三階層へ
おっさんに叱られてから次の日。
シオウは今三階層に繋がる階段の前にいた。
「す~は~す~は~・・・よし! いっくぞー!」
二階層に降りた時よりも若干嫌な気配を感じながらも、シオウは気合を入れて三階層に降りていく。
理由は二階層で駆け回って買取所のおっさんから怒られたのも理由の一つだが、それ以上に三階層に降りれば魔石の値段が変わる事を知ったからだ。
ただ変わると言っても魔石一つの単価が5シルバーほど上がる程度だ。
ほとんど誤差の範囲ではあるが、シオウからすれば得られる金額が増えることは万々歳であった。
いくら小さな魔石とはいえ、数を集めればそれなりに重くなるしかさばる。
そして持ち運べる量にもが限界ある。
だったら、少しでも価値の高い魔石を得る方が得策だ。
持てる数が同じであっても、重さが同じであっても高い魔石の方がいいに決まっている。
それに高い魔石の方が持ち帰る量も少なくできるしね。
たかが5シルバー程度の差だが、その誤差の分だけ魔石を持ち帰って来なくても良くなり荷物が軽くなる。
そう考えているシオウは三階層へと降りて行った。
ぶっちゃけ、運ぶ重さが変わったとしても歩く距離が伸びているのであまり労力は変わっていないように思えるのだが・・・・そこは気にしてはいけない。
三階層は一階層と二階層と変わらず森が広がっていた。
ただ、三階層の森は銀色に輝いても、真っ暗な夜が広がっている訳でもなく、太陽の日差しが降り注いでいる普通の森が広がっていた。
ただし、
「・・・・回ってる」
生えている木が回転している事を除けばだが。
別に高速回転している訳ではなく、拳骨で軽く殴られる程度の速度だろう。
怪我をするにしても少々赤く腫れる程度だ。
まあそれでも戦闘中に不意打ちされれば隙を作ることになるので気を付けなければならない。
ここはあれだな。
空間把握能力と言うのが必要になってきそうな階層だ。
そう一端の探索者ならば考えるのだろうが、
「ふへ~、ぐ~るぐ~るぐ~るぐ~る・・・・目が回る~」
ことシオウがそんな事を考えられるわけもなく、クルクル回る枝や木を見て楽し気にしながら目を回していた。
そして、しばらくシオウはそんな木々を眺めていると、不意に草むらからウリ坊のような魔物・ウビ坊が現れた。
「あっ! 魔物だ! かくごーーー!!」
もはや魔物に対しての恐怖はさほどない。
倒すことにも二階層で散々ブラバドを倒しているので、その抵抗もなくなっていた。
故に魔物を見たら飯のタネとしか思わなくなり、突撃したのだが、
「ふぎゃう!?」
回転してくる木の枝がシオウの顔面にぶち当たった。
周りを全く警戒せずに、ウビ坊だけを見ていたシオウにとって行き成り目の前に木の棒が現れたように見えたことだろう。
「ふぎゅゅゅゅっ!?」
枝が折れるほどの速度で自ら衝突していったシオウは鼻を抑えながらゴロゴロ地面を転げまわる。
鼻血が出なかったのはそれだけシオウが頑丈だったと言う事だろう。
「うびーーーー!」
「うあ? わぁっ!? 危ないっ!?」
そして地面に転げ回っていると、小さな地響きを鳴らしながらウビ坊がシオウに向かって突撃してきた。
シオウはそれをギリギリ転がって避ける。
「なにすんだよ! こんにゃろう!」
「うびーーー! うびうびーーーーっ!」
シオウの文句に反論するようにウビ坊は勇ましく鳴き声を上げる。
もしも魔物の言葉を理解できたならば、仕掛けてきたのはお前の方だと文句を言っている事だろう。
「やるかこのーー!」
「うびびーーーっ!」
おう、やってやるぜー! と言うように、フンスと鼻を鳴らしたウビ坊は声をあげながら突撃する。
そしてシオウも負けじとウビ坊に襲い掛かった。
「ふぎゃう!?」
「びぎゃう!?」
そして二人仲良く回転する木の枝に突撃しては痛みで転げる回ることとなった。
この三階層では周りを見ずにただ猪突猛進することはいけないと、遠回しに教えてくれる階層のようだ。




