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クリッカーの転職物語  作者: タヌキ汁
第二章 強くなり・・・そして
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ダーク・ブリンガーから魔法を学ぼう


 シオウが肉を焼きに来た場所。そこは「銀世界」と名付けられている一階層である。

 その一階層は全てが銀色であるが普通の森の中と言う設定であるおかげで、少し見回せばそこら中に薪は転がっていた。


 なのでそれほど苦労せずに焚き火用の薪を集めることができた。

 まあ、薪を集めてもその場から離れてしまえば元通りになると言うダンジョンの性質があるので一度で大量の薪を運んでこなければいけないが、それでも勝手に街中で火を起こして怒られることも無ければ、貧民区で火をつけて変な大人に目を付けられることもない。

 手間はかかるが危険が少ないのだから、これほど焚火に適した場所はないだろう。


「にっく~! にっく~! にくくくく~」


 三階層のドロップ品である肉を木の枝にぶっ刺しながら、シオウは上機嫌に自作した肉肉の歌を歌う。

 歌詞の単語が肉以外存在しないのは気にするべからず。


「よーし! 火をつけるぞー!」


 積み上げられた木の枝。

 お世辞にもうまく組まれているとはいいがたく、ただまとめて置いたおいただけだが、まあ、直接火を付ければ燃えなくはないだろう。

 効率よく燃え続けはしないだろうが、小さな肉を焼くだけなのだから問題ないはずだ。


「んんんんん・・・・・・・ふぁいやーーー!」


 シオウは買取所のおっさんに言われた通り、火がつくことを願いながら薪の山に手を向け、ふぁいやーーー! と叫ぶ。

 いわずとも知れたことであるが、フャイヤーの単語はシオウの頭の中に聞こえてくる人達の叫んでいたから真似しただけだ。

 そしてシオウの願った通りシオウの手から炎が生み出され薪に火が


「・・・・あれ~?」


 つくわけもなかった。


「ふぁいやーーー!!・・・・あれ~??」


 買取所のおっさんは、対応するのが面倒という理由で嘘をついたことに、シオウは気が付かず、必死に火がつくことを願いながら何度も無意味な行為を繰り返した。

 こんな子供はバカだと思うだろうが、シオウはただ純粋なだけだ。

 決してバカなわけではなく、純粋で真面目なだけである。

 そこの所間違えないように。


「ふぁふぁふぁふぁふぁふぁふぁふぁいやーーーーー!!・・・・・・あるぇ~??」


 いや、ただのバカかもしれないな。

 そんなふうに、シオウは一人声をあげて魔法を放とうとしていた。

 その光景を隣人の芋虫の魔物が生暖かい目で見ていたような気がするが、気にしてはいけない。


「ふぅ、ふぅ。おっかしいなぁ~。なんでつかないんだ?」


 言われた通り火がつくことを願った。にも関わらず願い通りにはならない。

 そのことにシオウは首を傾げつつ、早く肉が食べたいとお腹が主張し始めた。


「うがー! お腹空いたよぉ~! これ食べたいのに何で火がつかないんだよぉ~~!!」


 子供の様に、というか子供なのでジタバタと駄々をこねる。

 そんな事をしても意味がないと言うのに・・・。


『基本魔力とは誰の身に宿っている。場所は心臓付近。人によってはみぞおちだったりそれより下あたりの腹だったりするな。だからまずは己の魔力がどこにあるのかを感じろ』

「うぁ?」

『そしてその魔力を感じ取ったならば魔力を外に放出するイメージをしながら心が願うままに叫べ! 己の魂を振るえるほどの想いを叫べぇっ!』

「・・うぁ?」


 駄々をこねていると不意にシオウの目の前に真っ黒な服に身を包み込んだ男が現れた。

 右目を怪我しているのか真っ黒な眼帯をしており、左手には包帯が巻かれていた。

 そう彼は


『そうすれば魔法は具現化される。だがそれでも魔法を放てない者もいるだろう。そういう時は魔法を放つ己の姿を明確に想像し魔力を食わせるイメージするのだ。たったそれだけ。たったそれだけのことができれば貴様も魔法が使えるようになる。ふっ、だがひとつ言っておくぞ。お前が魔法を使えるようになったとしても我に封印されし暗黒竜の力の前では無力に等しいと覚えておくがいい!』

『たけるちゃ~ん! ごはんよ~!』

『ママッ! 僕はたけるじゃなくてダーク・ブリンガーだってば!』

『わかったからそんな怒らないで。今日はたけるちゃんの大好きなハンバーグを作ってあげたんだから』

『えっ! ほんと! よっしゃあぁぁぁっ!! あっ、ご、ごくろう! その供物、このダーク・ブリンガーが食らってやろうではないか!』

『はいはい、わかったからご飯食べましょ?』

『うむ!』


 ある世界の、ちょっと拗らせてしまった可哀想な子であった。

 若干マザコンではあるがそうことは気にしてはいけない。


「・・うぁ・・・・」


 そしてそんな意味のわからない年若い男と母親のやり取りを見せられたシオウはドン引き


「うぁぁぁぁぁぁい! そっか! そうなのかぁぁっ!」


 してはいなかった。

 一応訂正しておくが、シオウは今目の前に現れた拗らせた男に憧れた訳でもない。

 ただ、魔法の使い方を知ったから嬉しくて騒いでいるだけだ。


「よーし! 心臓? お腹? の所にある魔力を見つけるぞー!」


 そう言うとシオウは寝転がりながら己の中にある魔力を探り始めた。

 魔法が存在しない世界であるならば、その行動は全くの無意味である。


「・・・お? これかな?」


 だがここは魔法や魔物が存在する世界。

 故に全く意味のないアドバイスはシオウにとって意味のあるアドバイスになるのであった。


「よーし! 見つけた! 見つけたぞ! 後はこれで火をつけるだけだ! 火よ出ろ! 火よ出ろ! 火よ出ろ! 火よ出ろ!・・・・・・・・・むぅ、出ない。なら、んんんんんんーーー、いっけーーーあんこくりゅうふぁいやーーーーー!!」


 そしてなんだかんだと己の前世の記憶のおかげか、はたまた前世から今まで左手に封じられた暗黒竜のおかげかわからないが、小さな火を生み出すことに成功するのだった。





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