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クリッカーの転職物語  作者: タヌキ汁
第二章 強くなり・・・そして
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シオウ無双・・・・その結果


「わぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」


 二階層。大地と空が逆転したような階層。

 大地は星空で、空は真っ暗な大地。

 されど木々は星空の大地に根を生やし、重力も特に代わっていない。

 ただ、大地と空の風景が逆転している。そんな感じの世界が二階層である。

 そんな摩訶不思議な世界で、シオウは大声をあげながら


「まてまてーーーーーっ!」


 獲物であるブラバドを追いかける。


 クリッカーのレベルが上がったおかげで身体能力が向上し、今では空飛ぶブラバドを追い掛けられるほど早く走れるようになっていた。

 暗い闇夜であっても見失うことは無く、いつまでも追いかける。


 それが面倒だと思い襲い掛かってくるブラバドがいればこれ幸いにと、こん棒の射程距離まで己も駆けていき、範囲に入り次第思い切り振り回して一撃で仕留めていた。

 たまに空ぶることもあり、攻撃を受けることもあったが、なぜかあまりいたくなかったので気にせずそのまま殴って仕留めた。

 攻撃を受けてもあまり痛くない理由はクリッカーの身体能力向上の恩恵でもあるのだが、まあシオウがそれに気付かないのはいつものことである。


「わはー! いっぱいとったーー!」


 そんな風に朝から晩まで二階層を走り回り、ブラバドを仕留めていった。






「お前か! 二階層で暴れたバカ野郎は!」

「ふぎゃうっ!?」


 ブラバドの魔石が大量に入った小袋を手に買取所のおっさんの所に行くと、中身を見たおっさんはシオウを別室に連れて行き、そこでシオウに拳骨を落した。

 変な悲鳴を上げるシオウだが、殴った方のおっさんのほうが痛そうにしている。

 今のシオウの身体は子供とは思えないほどの石頭になっているからね。


「いったーい! なんで殴るんだよー!」


 ただそれでもおっさんの拳骨はブラバドの攻撃よりも攻撃力が高いのか、シオウは涙目になる。


「なんでもクソもあるか! 二階層で大声上げながらブラバド追いかけてたバカがいるって苦情が来てんだよ! それお前だろ!」

「うん、そうだよ! いっぱいブラバド倒したんだ! すごいでしょ!!」

「凄いでしょじゃねぇ! このボケナスが!」

「ふぎゃうっ!?」

「か、カテェ頭しやがって」


 プラプラと手を振るうおっさんと、殴られて目を回すシオウ。

 先程シオウは丸一日掛けてブラバト達を追いかけては退治していった。

 別に誰かが戦っているブラバドを横取りしたわけでも戦闘時に誰かを巻き込んだわけでもないので怒られる謂れは無いと思うシオウだが、それは間違っていた。


 暗闇の中で襲い掛かるブラバド。

 無音に近い状態で襲い掛かってくるが、完全な無音状態ではない。

 僅かに羽を羽ばたく音や、風を切る音は耳を済ませれば聞こえてくるのだ。

 その音を頼りに他の冒険者達はブラバドを討伐する。

 真っ暗闇に潜む影を目視で見つけられる。などというモノはごく少数なのだから。


 様子するに、シオウはそんな二階層で大声をあげながら戦っていたので、周りの迷惑になったと言う訳だ。

 幸い低階層であるため、怪我をしても軽くものですんだが、それでも音を頼りにして戦う二階層では無駄に声を上げるべきではないのは、暗黙の了解であった。


「わかったかこのバカ野郎が! 次から他の奴等の邪魔しやがったら金輪際ダンジョンに入らせねぇからな!」

「うぅぅ・・・は~い」


 そんな感じの説教をされたシオウは涙目になりながら、素直に頷く。

 流石に飯の種であるダンジョンに入れないのはシオウにとって死活問題だから、反論することなどできる訳もなかった。


「それとお前はそろそろ三階層にいくか、街の依頼をどうにかして受けやがれ。依頼を受けねぇといつまでたっても低ランクのままだぞ」

「うえ?・・・ランク?」


 そんなの初めて聞いたと言わんばかりに首を傾げるシオウに、おっさんは目を細める。


「まさかランクの話を聞いてねぇのか?」

「?? しらな~い」

「・・・マジかよ」


 嘘偽りなく純粋に答えるシオウに、おっさんは何やってんだ受付のバカ女共はと悪態をつくも、すぐにシオウが何故説明を受けずに登録だけ済まされたのかなんとなく想像できてしまった。

 シオウが登録する際、少しばかりギルドでもめ事があった。

 主におっさんが冒険者との殴り合いの喧嘩を始めてしまい、そしてそのまま受付嬢達もなんかおしゃべりに興じていた。

 そして、そんな風に騒いでいるとギルド長と小五月蠅い副ギルド長が現れお開きとなったのだ。

 シオウはその時なぜか、副ギルド長の説教を受付嬢達と聞いており、そのまま流れ作業の様に登録を澄まして帰っていったのだ。

 多分副ギルド長も忘れていたんだろうな。

 あの日は全員説教されて業務が滞っていたこともあり、さっさと終わらせるために少しばかり勇み足だったし。


「・・・・チッ。仕方ねぇな。説明してやるからちゃんと聞いてろ」

「う~~~?」

「これからお前が探索者としてやっていくのに必要な情報を教えてやるって言ってんだ。ランクが上がればもっと金を稼げるようになるし、もっと金が稼げるダンジョンにも入れるようになる。わかったか」

「いえっさ~! ちゃんと聞きます! いえっさ~!」


 おっさんは珍しくシオウに親切に振る舞った。

 少なからず、あの時無駄に暴れたのは悪かったと思っているのかもしれない。


 それからシオウは三十分ほどでおっさんから探索者のランクの上げ方について説明を受けた。

 そしてランクを上げていくうえでの利点と欠点を聞きながら、


「・・・ZZZZZ」


 途中で集中力がきれてしまい寝てしまうのだった。

 居眠りした瞬間おっさんの拳骨がシオウの頭に振り下ろされたのは言うまでもないだろう。




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