに確認していった。
「地下室で救助者を発見しました。枷を付けられている為に少々解除には時間がかかりますが、皆手荒な真似をされた様子もなく無事です。そして・・・・・・賊の姿は未だ発見できておりません」
「そう・・・・・・・・再度屋敷内の捜索をしなさい。それと屋敷を囲ませている部隊にも周辺を探らせるようにと伝えなさい」
「イエッサー!」
無事に女性と子供達を保護でき、更に危害を加えられていなかったことを喜ばしく思うアドットであるが、流石にこの不審な状況では手放しに喜べなかった。
誰もが盗賊の禄でも無さを知っている。
金品を奪い、人を殺し、女を攫う。
攫われた女の末路は口に出さなくとも悲惨な目に合うことは目に見えているだろう。
運が良ければ助けられることもあるが、大抵は飽きて殺されるか売られるかのどちらかしかない。
しかし今回は運が良く助けられた。
何もされずに、深い心の傷を負う前に救出することができた。
それはとても喜ばしい事だ。
喜ばしい事なのだが・・・・盗賊が女を攫って何日も立つと言うのに何もしていないこと不信でならなかった。
別に彼女達に何かあって欲しいと願っているのではなく、盗賊とはそう言う存在であるからだ。
「人身売買の為・・・・・・と考えても微妙よね」
もしも売買する予定ならば、男達をわざわざ街に寄越す必要などない。
女より価値が下がるが、子供より労働力になる男の方が売れるのだ。
そして何より、売買目的ならば自分達の存在を知らしめるようなことはしないはず。
まるで誘い込まれたようだと思いながらも、その対策も取ってきているので大丈夫だ自分に言い聞かせる。
「・・・・・・・・」
だが、どうにも胸騒ぎがしてならない。
自分は何かを見落としているのではと思いながら、ふと街の方へと視線を向けた。
生い茂った木々が邪魔で古城からでは港町を見下ろすことはできない。
この古城は港町ができる遥か昔に作られたモノなのだから見えなくて当然である。当然であるのだが、
「やけに煙が多いわね・・・・いえ、流石に多すぎるわ・・・・・・・・・・・・・!?」
街から立ち上る黒い煙はその古城からでも見ることができ、そしてその煙の量から普通ではない何かが起こっていることに気が付いたアドットは部隊を分け、街へと急行するのだった。




