表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
クリッカーの転職物語  作者: タヌキ汁
第一章 能力がその子を変えるまで
17/411

奇跡の始まり


 謂れ無い暴力を受け、身体を引きずりながらアウルーズ魔法書店へと向かったシオウだが、アウルーズ魔法書店に足を踏み入ることはできなかった。

 更には明日から来ることを禁じられた。

 一言でいえばクビである。


 どんな理由があっても、商売道具である腕に怪我を負った状態で綺麗な文字が書けるわけもなく、そんな状態では半人前以下のシオウに任せられる仕事は存在しないからだ。

 また仕事が立て込んでいた場合の戦力外となる為、あてにする事はできない。

 ならば人員を新たに確保した方が良いということだ。


 いくらお人好しと呼ばれている熊男であっても、仕事をこなせない者を雇うことはできない。

 人種差別も身分差別も年齢差別もしないが、差別をしない変わりに己が定めた最低限の仕事をこなせない者は子供であっても容赦なく叩き出す。

 それがどうしようもない事故に巻き込まれたことであっても、慈悲はない。


「げほげほ・・う、うぅぅ」


 クビを言い渡されたシオウは住み家へと戻ると薄いボロ布に包まりながら、ただ痛みに耐え続けていた。

 時間がたったせいかわからないが、蹴られた箇所から熱が帯び、身体中が熱く、そして痛い。

 暗くてわからないが、咳といっしょに変な匂いの唾が出てくる。

 どこかで嗅だことのある匂いなのだが、思い出せない。

 ただとても嫌なモノなのは理解できた。


 シオウは吐き出しているのが血だと理解していない。

 暗闇のせいもあるのだろうが、痛みでそれを考えることができないようだ。


「い、いたい」


 咳をするたびにお腹が痛い。

 お腹を壊した時と比べ物にならないほどの痛みに、シオウはただ涙を流しながら痛みに耐えることしかできず、早く治ってと願い続けた。


「く・・くりっか~」


 そして、そんな痛みの中一人では耐えられないと、心細いと、誰でもいいから傍にいて欲しいと願ったシオウは、言葉も発さず、温もりも感じない画面を呼び出した。


 ただ上下運動するだけのスライム達。


 触れなければ大きな反応を見せない動く絵。

 それでも、そんな絵でもシオウにとって傍にいてくれると言うだけで安らぎを得ることができた。


「え、えへへ、げほげほっ!」


 指先が軽く触れるだけでスライム達が驚いてくれる、反応してくれる。

 たったそれだけのことが嬉しくて、シオウはスライム達を撫でるように優しく触れはじめた。


 相も変わらず優しく撫でても皆ビックリした顔を見せるだけだが、徐々にかすれていく視界はそんなスライム達の反応を見ることもできず、ただそこにいることを確かめるように意識が途切れるその時まで手を伸ばしスライム達に触れ続けた。


「・・・ま・・ま・・ぱ・・ぱ・・」


 そして、そう呟きながらシオウの意識を失う。

 シオウが思っているよりも怪我は酷かった。

 手や足の打撲は勿論だが、それ以上に力の強い大人からまともな蹴りを数回その身に受けてしまった。

 その蹴りで肋骨が折れ、骨が肺に突き刺さってしまったのだ。


 日々栄養のある食事をとっている子供であればここまで酷い怪我にはならなかっただろう。

 普通の食生活を送っていた子供ならば耐えられただろう。

 だが、シオウはそんな普通の子供ではない。


 日々お腹を空かせており、食べられない日が続くことが普通だったのだ。

 その為、シオウの身体はほぼ骨と皮でできているのではないかと言うほどやせ細っていた。

 そしてやっと得られる食料も腐った物ばかりで体内のあらゆる器官は日ごとに傷つき、健康とは程遠い状態であった。


 そんな弱弱しい子供が健康的で力のある大人から無慈悲な暴力を振るわれれば、それはもう死ぬしかない。

 そんな簡単な事に大人達は気付くことは無く、そんな知能など無い。

 たとえそれを理解できる知能が備わっていたとしても、そのことを知っていたとしても、身分の無い貧民区の子供など殺してもどこからでも湧いてくるゴキブリのように補充されるだろうと思うだけだろう。


 だからシオウの命もここで終わる。

 両親を失っても一人で貧民区を生き抜けたのは奇跡に近かったが、それもここで終わりを迎えるのだろう。


「・・・・・・・・・・・・」


 身体が死へと向かっていく。

 心臓の鼓動がやけに早いような、いやゆっくりなのか、もうシオウにはわからなかった。

 ただ苦しさが無くなり、ただ身体が重くて、眠ってしまおうと瞼も重くなっていくだけ。

 ただそれだけのことだった。

 そして、ゆっくりとシオウの意識は遠のき、そのまま静かに、息を引き取る。


トンッ


 そして息を引き取る寸前、最後の別れを伝えるように身体が勝手に空中に浮かぶスライムに向けて一度だけ、スライムをつついた。

 数日の間だけだったが、一人にしないでくれてありがとうと感謝するように、力ない指先がスライム達に触れた。




 それが





『ステージクリア! ステージ10に上がります! くわえて貴方の全てが上昇します! 現在の肉体では今後の上昇は見込めません! 肉体を最適化させます!・・・対象の死亡を確認。最適化は見込め・・・・・・死亡を拒否する・・承認・・・・肉体の再構築・・・失敗・・・・肉体の変異を試みる・・失敗・・肉体の作成は可能であるが、魂の定着が不可能。適した器が必要・・・・・・・・・・スキル クリッカーに対象者の魂を定着させる・・・可能・・これより肉体の構築を再開・・否定・・これより肉体の変異構築開始 種族名 人族(スキルとの混合種・??族)として新たな生をあたえる・・・神に愛されし子の幸があらんことを』


 それがシオウの起こした本当の奇跡であり、そして感謝の想いに報いるように与えられたスキルは動き出した。





 第一章はここで終わりとなります。

 第二章からは少しだけクリッカーの力で自己強化された主人公が己の生活を良くしていく話になると思うので、クリッカーとしての能力の話はあまり出てこない・・・・・かも?


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ