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クリッカーの転職物語  作者: タヌキ汁
第二章 強くなり・・・そして
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アドットさんは忙しい


 以前世話になった・・・と言っていいのかわからないが、アドットが管理する兵舎は今、とても慌ただしかった。

 その理由は最近巷を騒がす盗賊のアジトを発見することができ、強襲を仕掛ける為であるのだが、他にも貧民区でボヤ騒ぎが起こったり、港に何隻もデカイ船が停泊し、それの警備と監視のために人員を割り振ったりと、色々忙しくしていたのだ。


 その船はある他国の大商会の船。

 ニ・三年に一度、大量の荷を運んでくる船団である。

 運んでくるものはこの国では育たない珍しい果物や織物などだが、それよりも目玉商品なのが、この土地にはいない珍しい家畜達だった。

 少々肉は固いが骨まで食べられる牛、一週間に一度だけ拳大の卵を産む鶏、肉は食えないが分厚い皮が服になる豚など、世にも珍しい家畜達が運ばれてくるのだ。

 おかげでこの港は王都から離れていると言うのにそれなりに栄えている。

 だが、だからと言って警戒を怠ることはできない。


 利益を生む良き船団であっても未だに人身売買が栄えている他国の人間。

 そんな国に店を構える者が求める物はこの国の住民であった。

 勿論人の売り買いをアドットは許さず、商人達に人以外での取引をするよう徹底させ、もしも人身売買に手を染めた場合問答無用で縛り首にすると告示している。

 だが、それでも兵士達の目を掻い潜って貧民区に巣くうならず者達が秘密裏に取引するので、警備と言う名目で何人も船団に監視を付けなければならないのだ。

 更には見慣れない者がいないか、怪しい者がいないかと街の警邏の頻度もあげていた。


「アドットさん。また人身売買をもくろむ馬鹿者を捕まえましたがいかがいたしますか? これ以上牢に入れておくのも手狭になってきましたが・・・・」

「もうそんなに捕まえたの? はぁ、縛り首にすると告示しているのに、なぜか減りませんね。それに今回は異様に多いような・・・・・・・・・まあいいわ。少し早いですが何人か見せしめに殺しましょう」


 執務室で書類仕事をしていたアドットはため息を吐きながら、犯罪者の情報が書かれている紙の束を取り出す。


「・・・・・・・そこの貴方三日後に公開処刑を行いますから、準備と告示をお願い。処刑するのは以前放火を起こし金品を強奪しようとした男4人と、今わかっている人身売買に携わった首謀者達を中心に行います」


 ぱらぱらと資料を読みながら、即座に処理していく犯罪者を決めていった。


「それと拷問官には気にせずお好きなだけ壊して構わないと伝えなさい」

「それは、殺してもいいと言うことでしょうか? それはやりすぎでは・・・」


 大犯罪者では無い者に、流石にそれはやりすぎだと進言する兵士だが、その言葉にアドットは静かに紙から目を放し、兵士に視線を向けた。


「貴方はいつから私の命令に逆らえるだけの立場になったのかしら?」

「い、いえ、逆らうつもりなど」


 たった一言優しく問いかけられただけだと言うのに、そのたった一言が兵士の背中に嫌な汗を流させた。


「お金が無くて、食べ物が無くて、盗むしか生きられない子達には拳骨とお説教で許してあげるわ。お金が無くて、食べ物が無くて、殺して盗むことしかできない大人達は最後にちゃんと苦しまずに殺してあげるわ。だけどお金があって、食べ物があって、遊ぶための金欲しさに人を売り物にし、奪う楽しみに魅入られたドクズにはそれなりの苦痛の中で死んでもらわなくちゃいけないのよ。私の考えはいつも言っていたはずだけれど、忘れちゃったのかしら?」

「ちゃんと覚えております! 申し訳ございません!」


 別に怒られている訳ではなく問いかけられているだけだと言うのに、兵士は直立不動で敬礼をする。


「そう? なら早く行きなさい。くだらない時間を使わせないで・・・・ああ、それと人身売買に携わった者達は処刑が終わるまで水以外与えてはなりませんし、首謀者達の手は必ず潰しておきなさい。あまりに騒ぐようであれば舌を切り落としても構いませんが、決して舌以外は切り落としてはなりませんよ。でなければ処刑の意味が無くなってしまいますから。まぁ、死んでしまったら新しいのを選ぶだけですけどね」


 アドットが発した処刑の意味。

 その意味とは、犯罪者達に己の生が終わる瞬間を刻み付ける為であった。

 民衆の怒りの声、香る血の匂い、徐々に迫る無慈悲な死、それをできるだけ五感で感じ取りながら死んでもらわなければならない。

 自分達が人道的ではない非道な行いをした末路を、死が訪れる最後の瞬間まで感じ取って貰わなければいけないのだから。

 そう言った考えの元、舌以外の五感を奪うことを許さないアドットだった。


「今回は少々処刑人数が多いですが、頑張って頂戴ね。それと処刑が終わり次第盗賊の討伐にも向かわないといけないからそちらの準備もよろしく。皆にはちゃんと皆殺しにする旨も伝え忘れないようにね?」

「イ、イエッサー!」


 淡々と何事もないように過激な事を命じると、アドットは書類に視線を落した。

 その姿に兵士は少しの恐ろしさを感じながら静かに執務室から出ていく。


 アドットの戦闘力は10人の兵士が束になっても返り討ちにできるほどで、その為新兵達から恐れられているのだが、熟練兵達からすればアドットの戦闘力よりも、なんの躊躇もせずに非道な刑を言い渡せる彼女に恐れていた。



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