魔石より肉でしょ
あんこくりゅうふぁいやーで焚火を作り、肉を食らった翌日。
シオウは変わった。
別にダンジョンの肉を食らったせいで魔物化したとか、進化や覚醒をしたわけではないし、中二病が発現したわけでもない。
ただ彼は男の子から獰猛な肉食獣へと変わっただけだ。
「にくーーー! にくよこせーーー!!」
「うぎゅうっ!?」
シオウはひたすら三階層でウビ坊狩りをする。
「おお! やったー! にくだー! 肉ゲットーー!! ふぎっ!? うぎぎぎぎっ! だ、だいじょうぶ! 大丈夫! 痛いけど大丈夫! お肉ゲットしたから大丈夫だもんねーーーだっ!!」
そして毎度のことながら回転する木々に殴られるが気合と根性で耐え、三階層を爆走する。
できるだけ殴られないように気を付けてはいるが、ここにきてまだ二回目である。
視野を広くし、周りを警戒しながら走り、戦うなどできる訳がない。
ただし、殴られても引かぬ媚びぬ省みぬの精神でその足が止まることは無かった。
なぜなら、
「お腹いっぱい食べてやるー! お肉食べるぞーーっ!!」
シオウには止まれない理由があるのだから。
「にっくく! にくにく! にっくくにくーっ!」
半日後、シオウは目的の肉を大量に手に入れることに成功した。
ただし、その代償として全身赤く腫れあがるほど殴られたのだが、小躍りしているシオウを見る限りそれでも大満足といった感じだ。
「にくニク二区弐句肉祭りー! ニックー!!」
色々語尾が可笑しいが気にしてはいけない。
なんと言っても今のシオウのテンションが振り切れているのだから。
目の前には木の枝に刺さった大量の肉が焚火で焼かれている。
これほど豪勢で豪華な食事を今まで見たことは無い。
「おにくよーし! オニクよーし! お肉よーし! オ~ニック~よ~~~しっ!」
かなりウザったいと思うが、何度も言わせてもらう。
この子にとって人生で初めての豪華な食事なので許してほしいと。
世間では質が悪く、はした金で取引されている安い肉とはいえ、腐った食い物で無いのがこんなに集まったことは生まれて初めてなのだから生暖かい目で見守って上げてください。
「えへへ、えへへへへ~、いっただっきまーーーーすっ!!」
そして歌を歌いではしゃいでいると、やっと肉が焼き上がり、シオウはそれに被りつく。
塩も何も振っていない肉。
野菜も無ければいつも食べている固くて安いパンもない。
唯一ボロボロの水袋に飲み水が入っているだけだ。
肉と水だけで少々寂しい食事であるが、
「う、う、う~~~~~まーーーーーーーいっ!!」
シオウにとってはそうでもなかった。
肉を噛めば肉汁が滴る。
少々生臭さはあるが、腐った味がしない。
口に入れても吐き出せと本能が騒がない。
それだけで最高なのに、そんな食事をお腹いっぱい食べられるのだ。
「うまい! うまい! うまい! うまぐすっ、う゛ま゛いよ゛~」
あまりに美味し過ぎたのか、それともこんなに食べられることに感動したのか、シオウの涙腺が崩壊する。
塩を振っていないのにいい感じに肉に塩味が付くほどに、ボロボロ涙を流していた。
「ウガウ~ゥ、ウガイォ~」
もはや言葉にならない言葉を吐きながら、口いっぱい頬張った。




