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クリッカーの転職物語  作者: タヌキ汁
第四章 嫌われていても守りたいモノ
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今日の一押しは僕・・・・・・・なんだけどなぁ


 僕は今壺の中ではなく小動物とか入れる鳥籠に入れられ、なんか知らないけどお店に並べられている。

 周りを見れば僕と同じように籠に入れられている小動物や、木と土かな? そんな感じの材料で作った水槽があり、その中で色んなお魚さん達が泳いでいた。


「さぁさぁ! よってらっしゃい! よってらっしゃい! 今日は世にも珍しい面白いものが入ってるよぉ! さぁさぁさぁさぁ! よってらっしゃい! よってらっしゃい!」


 そして僕を運んで来た漁師さんは、威勢よく声をあげる。


「よう大将。今回は海と山どっちに行ってきたんだ?」

「今回は海だ! 海で面白れぇ変な生物を捕まえたぞ! 良かったら見ていってくれよ! 結構プニプニして可愛いぞ! 良かったらペットとして買ってかねぇか!」


 ずいっ、と僕が入った籠を客に突き出す漁師さん。

 行き成り持ち上げないでよね。びっくりするじゃん!

 というか、山にも行っているみたいだからこの人は猟師さんでもあるようだ。

 海も山もどっちも行くから漁猟師さん? なのかな?


「なんだこりゃ、変な生物だな」

「だろ! 変な生物だろ! 多分新種のクラゲだと思うんだが結構可愛いだろ? どうだ! 買っていかねぇか!」

「悪いが稼ぎは全部酒代に消えちまう。ペット買う余裕なんてねぇよ」


 確かに珍しいとは思うが、別に欲しくもないと思い、男は押し付けてくる籠を漁猟師に突き返す。


「それは残念だな・・・・ならペットとしてではなく今夜の飯としては買ってかねぇか! プニプニしていてうまそうだろ? 食えるかどうかわからんがな!」

「そんなモノ客に売りつけようとするな。それよりその魚を一匹くれ。酒のつまみにする」

「あいよー! まいどありっ!」


 なんか普通に怖いこと言われた。

 ここってお魚やお肉を売るお店なんだね。

 やばい、早くこんなところから逃げたい。


「今日は早いのね大将さん。いつもはもう少し遅くに開くのに」

「いやいや、どうも奥さん。今日も毛並みが美しいですねぇ。見惚れてしまいますよ」


 そんなことを思っていると今度は恰幅の良い犬っぽい女の人が現れた。

 漁猟師さんが毛並みを褒めているが、僕にはその毛並みがいいモノなのかはわからない。


「お世辞なんてやめとくれよこんなおばちゃんに。なんもでやしないよ」

「いやいや、こんな美しい人に声をかけて貰える。それだけ俺っちは日々活力を得られるんでさぁ! 毎日声をかけて貰えるのを楽しみんしているんですから!」

「まったく口がうまいんだから・・・それじゃあ今日はお肉が食べたい気分だから買っていきましょうかね。鳥を7羽ほど貰える?」

「へいまいど! 肉付きがいい鳥を選ばせてもらいますよ! それとご用意している間お暇でしょうし、良かったら珍しいのを捕まえたんで見ていってやってください!」

「珍しいモノ? あららららら、何かしらねこれは」


 そしてまた行き成りお客さんの前に突き出される僕。

 だから行き成り動かさないでほしい。

 もしくは動かすならもっと丁寧に扱ってよね。

 この漁猟師さんはとっても扱いが雑で困るよ。


「新種のクラゲです・・・・・・・・・・・・・・・・(多分)」

「新種のクラゲなのね。面白いものがまだまだ海にはいるのねぇ」

「良かったらいります? 食べられるかどうかは流石にわかりませんが、プニプニしていて可愛いですし、時々跳ねたりするので観賞用としてどうです?」

「ごめんなさいね。流石に飼う余裕はないわ。ウチは大家族だもの」

「そうですか。まあしょうがないですよねぇ。奥さん美しいから旦那さんほっといてくれないんですよね。またお生まれになるんですか?」

「あら、やだよぉ。もうこれ以上増やすつもりなんてないわよ・・・・けど、そうね。あの人が大好きなカメ料理でも一品作ってあげるかねぇ」

「ならこっちの亀はサービスしときますよ。どうぞ持っていってください」

「気が利くじゃないの。なら次来た時にいっぱい買ってあげるわ」

「へい、楽しみにしております。またのおこしを~!」


 そう言うと犬っぽい女の人は商品を受け取り、いなくなった。

 そして僕はまた同じ場所に吊るされる。

 何だろう。

 売られなくてよかったんだけど、いらないと言われるのはちょっと悲しくなる。

 何なんだろう・・・この感じ・・・。


 それから、お店が閉まるまで色々なお客さんが来て、色々なお客さんに紹介されたが、誰一人として僕を買おうとする人はいなかった。

 珍しい、変なの、見たことがない、新種のクラゲだって、なんて声をかけられじろじろ見られるがそれだけだった。

 食用ではないだろうと言うと、皆興味が失せたのか誰も買おうともしない。

 別に食べられたいわけじゃないからそれでいいんだけど! それでいいんだけど!・・・・だけどなんか納得いかないよ!

 だってそこの小さなお魚さんより売れないんだよ!

 僕の方がおっきいのに!

 僕の方が身がぎっちりしているのに!

 なんか負けた気がして物凄く引火だ! そう引火なのだ!


『そんな不機嫌にならなくていいでしょ。売られなければそれだけ逃げられるチャンスがあるってことなんだから。それと引火じゃなくて遺憾よ。い・か・ん』

『そうそれ! とってもいかんなのだ!』

『だから怒る必要はないってば』


 嗜めるお姉さんだが、シオウは納得いかないのかぷりぷりと怒る。

 多分自分があの魚達よりも下に見られているのが気に食わないのだろう。

 シオウは良い子で強い子なのだ。

 魚なんかに負けてたまるかと言いたいようだ。


『こうなったら僕の本気を見せてやる! 絶対僕を買わせてやる!』

『だから買われなくていいんだってば!』


 お姉さんの制止も聞かずシオウは動き出す。

 誰かに自分が買ってもらえるように。


ぷっにぷっにぷっにぷっにぷにぷにぷっ! ぷっにぷっにぷっにぷっにぷにぷにぷっ!


「お? なんだ? なんか動き出したぞ?」


 シオウが始めたのは柔らかスライムボディを活用した縦横に身体を動かす変な動き。

 丸みを帯びていたスライムが縦や横の楕円形へと形を変える。

 ただそれだけだが、なんか見ていて和む。

 そんな感じの動きを始めた。

 この動きをスライム体操とひそかにシオウは呼んでいたりする。


「おぉ、おぉ、おぉぉぉ!」


 その動きに感銘を受けたのか、漁猟師さんは声をあげる。

 ふふふ、どうだこの動き! 凄いだろー!


ぷっにぷっにぷっにぷっにぷにぷにぷっ! ぷっにぷっにぷっにぷっにぷにぷにぷっ!


 そう思いながらシオウは見せつけるようにスライム体操を続けた。

 そして


「おぉぉぉぉぉぉ! 気持ち悪いな!」

『ガーンッ!?』

「しばらく落ち着くまで封印だな!」

『ガガーンッ!?』


 なぜか漁猟師さんには不評だったようで、籠に真っ黒な布を被せられてしまった。


『・・・・・・・・・・・』

『えっと・・・・シオウ』

『しくしくしくしく』

『え~・・・・・ど、どんまい』


 渾身の芸を気持ち悪いとバッサリ斬り捨てられたシオウは、心に深い傷を負いその日はそのままお姉さんに慰められながら過ごすのだった。





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