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クリッカーの転職物語  作者: タヌキ汁
第二章 強くなり・・・そして
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ダンジョン生活


 一階層はシオウにとってとても住みやすい場所だった。

 全てが銀色で目がチカチカするが、外敵はおらず、身体を洗う泉もあり、何より人と出会わないのが好ましかった。


 ここが人気の無い一階層だから出会わないのかもしれない。

 そもそも二階層でも誰とも会ったことが無いのだが・・・と疑問に思わなくはないが、まぁ出会わないのはいいことだと考えておくことにする。


「ぷはっ! ぷはっ!」


 そして人と出会わず、危険の無い場所に泉があると言うことで、シオウは服を着たまま泳ぎの練習をしていた。

 シオウがいるこの街は港町。

 泳ぎが達者になれば、ダンジョン以外でもお仕事がもらえるかもしれない。

 流石に行き成り海の男になれるとも、なりたいとも思っていないが、泳ぎが達者であれば色々とこの港町では便利なのだ。

 嫌な奴と出会った時でも、逃げる時に泳ぎが早ければそれだけ逃げ切れる可能性が上がるからね。


「ふへ、へぇ、はぁ、ふぅ、ふへ、はぁ、ふぅ」


 シオウは水から上がると、濡れた服のまま地面に寝転がる。

 一時間ほどしか泳いでいないが、服や武器の重りも相成って思ったよりも体力を使った。


「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ・・・えへへ、グルグル泳ぎできるようになったぞ」


 脳内に響く声と、目に映る映像を参考にシオウはクロールを覚えた。

 バタ足とか初めてだったが、何度か溺れかけてうまくできるようになったようだ。

 木の板とかをビート板がわりにするなどという発想が無いのかと言いたいが、まあ、シオウの見た映像には映っていなかったので仕方がない事ではある。


「えへへ~・・??・・あ~! また会ったね~」


 モサモサと草木を掻き分けながら、一匹の芋虫が現れる。

 銀色の芋虫で、一階層の魔物。

 見分けなどつくはずがないのだが、シオウには現れた芋虫が前回穴を掘っていたときに、近づいて来た魔物であることがわかっていた。

 これもクリッカーのおかげで色々強化されたから違いが判別できるのかもしれない。


「モッソ~お水飲みにきたの? ふぎゅ」


 疲れたので立ち上がることはせず、ゴロゴロと転がりながらモッソ~と名付けた芋虫に声を掛ける。

 だが、目の前にシオウが転がってきても、モッソ~は止まることなくシオウの頭をよじ登り、ただ真っ直ぐ泉に向かって歩んでいった。


「あははっ! くすぐったいぞー! あははははっ!!」


 ブニブニした食感が顔全体に広がりシオウはくすぐったそうにただ笑う。

 虫が顔の上を我が物顔で歩くのだ。

 気持ち悪いとか、汚いとか普通は嫌がるモノなのだが、シオウにとっては一人で過ごす日々の寂しさを紛らわしてくれる良き隣人でしかなかった。


 ぼちゃん


 そんな良き隣人のモッソ~は一直線に泉に向かうと、泉の水を飲むわけでもなく、ただ真っ直ぐ泉に入っていった。

 というか、落ちたと言った方が表現的にはあっているだろう。


「モッソ~水浴び~?」


 芋虫も水浴びとかするんだな思いながら、シオウは泉の端まで転がり、モッソ~が浮かんでくるのを待った。


「・・・・・」


 モッソ~が浮かんでくるのを待った。


「・・・・・・・・」


 そう、結構待った。


「・・・・・・・・・・・・」


 結構待ったのだが、


「・・・あれ? もしかして溺れてる?」


 一向に浮かんでこないモッソ~にシオウは不安を感じていた。


「あっ! モッソ~!・・・モッソ~?」


 そしてついに待ち望んだモッソ~が泉の底から浮かんできたのだが、可笑しいことにシオウは気が付いた。

 ピクリとも動かずただ浮かんでいるモッソ~。

 それはまさに水死体の様だった。


「も、もももモッソ~!!」


 モッソ~に不幸が訪れたことを理解してシオウは、疲れた体に鞭打って泉に飛び込んだ。

 寂しさを紛らわしてくれる良き隣人を助けるために。





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