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クリッカーの転職物語  作者: タヌキ汁
第二章 強くなり・・・そして
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食欲に勝るものなし


 おっさんに怒られた次の日、シオウは変わらずダンジョンに潜っていた。

 なんか一人でダンジョンに潜るのは危ないからと言って依頼を進められたが、またウンコ関係の仕事ばかりだったので、逃げてきた。


 というか、今朝軍艦かと思うほどのとても大きな船がいっぱい港に停留していたのだから、そこの荷物運びとかの仕事を受けさせてくれればいいのにと思う。

 まあ、そんなまともな依頼など受けさせてもらえないし、回ってこないことは子供ながらに理解しているので、シオウは日々の糧を得るためダンジョンに潜り続けた。



 襲い掛かる二階層、三階層、四階層の魔物達を完全に無視して目的の五階層へと進む。

 その理由は五階層の魔石、要するにコボルトが落とす魔石が他の階層に比べて高く買い取ってもらえたからだ。

 一つ当たり100シルバー。

 今まで四階層までの魔石を10個集めてやっと100シルバーに届いていたのに、コボルトの魔石だと一つですんだ。

 ならばその魔石を狙うなと言う方が無理な話。

 それに、昨日はなんと900シルバーも手に入れることができ、そのおかげで念願だった定食を食べることができた。


 いつも食べているような素材の味しかしないご飯ではなく、野菜の甘みや調味料の塩気を感じられるスープに、何かのタレがかかった焼いた小魚数匹と焼きたてのパンが食べることができた。

 世間では質素な分類に入る定食だが、シオウにとってはほっぺたが落ちそうな経験であったのは言うまでもない。


 ただ、不満を言うのであれば量が少なかったことだろう。

 一番安い定食だったので仕方がないとは思うが、育ち盛りのシオウにとってそれでは足りず、途中で安いパンを買って腹を満たさなければならなかった。

 なので今回は定食だけでお腹いっぱいになるために、コボルト中心に狩りを決行することに決めたのだ。


 五階層からはかなり危険が伴い、魔物達が本気で殺しに来るがそんな恐怖よりもシオウの食欲の方が優っていた。

 一人で貧民区を生き抜き、今まで碌なものを食べてこられなかったシオウ。

 そんなシオウの食に対する執念や癒着はそんじょそこらの者達よりもはるかに高く、命のやり取りの恐怖よりも食べられずに餓死する恐怖の方がはるかに優っていた。

 そして、餓死への恐怖があるおかげでコボルトとの戦いで血を見る嫌悪感も、命を奪う罪悪感も軽減される結果となり、徐々に一人の戦士として歩むことができたのは幸いと言っていいだろう。







「2,200シルバーだな」

「む~、あともうちょっとだったのにー!」


 昼頃までかけて22匹のコボルトを倒したシオウだが、とても不満そうだ。

 目標は半日で50匹倒し、夕飯には安い定食を二つ食べ、残ったお金で明日の朝食のパンと昼食の串焼きを屋台で買おうと思っていたのだ。

 何気に屋台で串焼きを買うのは初めてだったので、かなり楽しみにしていたのだが、残念なことに予定どおりにはいかないようだ。

 今回の稼ぎでは安い定食を二つ食べて、明日の楽しみである串焼きを買わないか、安い定食を一つだけ食べて、明日の楽しみである串焼きを買うかしか選べなくなった。

 非常に残念だ。

 非常に残念で残酷な選択を強いられてしまった。


「どう考えても上等なほうだろが。なにをそんなに不満げにしてんだか」


 五階層で、それも一人でこれだけの金を得られたのはかなり凄いほうだ。

 普通にパーティーを組んでいたら、これの半分くらいしか儲けられなかったからな。

 まあ、それは五階層までの稼ぎであって、六階層・七階層と進めば倍以上は稼げるようになる。


「金を受け取ったらさっさと退け。ここは人様の悩みを聞く教会じゃねぇんだからよ」


 シッシッと虫を払うようにシオウを追い払う買取所のおっさん。

 シオウが今後個人でダンジョンに挑まなければならなくなってから若干対応が雑になった気がする。


「おい、さっさと換金しろ」

「あ? なになま言ってんだ? 一昨日きやがれっ! クソボケがっ!!」


 いや、おっさんは誰にでもこうなのかもしれない。

 普通に生意気な口きいた探索者ぶん殴ってるし・・・。




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