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クリッカーの転職物語  作者: タヌキ汁
第三章 強者へと至るその代価
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新たなる力柔らかハンド


『はい、今日の船作りはここまで、次はご飯食べて休憩よ。それが終わったら今日は寝ましょう』

「うへぇ~い」


 数日かけてコツコツと丸太船を作る。

 ただ基本的に素人芸なので、頭の中にいる変な男の丸太船の様に綺麗に作れないでいる。

 まあ、途中木を燃やす? みたいなことをしていたから燃やしてみたら燃やしすぎちゃって、一から作ることになったからね。

 お姉ちゃんが言うにはスギとかマツなんていう樹木と同じ系統であり、油を含んだとっても燃えやすい木材だったとか何とか。

 よくわからないが燃えやすい木材と言うのがあるらしいよ。

 よくわかんないけど。




「もぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐ・・『ステージクリア! ステージ40に上がります! くわえて貴方の全てが上昇します! 更に今回より新たな機能と癒しのお話時間が伸びました。追加された機能は柔らかハンドです。モノを持ち上げることはできませんが癒し機能の者が使用できるため、どうぞ一緒に遊んで癒し機能と交流を深めてください。癒しのお話機能は十分間から二十分間に伸びました』・・う?」


 ご飯を食べながらベシベシとクリッカーを叩いていると不意にそんな声が聞えて来た。

 長々と色々な事を言われたので一瞬何を言っているのか理解できなかったが、すぐに目標であるステージ40まで到達したことに気が付いた。


「ごっくん! お姉ちゃん! ステージ40になったよ! 新しいきのう? ってのが追加されて僕もっと強くなったみたい! あ、あとお話しできる時間も増えたよ!」

『ええ、凄いじゃない。よく頑張ったわね。いい子いい子』

「え、えへへ、うん頑張った!」


 何だろう。

 ステージ40になったことより、褒めて貰える方が嬉しい。

 それに頭も撫でて貰えているし・・・


「えへへ、えへへえへ・・・うにょっ!? なんだこの手!?」


 そう撫でられているのだ。

 ぽよぽよしたスライムのような手で、こう頭をなでなでと。


『これがステージ40をクリアして得た力よ。私の意志で動かせるし、シオウも動かそうと思えば動かせるわよ。やってごらんなさい』

「う?・・・・・・・・・・・・・・・・うん」

『ん? どうしたの?』

「えっ!? な、なんでもないよ! それじゃあ、えっと・・・い、いくぞー! うううううう! トサカ!」


 ぽよぽよした手に意識を向けてみればなんとなく動かせることがわかり、更には形も変えられるような気がしたので、思い切って鶏のトサカを作ってみたらできた。


「あははっ! おもしろ~い!」

『面白いって・・・・いや、それはいいわ。それよりそれってそんなことできる仕様だったかしら?』

「あっ、そうだ! それならアレもできるかな!」


 何を思ったのかシオウは作りかけの船の丸太によじ登る。

 そしてそこで何かを思い浮かべた。


「できたー! 見て見てお姉ちゃん! 帆ができあぁっ!?」


 それは巨大な帆。

 どうやらシオウは今回得た力を使って、船の動力を得ようとしたようだ。

 だが残念なことにそのスライムの手は風を受けきれるほど強度は高くなかった。

 物を持ち上げる力さえないのだから仕方がないといえよう。


「うひゃ~、つめて~!」

『いい考えだったけど、流石にそこまで便利なモノじゃないわね・・というか冷たいの?』

「うん! だって水だもん!」

『水・・・・・・まさか・・・』


 お姉さんは何かに気が付いたのか、今度は自分の意志で手を操り出しながら、その手を再度調べ出した。

 そしてその手が何でできているのか納得するとうんうんと一人頷き出す。


『いつものことながらいい時に必要な能力が追加されるものね。私の意思が反映されたのかと思えばちゃんとシオウに必要なものが用意されているじゃない・・・もしかしてステージ30の時に得たあれにももっと使い道があるのかしら?・・・・・ああ、なるほどこういう使い方もあったのね。全く私ったらダメね。ちゃんと調べておかないと・・』

「う??・・・・おねぇ~ちゃ~ん? どったの~?」

『あっ・・・ごめんごめん、何でもないわ。それよりシオウ、朗報よ。このスライムみたいな手は飲み水代わりになるわ』

「そうなの?」

『ええ、見た目はちょっとアレだけどこの膜の中は全部飲み水よ。ただし飲める量は青スライムや赤スライムなったときに摂取した水の量しか生み出せないみたいだから、今度湧き水の所でスライムの姿になって大量に水を確保しに行きましょう』

「お~? それってもう水筒いらずってこと?」

『その通りよ。それに海に出たら飲み水を得る方法が限られていたから本当にこの能力はありがたいわ。それと海に出た時食べ物をどうしようかと思っていたけど、それも少しだけどうにかできそうよ』


 なんか知らないが、ステージ40になってからいい事が続いている感じがする。


『ステージ30で得た着せ替え機能があったでしょ? それを使えば大量の食料を抱えた状態で着せ替えれば、時間が止まったシステム内に保管しておけるわよ』

「おお~・・・おお?」


 よくわからない単語が出てきて首を傾げる。

 しすてむってなんぞや?


『流石に馬車一つ抱えてもそれを中に入れることはできないけれど、大きなバックをそのまま保管できるのはありがたいわ。それにいざと言う時の武器だって保管できるもの。しかもスライムのスキンにもショルダーバッグくらいなら身に着け可能だから、その中にも食べ物や薬、もしくはお金を入れておけば無くさずにすむわ。ホントなんでもっと早くに気が付かなかったのかしら、気付いていたらもっとやりようが合ったのに』

「・・・・今気づけたから落ち込まなくてもいいと思うよ?」

『そうね。ありがと。けど次からはこんな失態しないからね』

「うん、がんばっ!」


 よくわからないけど、一瞬お姉さんが落ち込んだので励ますシオウ。

 可笑しいなぁ。

 このお姉さんはシオウの精神を安定させるために生み出された存在であるのに、なぜ逆に気遣われているのだろうか。


『それじゃあ、懸念材料が無くなったことだし、手早く船を仕上げましょうか』

「うん!・・・あっ、けどその前にね・・お願いしたいことがね・・・あるんだけど・・・」


 その柔らかい水の手を見てからというか、お姉さんがこのヘンテコな手を操れると知ってからやって欲しい事があり、シオウはちょっと恥ずかしそうにしながらお姉さんに問いかける。


『あら? 何かしら?』

「えっとね・・うんと・・・・あ、頭とか・・もっとナデナデして欲しいなぁ・・・って」


 そうこの手をお姉さんが操れると知ってから、一番最初に思い浮かべたのはそれだった。

 触れ合うことができないと思っていたのに、お姉さんと手だけでも触れ合える。

 それがただの水でできたヘンテコな手であっても、触れ合いたかったのだ。


『・・・・・・・・』

「だ、だめかな?」

『ふ、ふふふっ、良いわよ。ほらいい子いい子~』

「わっ!? え、えへへへへへっ」


 そんな可愛らしいお願いをされたお姉さんは上機嫌に微笑みながら、シオウの頭を撫で始めた。

 もしもお姉さんに顔があれば、その顔はニヨニヨとニヤついていたことだろう。


『このこの、全く可愛い子ねぇ!』

「か、可愛くはないよ! 僕は強い子だよ!」

『うふふっ、そうね強い子ね。強くていい子だもんねぇ~』

「うん、その通りだよ!」


 そんな感じで二人は戯れながら、その日は結局それ以上船作りが進むことは無かった。




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