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クリッカーの転職物語  作者: タヌキ汁
第二章 強くなり・・・そして
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四階層


 依頼を終えた次の日。

 シオウは昨日の依頼で貰ったパンで腹を膨らませた後、四階層に向かうためダンジョンを降り始めた。

 依頼をいっぱい受けてギルドの心証を良くすればギルドがシオウを守ってくれる。と教えられたが、絶対貧民である限り嫌な思いをするだろうし、イジメられる。

 それに依頼をしてもパンしかもらえないのはちょっと不満だ。

 だって身体はお肉を求めているんだから。

 なのでお肉を得られるダンジョンで戦いたいと思うシオウである。

 若い身体はギルドの保護と言う食べられないモノよりも、タンパク質と言う己の糧になる食料を求めてやまないようだ。


「うえ~、なにここ~」


 二階層のブラバドや三階層のウビ坊に襲われても、こん棒で殴り飛ばし真っ直ぐ四階層に着いたシオウ。

 そんなシオウが訪れた四階層はジメジメしたジャングルのような階層だった。


 作りは今まで訪れた森のような階層と酷似しているが、木々には蔦の様なモノがそこかしこにぶら下がっており、地面はぬかるみ歩くのも一苦労だ。

 場所によっては膝まで埋まりそうな沼っぽい場所まであり、たった数歩歩くだけでシオウの服は泥だらけになってしまった。

 まあ、ダンジョンの物は(ドロップ品以外は)外には持ち出せないので、ダンジョンを出れば泥の汚れは落ちるので気にしなくていいが、気分的には最悪である。


「うえぇ、ばっちぃよぉ~」


 靴の中まで泥が侵入して気持ち悪そうに泣き言を言う。

 こう言っては何だが、まるでウンチが靴の中にあるようだとシオウは思った。


「うがああぁぁう!! もう! 地面歩かない!」


 そして数歩歩いた結果、シオウはぬかるんだ地面を歩くことを嫌い木に登り始めた。

 木登りなどあまり経験はないが、そこは持ち前の身体能力を生かして無理やり登っていく。

 ぶっちゃけ今の身体能力ならば、指先が少しでも引っ掛ける場所さえあれば、己の身体を持ち上げられるほどの筋力が付いていた。

 猿並みの身体能力の高さになっているが、これもクリッカーで身体能力が底上げされているおかげだろう。


 そしてシオウはどこぞの野生児よろしく木の上まで危なげなく登ると、次は枝や蔦を伝い隣の木へと渡っていく。

 そんな風にシオウは木々を伝い、時には蔦を伝ったり、木々の間を思い切り飛んだりしながら四階層を進んでいった。

 こう言っては何だが、今のシオウは猿そのものだ。

 そんなシオウだからというか、類は友を呼ぶと言うべきかわからないが、


「ウキッ!?」

「う、うっき~?」


 隣の木に飛びついた瞬間、木の上で寝ていた子猿のような魔物に出会うこととなった。

 この子猿のような魔物は、コヤッキー。

 猿の見た目通り木々の間を飛びかうすばしっこい魔物だ。


「ウキッ!!」

「あいた!? 何すんだよ!」


 攻撃手段は噛みつきとひっかくが基本だが、他にも物を掴んで投げて攻撃してくる。

 木の枝や泥や石ころ。

 運が悪いと自分のウンチを投げてくるときもある汚い魔物だ。

 幸いシオウは運がいいことに、木の枝を投げつけられただけだった。


「ウキャキャキャキャキャキャッ!」

「こんのー! 笑うなぁー!」


 そして、この魔物は性格が悪い。

 獲物を小馬鹿し、おちょくる性格なのだ。

 子猿の状態でこの性格の悪さ。大人になれば大層目も当てられない腐った性格になるのだが、それは今後コヤッキーの成体と出会うことがあれば紹介するとしよう。


「ウキャッ!」

「うわっ!?」

「ウキャッ!」

「危ないっ!?」

「ウキャキャキャッ!!」

「あいた!? アイタタタッ!? ああもう! 怒ったぞ! 倒してやる!!」


 何度も木の枝を投げつけられ、いくら温厚な性格のシオウでも堪忍袋の緒が切れ、コヤッキーに襲い掛かった。


「ウッキャキャー!」


 それに受けて立つと言わんばかりにコヤッキーも気合の咆哮をあげながらシオウと取っ組み合いの戦闘を始めた。

 そんな一人と一匹の戦闘はまるで


「ウッッッッキーーー!!」

「ウキキキキッーーー!!」


 二匹の子猿が喧嘩をしている様にしか見えなかった。





 ちなみにコヤッキーと取っ組み合いの戦闘は、身体能力が高いシオウに軍配が上がり見事に、


「ウッキーーーーー!!」


 シオウは勝利の咆哮をあげることができた。

 若干人として退化しているが、その退化も敵がいなくなれば徐々に元に戻っていった。

 別にコヤッキーの攻撃に人を原始人に戻すような効果は無いことをここに記しておく。


 そしてコヤッキーとの戦闘に勝利したシオウだが、その後はコヤッキーを見つけても極力逃げることにしていた。


 その理由は木の上で戦うのは危ないし、倒したとしても死体が地面に落ちてしまい、地面に落ちた所で煙のように死体が消えて魔石が現れても拾うのが大変だったからだ。

 グチャグチャのぬかるみの中、わざわざ小粒の魔石を拾いに行きたくない。

 故にこの階層はスルーすることにし、早々に五階層に続く階段を探すのだった。




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