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クリッカーの転職物語  作者: タヌキ汁
第二章 強くなり・・・そして
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平民になるには


「うびびーー!」


 肉祭りから一週間たち、その間もシオウは三階層でひたすらウビ坊狩りに勤しむ。

 そしてこの一週間のほとんどを三階層で過ごしていた為


「!? 危ないなぁ~。行き成りは止めてよぉ~」


 戦闘中であっても周りを警戒することができるようになっていた。

 今ではそう簡単に回転する木の枝に殴られることもない。


「うびーいッ!?」

「あっ! また勝手に殴られてる! 隙ありーっ!!」


 そして頭がさほど良くないウビ坊が回転する木の枝にぶつかり痛みで動きが止まった瞬間、遠慮も躊躇もすることは無くなっていた。

 ダンジョンに入る前は怖い怖いと何度も怖がっていたが、僅かひと月でここまで魔物に容赦なく戦えるようになったのだから、探索者として成長したなと褒めていいだろう。


「うびぃ!?・・・・ぃ」

「勝ったーっ!!・・・・けど、お肉な~い。ハズレか~」


 ウビ坊が地面に突っ伏すと、ボフンと煙のように姿が消え、後には魔石が一粒残っているだけだった。

 目的の肉が手に入れられなかったことを残念がりながらも魔石を拾うと、シオウは次の魔物を探しに歩き出した。


「おにゃ!? ふいぃ!? この! お前等しつこい! ブンブン振り回すなっ!!」


 意志が無く、自動回転しながら襲い掛かる木々に文句を言いながら、今日も変わらずウビ坊の肉を集めに勤しんだ。







「お前明日から四階層に行くか依頼をどうにかして受けろ」


 ウビ坊の魔石を売る為にギルドの買取所に来たシオウ。

 そこで開口一番に買取所のおっさんにそう言われた。


「うえ? なんで~?」

「何でじゃねぇ。これだけ三階層の魔物をぶっ殺せるなら次に行くのは当然だろ。いつまでもぬるま湯に浸かって次に進めなくなられても困るんだよ」

「?? お風呂なんて入ったことないよ?」

「誰がいつ風呂の話なんぞした。アホか貴様は」

「アホじゃないぞ! アホはハナクソほじくるんだぞ! 僕ほじくらないもん! ちゃんとちーんてするぞ!」

「誰もそんな話してねぇだろうが! いいから明日から四階層に行くか依頼を受けやがれ! じゃねぇといつまでたっても・・・・・・・・・・平民の身分を買えねぇぞ」


 最後の方は声を抑えながらそうシオウに忠告してきた。

 だが、そんなおっさんの気遣いに子供のシオウが気付けるわけもなく、ただ首を傾げた。


「ギルドに登録するだけなら誰でもできるが、登録したからってテメェの身分が平民になる訳じゃねぇ。お前は今も身分無しの貧民のクソガキだ」

「む~~~~~!」


 本当のことだが、なんだかバカにされている感じがしてむくれるシオウだが、そんなシオウなど気にも留めないおっさんは話しを続ける。


「俺は別にテメェの身分が平民だろうが、貧民区のクソガキだろうが、アホガキだろうが気にならねぇが、中には気に入らねぇ奴もいる。そいう奴等に絡まれたくなかったら、無理やりでも依頼をこなしてギルドの貢献度を稼ぎやがれ。依頼金が少なかろうが、クソみたいに扱われようが、何とか数をこなせ。そうすりゃギルドは真面目なお前を守ろうと動いてくれるぞ。絡んでくるアホ共にだって睨みを聞かせることもできる」

「おお? おぉ~」


 貶されていると思っていたが、どうやら話を聞く限りシオウを心配しての助言のようだ。

 シオウは行き成りのおっさんの気遣いに戸惑いながら、真剣に話を聞く。


「だから全く金にならねぇ雑用依頼でもなんでもいいから頭下げてでも受けろ。邪魔だとぶん殴られても食らいつけて受けろ。依頼を何度も受けりゃあギルドがお前を守るために動ける。まぁそれが嫌なら、テメェの腕っぷしだけで二十階層まで行ってこい。そこで得られる魔石かドロップ品をギルドに売れば、それだけでテメェはギルドに利益をもたらす重要な人材として身分を与えられ、ギルドも大々的に守りに入れる」

「にじゅう? そこまで行けば認めて貰えるの?」

「ああ、そうだ。だが、バカなこと考えるなよ。二十階層まで降りられるのは上級探索者達だけだ。お前みたいな探索者になりたてのガキが行けるような場所じゃねぇ。死にたくねぇなら大人しく依頼を受けろ。今すぐ目指すとかバカなことは抜かすなよ」

「・・・・・・ちぇ~」


 考えは読まれ、忠告されたシオウはブスくれる。

 流石に今すぐ向かうつもりはなかったが、それでも数カ月後には確実に二十階層を目指しただろう。

 貧民区に住んでいたので危機感知能力は高いはずなのだが、そこら辺の行動は子供ゆえに突拍子も無いようだ。


「・・・お前行くつもりだったな。全くなんてアホなガキだ」

「ハナクソほじらないって言ってるじゃん!」

「アホ=ハナクソほじる奴だなんて可笑しな定義つくってんじゃねぇよ。まあいい、それよりほらよ。お前でも受けられる依頼を用意しておいてやったぞ」


 どさりと依頼書の束を持ち出したおっさんは、何枚か手に取ると机に並べだした。

 並べられた依頼書にはドブざらいや下水道の掃除、糞尿回収に尿を使った縮絨作業(集めた人の尿で羊毛を踏み洗いする作業)と言った誰もやりたがらない依頼書が書かれていた。

 はっきり言って臭くて汚い仕事ばかりである。

 しかもどれもあり得ないほどに安い賃金である。


 唯一、どの仕事でも一食分の食事と作業用の服が用意されているので今着ている服が汚れることは無いのは救いだが、それでも率先してやりたい仕事ではない。


「ウンコばっかり~」

「ッチ、文字が読めるのかよ。メンドクセェな」


 先程までシオウを心配し、柄にもなくお節介を焼いていたおっさんだったが、今の一言で勘に良い者は気付いたことだろう。


 おっさんはただ高確率で解消されない依頼を、シオウを使って少しでも減らそうとしたのだ。

 別に解消されなくとも問題ないのだが、あまりにも依頼者の要望に応えられず依頼が残ったままにしておくと、監査に響くとか何とかで、上からぐちぐち文句を言われるのだ。

 それが嫌で純粋無垢な子供を騙そうとしていたのだ。

 どこにでも悪い大人と言うのはいるものだな。


「変なのばっかだからや~らない。それに、二十階層まで行けばいいだけでしょ? だったら簡単だいっ!!」

「簡単なわけあるか。いいからこれとか受けてみろ。報酬は悪いが、今のお前に仕事を選べる権利はねぇんだからよ」

「ヤダよ! これもウンコ関係じゃん! 絶対ヤダッ! ウンコ弄ってると病気になるって知ってるんだぞっ!」


 溜まった糞尿からは有毒な硫化水素が発生したり、病気の元を生み出したりと死の危険性が極めて高い為、近づくべからず。

 免疫力の低い子供が下手に近づいたら確実に死ぬぞ。と以前頭の中の誰かが、そう言ってきたのを覚えている。


 硫化水素や免疫力と言うのが何かわからないシオウだが、それでもウンコに近づくのは危ないことは理解できたので、今まで排泄物関係の仕事を受けないで生きてきた。

 今後受けるにしてももっとチンコがデカく(大人に)なってからだと心に決めている。

 子供じゃなくなれば免疫力と言うのが強くなり死ににくくなることを知っているからだ。


「くっそ、スラスラ読みやがって・・・・・・・そこらの探索者より頭いいじゃねぇか」


 おっさんは小声で悪態をつきながら、押し付けられるような依頼は無いかと依頼の束をペラペラとめくっていった。


「・・・お?」


 そして押し付けられそうな依頼を見つけたのか、軽く目を通した後、シオウに差し出した。


「おい、これやってこいよ。ウンコじゃねぇし、報酬もそれなりに高い。しかも三食飯付きと豪勢だぞ」

「ん~?・・・・・ん~~~~~~~~」


 渡された依頼書を見てシオウはなんとも煮え切らない唸り声をあげる。

 悪くはない。

 先程見せられた依頼よりも遥かに良い分類に入るようだが、即座に頷くことはできないでいた。

 だってこの依頼は・・・・・。


「よし、そこまでイヤそうじゃなさそうだな。受理しといてやる。早速明日行ってこい」

「えぇ! 僕まだやるなんて言ってないよ! それに行ってイジメられたりしたらヤダよ!」

「うっせぇ! 迷っているだけならさっさと行ってこい。それにこれ以上仕事をえり好みできるほどお前は偉くねぇからな。諦めろ」

「ぶぅ~! おうぼ~う!」


 全く持ってシオウの言う通りだが、シオウの抗議をおっさんは聞きれず、無理やり依頼を受けさせられるのだった。





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