ある城のある老婆
シオウが住む港町から遠く離れた場所に王都がある。
その王都には大きなお城があり、そのお城のある一室には二ヶ月以上深く眠り続ける一人の老婆が大切に守られていた。
「う、うあ、お、おうに、おうに・・」
「えっ? 聖女様! 聖女様がお目覚めにっ!」
年老いても美しい青い髪のままの老婆は、この国では海の女神とも聖女とも呼ばれていた。
そんな老婆が永い眠りから覚めると、うわごとのように何かを呟きながら、老婆の世話を焼いていた侍女に手を伸ばし、何かを伝えようとする。
「おうに・・・・伝え・・なさい・・・またこの国・・・・から・・・・寵愛を・・・・受けし子が・・・現れま・・・・した・・・海の見える・・・街・・・船がある・・・・・港・・・・そこに寵愛を・・・受けし・・者が・・・・・・・急ぎなさい・・・・・この国の宝が・・・・・この世の宝が・・・・・強欲な国・・・・・・奪われようと・・・・・失っては・・・・なりません・・・あの子を・・・・・奪われては・・・戦火の火種にしては・・・なりません・・・・早く王に・・・・王に・・・伝え・・・・・」
必死に言葉を紡ぎながらそう言うと、老婆は力尽きたように意識を失い、また深い眠りにつく。
侍女は老婆の言葉を聞くと、すぐに王の元へと走った。
今聞いた話はすぐに伝えなければならない。
この国の利益となる者が、50年に一度訪れると言われる神の寵愛を受けし者が現れ、それが奪われようとしているのだ。
奪われてはならない。
神の寵愛を受けし者が強欲な者の手に渡れば、また戦争が起こる。
それをさせないために侍女は王の元へと必死に走った。
仮に不敬として罪に問われ殺されるとしても、兵を押しのけ王の部屋へと押し入った。
その後話を聞いた王はすぐに重臣達を集め会議を開くと、各地の港町に伝令を走らせ、兵を動かす準備をする事となった。
だがその動きを察知していた他国が秘密裏に伝令を抹殺し、多くの港町に情報が届くことは無かった。
そしてそれは、寵愛の受けし者がいる港町も同じく、情報が届くことはなかった。




