掘って掘って掘り出せ
買取所のおっさんに強制的に依頼を受けさせられたシオウは、ある場所で馬車馬のように働かされていた。
そこは多くの男達が半裸になりながら汗だくになる仕事。
そう、シオウが今回依頼を受けさせられた仕事は
「倒れるぞーーーーッ!!」
街の外で木を伐り倒し領地を広げる仕事であった。
基本シオウがやることは木こりの人達のお手伝いだ。
切り倒された木を運び、枝を払われて輪切りにされた木を荷馬車まで運び、荷馬車と共に街まで運ぶ。
ただ運ぶだけの仕事。
専門知識など必要とせず、ただ力と体力が必要な仕事だが、全てが肉体労働である為とても大変な仕事であった。
そしてただ運ぶ以外にももっと大変な仕事・・・というか面倒な仕事があり、今はなぜかその面倒な仕事をシオウはやらされていた。
「なななななななななななななっ!!」
シオウは必死に木の根を掘り返そうとしている。
元々切り倒された木を運ぶ仕事をしていたのだが、なぜか知らないが現場監督からお前は切り倒した木の根を掘り返せと言われたので、命じられるがままに掘棒で穴を掘っていく。
「ななななななななななななななななっーーーー!! よーし! 掘り終えたぞ! 次はこうだ! ふんぐっ! ふんぐっ! ふんぐぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ!!」
粗方掘り終えたシオウは根っこを掴み前後左右に揺らし始める。
たまに力任せに引っ張ったりしている。
そして、
「グギギギギギギギッ! どうりゃぁぁぁぁぁぁぁ!!」
無駄に力が強くなったシオウの馬鹿力のおかげか、地面に張り付いていた根っこが地面事持ち上げられ、引き抜かれる。
「アハハッー! とったぞー! かんとくー! とったよー!」
そして引っこ抜いた木の根っこを自慢げに掲げ、現場監督の所へ持っていく。
「このガキ30分もたってねぇのに引っこ抜きやがった」
「うに? ねぇかんとく! これじゃダメなの?」
「・・・・・・いや、それでいいぞ。上出来だ。ほら約束の駄賃だ。一息ついたらもっと引っこ抜いてこい」
「いえっさ~!」
持って言った木の根っこと交換するように、パンを一つ受け取るシオウ。
受け取ったパンはいつものカチカチぼさぼさの安いパンではなく、バゲットの様に周りはサクサクで中はしっとり柔らかなパンだ。
中には何も入っていないが、パンの上にはバターが軽く塗られているので、それだけでシオウにとっては高級品だ。
「はぐはぐはぐはぐ!」
パンを受け取ったシオウはその場ですぐに食べ始める。
手が土で汚れているがそんなことは気にしない。
食べ物を得たらすぐに食べる。
誰にも取られないようにお腹の中に入れてしまう。
長年身に着いた防衛本能は早々なくなるモノではなかった。
「そんなに急いで食ったらお前・・・・」
「はぐはぐはぐはっ!? んーんーん-!!」
「言わんこっちゃねぇ。ほら水だ」
「んんー!! ごくごくごくごく・・・・けっぷ~・・・あんがと! よ~し! 次行ってくる!」
「あ、おい! まだ休んでも・・・・・行っちまいやがった」
喉を詰まらせそうになりながらもなんとか食べ終えたシオウは、すぐに次の根っこを掘り返すために駆けだした。
一息付けと言ったのだが、言葉通り一息しかつかず話を聞かないシオウに、現場監督は呆れながらも、作業が少しでも早く進むならばいいかと思い、特に強く止めることは無かった。
そしてその日のうちに切り倒された木のほとんどがシオウの手によって根っこを掘り返された。
そしてシオウは報酬で貰った食べきれなかったパンを抱え、奪われる前に住み家のダンジョンへと帰っていくのだった。
こういったおまけがある依頼ならばまた受けてもいいかもと思うシオウであるが、
「まさか今日中に全部引っこ抜くとはな・・・・・・・アイツ、ヤベェな」
一人で十人分近くの仕事をこなしていれば、そりゃあおまけくらいもらえるのは普通であろう。
そして今回気のいい人が現場監督であったために使い潰されずにすんだだけであることをシオウは知る由もなかった。
ちなみにシオウがこの依頼を躊躇した理由の一つは服が汚れるからだ。
シオウにとって初めて貰ったまともな服。
ズタ袋の様な、ツギハギだらけで変な汚れが付いた布ではなく、普通の庶民が着るような綺麗な服だった。
だから野良仕事で汚したくなかっただけ。
命の危険がない世界で安易に服を汚したくなかっただけだ。
敵や己の血で汚れるのは構わない。
戦いで服が破れ、ボロボロになるのは構わない。
それは強くなるうえで仕方がない事であり、強くなるうえでの代償と思っているからだ。
そうシオウの頭の中の誰かが言ったのだ。
強力な力を得るにはそれなりの代償が伴う。byダーク・ブリンガーと
故にシオウは戦闘において服が汚れるのは構わないと思っていた。
それが代償になると思っているから・・・・・・・・どう考えても釣り合わない思うが、本人からしたらかなり重い対価であるとだけ言っておく。
だって、シオウは今着ている服しか持っていないのだから。
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