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クリッカーの転職物語  作者: タヌキ汁
第三章 強者へと至るその代価
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大航海・・その先には奴がいる


「海を越えて~! あいさ! 地平のかなた~! ぼくは~! ゆくぞ~! 力の限り~」


 どこかで聞いたことがある歌を口ずさみながらシオウは力の限り船を漕ぐ。

 シオウが漕ぐ船には帆はついていないので動力はシオウの腕力だけであったが、その動力はあり得ないほど疲れ知らずで、あり得ないほど頑丈なので帆をつけなくて問題なかった。

 今ものほほんとした空気ではあるが、船の速度はアスリートが漕ぐ並みの速度が出ていた。

 はっきり言ってそこらの大型船より早いぞ。


『・・・・その歌やめない。ちょっと色々と怒られそうだから』

「う? わかった。じゃあ違う歌ね! 漕げよ~! 漕げよ~! ぼくぅは元気~! 漕ぐのが大好き~! どんどんゆこお~! 荒波! 渦潮! 大津波~! 嵐に豪雨に~! 血だらけサメ大群~! その先進んで~! 海のそ~こ~!」

『その歌も止めなさいっ! と言うか何よその替え歌! 結局沈没してるじゃない!』

「え~、海の怖さがわかるいい歌なのに~」

『確かに海の脅威を知るにはいい歌ね。そこは納得するわ。けどそんな物騒な歌はやめなさい! 聞いてて不安になるから! 歌うならもっと楽しい歌にしなさい!』

「は~い」


 そんな感じでシオウは楽し気に海を渡った。










「公国の船37隻が、連合国の国境に侵入。そのまま真っ直ぐ帝国に向かって来ております」

「37隻ねぇ・・・まっ、公国にしては揃えたほうか」


 戦争の為招集をかけられた一人の帝国騎士である細剣使いのザンザが、大型船の一室で興味無さそうに剣を磨く。


「報告では更に24隻ほど増えるとのことです」

「あっそ、つかお前バカなの? 船の数なんざどうでもいいんだよ。必要なのは船に乗ってる兵士の質だ。クソツエェ奴が乗ってるか。大事なのはそれだろうがよ」


 所詮船なんぞ兵士を送る為のゆりかごでしかない。

 強い奴が乗っているか乗っていないか、強い魔導士がどれほど乗っているのか魔法使いが乗っているのか、そっちの方が肝心だ。

 船の数なんてのはどうでもいいんだよ。


「申し訳ありません。そちらの情報はまだ詳細に掴めていないとのことです」

「ッチ、使えねぇな」


 何のために密偵を放てるのかわかったもんじゃねぇな。


「それとこの機に乗じて聖教国が動き出したとのことです。敵の中に・・・」

「いちいち言わなくとも聖騎士が出張ってきてんのはわかってんだよ。だから俺以外のアナーキー隊はそっちに向かったんだろうが」


 公国が動き出したと同時に聖教国も動き出した。

 しかも聖教国の中でも教皇を守る聖騎士が数名派遣されている。

 それだけでやっこさんがどれほど本気なのかが伺えるってものだ。


 世界一の軍事力を誇る帝国ではあるが、流石に二大国を相手にするのは少々骨が折れるな。

 まあ、負ける気は全然せんが。


「チッ、聖騎士を殺せるってのに、なんで俺が公国なんぞクソ程も面白くもねぇ奴等を相手しなけりゃいけねぇんだ。根性入らねぇぜ」


 クジ引きでハズレを引いたからここにいるのだが、それでも納得できないザンザ。

 彼も強い奴等と殺し合えるのを楽しみにしていたというのに。


「はぁ、つまらねぇな。クソ程つまらねぇぜ。こういう時にアイツがいてくれりゃあ暇潰しができるってのによぉ」


 そして暇しているザンザが思い浮かべるのは頑丈でなかなか壊れないサンドバックのシオウのことだった。

 殴ってよし、斬ってよし、突いてよしの有能サンドバック。

 騎士達の攻撃を何度も受けても死なぬ頑丈サンドバック。

 あれのおかげで好きな時に肉を切り裂く感触を味わえたのだ。

 最高の遊び道具で暇をつぶせる道具だった。


「ホント、アイツどこ行ったんだかなぁ。どっかから流れてこねぇかなぁ」


 そんな不吉な事を言いながら、報告に来た兵士を無視して剣を磨いていった。









「うぅっ!?」

『どうしたの?』

「わ、わかんにゃい・・・・・なんかゾワゾワってきた」

『ぞわぞわ? 風邪かしら? 一度スライムになってみましょう。治療画面で不調が無いか調べてみるわ』

「うん。わかった。けどその前にちっこしてからね!」

『・・・・・・・おしっこって・・・・・ただもよおしただけじゃないの?』

「う?・・・・そう・・・・かも??」




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