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クリッカーの転職物語  作者: タヌキ汁
第三章 強者へと至るその代価
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丸太一本で事足りる


「そなたに・・・教えることは・・もう・・なにも・・・ない・・・・よく頑張った」

「そ、そんちょー!」

「ゆけっ! 皆にそなたの勇姿を見せつけるのじゃ!・・・・・・がくっ」

「そんちょーー!」


 村長スライムはもはや力尽きたと言わんばかりに、意識を失った。


「うぅ・・村長・・・・見ていてください。僕、村長が教えてくれた凄い技で皆をふぉぉぉぉって言わせてみせます」


 そして村長スライムから技を伝授された大人スライムは、自分の順番が来たので舞台へとあがっていった。

 そこで見せた技はスライムでは持ちえない人の手を己の身体から生やすと言う伝説の技。

 この技を使えば、ジャンケンやあっち向いてホイといった遊びができるようになる。

 ただしこの技を習得している者が村長スライム以外いないので必然的に村長スライムとしか遊べないモノであるが、村長のお世話をしているとしてこの技を習得した者は自動的に次期村長スライムとなる。

 こうして一番最後まで思春期スライムとして過ごし、若干皆よりも劣っていたスライムは、一日にして次期村長スライムとして成り上がるのだった。


 ちなみに村長スライムは別に亡くなった訳ではない。

 ただご高齢の為ちょっとはしゃぎ過ぎて疲れて眠っただけです。


「そ、そんちょうが、村長がつい・・・すぴ~」


 鼻ちょちんを浮かべて幸せそうに眠っているので全く問題ないだろう。



『パンパカパーーーン! ステージクリア! ステージ39に上がります! くわえて貴方の全てが上昇します! 更に大人スライムが最高で、伝説で、究極の技を無事習得しました! 報酬の大人スライムの感謝と大人スライムのスキンを贈呈します』



「やっっっっっ・・・すぴ~・・・・」


 そしてシオウも二日ほど徹夜でクリッカーをやっていたので、喜びながらそのまま眠ってしまった。

 その姿を見て、時間制限はない事を伝えておけばよかったと思うお姉さんである。

 まぁやめなさいと言っても聞かなかっただろうから意味ないと思うが。




「う?・・うにゅうにゅ・・・・・・・・はっ! はよう! そして目指せステージ40!」

『はい、おはよう。それと前回みたいにあんまり無茶しちゃダメよ。今回は別に急がなくていいんだから。ちゃんとご飯食べてお休みしながらやりなさい』

「は~い・・・ふわぁぁ~」


 起きたシオウは一瞬ボケ~としていたが、自分が何をやるべきなのか思い出しすぐにクリッカー画面を開くと欠伸をしながら叩きはじめる。


 うむ、いつもの光景だ。

 というか、ここ数日海辺でやっていることがこれしかない。

 一応ご飯を探す時間なども取ってはいるが、基本クリッカーしかしていないのでなんだか遊んでばかりのダメ人間に見えなくもない。


『それと今日から少しずつ船を作っていくからそのつもりでね』

「う?・・・お、おぉ!? まだ40までいってないのに教えてくれるの!」

『だってその方がモチベーション上がるでしょ?』

「もち?・・・う! 上がる! もち上がる!」

『意味わかってないでしょ』

「う?・・・・・うん!」

『素直なのは良い事ね。いい子いい子』

「うへ? うへへへへへへ~」


 言葉だけだが褒められ慣れていないシオウにとって、それだけ頬が緩んでしまう。

 ニヨニヨととろけそうになるほど笑みを浮かべながら、照れ隠しするように目の前に浮かぶクリッカー画面をゴスゴスと殴る。

 うん、ステージのレベルが上がっているので力も順調に強化されているようだ。

 本人は気付いていないが。


『それとモチベーションの言葉の意味を簡単に言うと“やる気”よ。覚えておきなさい』

「いえっさ~! 殺る気だね! 覚えたよ!」

『・・・・気のせいかしらニュアンス、ではなくて、微妙に間違って伝わっているように思えるわ』

「にゅ~? あんす~?」

『気にしなくていいわよ』

「う?・・・・いえっさ~!」


 横文字が伝わりづらいと思い、今後シオウと話すときは極力気を付けようと思うお姉さん。

 言葉の意味を教えるのは良いのだが、今は話せる時間が限られているのでちゃんと教えるのは、ちゃんと時間が取れた後にしよう。


『それより集中して一時間ほどクリッカーをやったら、太くて大きい大樹を探しましょ。その木を材料にするから』

「おぉ!? お船! 僕だけのお船!!」

『ええ、シオウだけのお船を作りましょうね。だから頑張りなさい』

「おぉ! がんばる!」


 そして、餌をぶら下げられた馬は・・・ではなくシオウはステージ40目指して画面を殴りだした。





「これだけでお船作るの?」

『ええ、そうよ』


 できるだけ真っ直ぐに伸びていて、枝が少なくて、僕が三人いて手を繋いでも囲めないほどの大きな大樹。

 そういう木を見つけて切り倒してきた。

 材料が木一本だけと言うのは疑問である。

 お船ってもっといっぱい木を繋げていくモノじゃないのだろうか?


『それじゃあこれからシオウ専用の丸太船を作ります。まずは綺麗に枝を払って、木の皮を削っていってね』

「僕専用!? いえっさ~!!」

『ああ、爪で削りたくなかったら剣を使ってもいいからね』

「いえっさ~!!」


 専用と言う言葉に心惹かれたのか、シオウは目を輝かせながらお姉さんの指示通りに動き出す。

 というか爪で削るってなに? と思うだろうが、今のシオウの身体は鉄並みに固くて頑丈になっているので、長い爪もちょっとしたナイフ並みの切れ味になっていたりする。


「ガ~リガ~リガ~リガ~リ」


 なので猫のように引っ掻くだけで細い枝ならばすぐに切れてしまうし、太い枝でも思い切り力を込めて手刀を繰り出せば結構いい感じで切れたりする。

 うん順調に人外じみた力を手に入れているようだ。


「見て見てお姉ちゃん! お布団できた!」

『あら、上手に剥げたわね。けど流石にお布団代わりにはならないかな』

「そう? 結構いい感じだと思うけど・・・」


 木の皮を上手く剥ぎとったおかげで、ぺらっぺらの薄い板のようなモノができた。

 硬いし、冷たいし、ガサガサするので布団にするより、サバイバルで家を作る時の屋根代わりにするほうが良さそうだ。


『ほら、遊んでないで次行くわよ。次は木の中をくりぬいていくのよ』

「う? くりぬく??・・・どういうこと??」

『え~と、そうね。なんて伝えればいいのかしら、そう例えば『今日から丸太一本で作れる船。丸太船を作ってみたいと思います! 完成図はこんな感じです!』・・・・たまには役に立つわね。まあ、こんな感じの船にしたいから木を削って貰える? あとは・・・まぁ説明しなくてもいいか』

「おぉー! すげぇー! こんな感じの船になるんだっ!」


 久しぶりに役にたった前世の記憶。

 完成した丸太船の絵を見て、お姉さんが何を伝えたいのか、そしてどんな船を作ろうとしていたのか理解し、作業を進めていった。




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